装苑賞に挑んだデザイナーたち

かつて装苑賞に挑み、現在も第一線で活躍するデザイナーたち。
夢を持ち続け、何度も装苑賞にチャレンジした軌跡と今を紹介する。

INTERVIEW: 20人の軌跡

津森 千里

Chisato Tsumori

1976年、文化服装学院ファッションデザイン科卒業。イッセイ ミヤケ インターナショナル入社。イッセイ スポーツ、I.S.Chisato Tsumori Designのチーフデザイナーを経て、’89年に津森千里デザインスタジオを設立。’90年、ツモリチサトを立ち上げる。2002年、毎日ファッション大賞を受賞。


  自分が楽しいと思える道を  
  突き進むきっかけに  

私が装苑賞に応募していたのは文化服装学院の学生時代で50年ぐらい前のこと。覚えているような、覚えていないような……(笑)。当時は年に2回の審査会があり、私の場合は佳作を4回受賞しました。副賞が洗濯機とか冷蔵庫だったんですよ!

ファッションデザイン科の学生の頃は、課題でデザイン画を提出しなければならなかったので、そこまで熱心ではなかったのですが、卒業後は"絶対にとるぞ"って。2年の時の担任が小池千枝先生で、厳しかったけれど、海外の雑誌「ELLE」などを持ってきて、「今、パリではこういうのが流行っているよ」と見せてくれる授業がすごく楽しかったですね。また、髙田賢三さんもふらりと文化に遊びに来てくれたんです。みんなでおしゃべりして、賢三さんが「たばこ吸う?」なんて言って、フランスのたばこのジタンをくれたり。特別授業という形式的ものではなく、フラッと来てフラッと交流してくれる自由な雰囲気が本当に最高でした。

装苑賞に関して小池先生から特にアドバイスはいただきませんでした。コンペは先生に頼るよりも「自分でなんとかするもの」と思っていたし、それにクラスメイトに優秀な人が多くて、みんなが次々と装苑賞や佳作をとっていたんです。「あの子がとったなら、次は私も入選するんじゃない?」とお互いに刺激し合い、競い合っていました。

私は先生ごとにねらいを定めて、毎回10枚ずつくらいデザイン画を描いて提出していました。デザイン画は服の「設計図」です。絵がうまく描けないと、自分の作りたいイメージがパタンナーや周りに伝わりづらくなってしまうため、今でも大切に描くことを心がけています。デザイン画さえしっかり描ければ、だいたいそのとおりの良い服になりますから。

制作段階で苦労したものといえば、賞には入らなかったのですが、毛糸の大きなポンポンをたくさんつけた服を作った時のこと。一人で何百個も作らなければならず、見かねた家族を巻き込んで、一緒に作ってもらいました(笑)。

その後、当時審査員だった三宅一生さんに声をかけていただき、イッセイ ミヤケに入社しました。その頃の一生さんの言葉で覚えているのは、「ちまちま作らないで、もっとダイナミックにやりなさい」と言われたことです。女性のデザイナーは、どうしても細かい手作業が好きなので、作品がちまちまと縮こまりやすいんですよね。だからこそ、一歩引いて、俯瞰してダイナミックなものづくりをしなさい、と。この言葉は、その後に私が装苑賞の審査員を務めるようになってからも、ずっと頭の中にありました。舞台で見せる服は細かい部分まで観客に伝わりづらいですから。

装苑賞の審査員は、1999年から24年間務めました。私の審査基準はシンプルに「面白いか、面白くないか」の第一印象です。「前にもどこかで見たことがあるな」と思ったものは、いくら素晴らしい出来栄えでも評価を辛くしていました。逆に、「ちょっと変だけど、すごく面白い」と思うものには、高評価をつけていました。

コンテストというのは、その時の運やモデルさんの着こなし、見せ方によっても結果が変わってきます。それに、装苑賞の受賞がその後のデザイナー人生を約束してくれるわけでもないし、受賞できなかった人でも、後に立派なデザイナーになっている方はたくさんいます。賞そのものにこだわりすぎず、自分が本当に「好き」と思えることを見つけて追求していくきっかけになれば、それがベストだと思っています。

今は安価な服と高価な服が共存する時代です。さらにこれからはAIがいろんな仕事に携わる時代になるかもしれない。私の若い頃みたいに「徹夜で働くのが当たり前」という時代ではなくなってきています。ファッションを取り巻く環境はなかなか難しいポジションにありますが、だからこそ「手作業が好き」「服作りが好き」という純粋な気持ちを持っている人たちには、時代の変化に振り回されず、自分が楽しいと思える道を突き進んでいってほしいですね。

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