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上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.5 アーティスト 長坂真護 パート2

5回目を迎える上白石萌歌さんの連載。Vol.3で訪れたのはアーティストの長坂真護さんのアトリエでした。長坂さんは、ガーナのスラム街に捨てられた電子機器のゴミを使ってアートを制作し続けているアーティスト。実はその取材時に、上白石さんはアトリエにあるゴミの一部を使って、アートを作成していたのです。限られた時間の中で作られた作品に、その後長坂さんが手を加えて完成したコラボアート。今回はVol.3の続編としてそのコラボアートをご紹介します。

アトリエに集められたガーナのゴミ。この中から上白石さんが作®作品のベースになるものを探す。

コラボアートを制作!

長坂真護(以下 長坂) このアトリエにはガーナから運んだゴミが1トンぐらいあります。去年まではキャンバスをベースにゴミのパーツを張り付けるようにして制作していましたが、ゴミのパーツだけでアートを作ることもしています。そうなるとリサイクル率100%。萌歌さんも、このあたりにあるゴミを選んで作ってみませんか!今日は僕がアシスタントになってねじでとめますから。

上白石萌歌(以下 上白石) いいんですか?是非やってみたいです。

長坂 まずベースになるものを選んでください。萌歌さんが選んだのは、電圧機ですね

上白石 だんだんゴミだったものがごみに見えなくなって不思議な感覚です。ここから細かいパーツをつけていくんですね。四角い形はちょっとむずかしいですね・・・。

長坂 ここでセンスが出るんですよ。頑張って下さい!

ベースを飾る細かいパーツはたくさん。一つ一つ選んでは長坂さんがねじで止めていく。

上白石 具体的に何かにしなきゃいけないですよね?

長坂 アートに答えはないですから、具体的に何かということは考えなくて大丈夫ですよ。楽しんで作ってください。

上白石 真護さんは、ピカソが生涯描いた13,500点を超えたいと仰っていましたが、13,501点目を作るときは貼り付けるゴミがなくなるかもしれないですね。

長坂 それが僕のゴールです。

上白石 ゴミをずっと見ているときれいなものに感じるのが不思議です。

パーツを見つけるのがだんだん楽しくなって。

長坂 ガーナでゴミを拾っていると、中から貴金属が出てくることもあります。世の中にゴミなんてないんですよね。

上白石 出来ました!

長坂 アーティストの人はものを作るのが早いですね。大体悩む時間が長くなるんですけどね。萌歌さん、タイトルは?

上白石 タイムマシン!たまたま手にしたパ―ツがこのように仕上がるんですね。おもしろいです。この丸いダイヤルを進めるとゴミがなくなっていく。このマシンも細かいパーツが全部風に飛ばされて、つるんときれいになって。そしてそこには素晴らしい未来が待っているんです。

上白石萌歌作、タイムマシン。

自らのカメラで撮影。

長坂真護さんからのメッセージ

上白石さんが作ったタイムマシンを大きなキャンバスの中央に配置して、長坂さんがコラボアートを制作。手袋に絵具をつけて描いたもの。

――好きな人といる1時間は1分に感じ、逆に嫌いな人といる1分は長く感じる。相反するものでも相対的なエネルギーは同じ――

アインシュタインが娘に送った手紙です。

あらゆる座標系は互いに対等であり、相対的であるという相対性理論なんですが、絵にはLOVE-HATE、SLUMS-US,JAPAN、RICH-POORを相反する言葉を対極に配置して描き、そして中心にはAFRICAの文字。
XとYの軸は時空を表現しています。
萌歌さんがめざす平和が戻ってくるニュートラルポイントは、XとYが交わるところ。ここは唯一リッチでもプアーでもなく、先進的でも後進的でもない。この一点こそがぼくが考えた中和される場所。
萌歌さんは、これをタイムマシンと名付け、そしてこれは時空を旅します。
常にニュートラルポイントをめざして飛んでいく。

平和を象徴するタイムマシンが、ニュートラルポイント。

地球は二極化しています。
一人の富裕層が生まれれば、何万人の貧困が生まれると言われています。
誰かが嬉しい思いをすれば、誰かが悲しむ・・・。
それを図式化して描いたのがこの絵です。

萌歌さんは、“ダイヤルを進めれば進めるほどほど壊れた物がもとに戻っていく”と言っていました。タイムマシンなのに?そこに時空のゆがみを僕は感じました。それがずっと頭に残っていて。
宙を飛ぶ、平和をめざすスラムの子どもたちが乗ったタイムマシン。
これは、平和を目指す時空の旅。

左は上白石さんの作品と対で作られたもの。同じ大きさのキャンバスには、ガーナの若者が描いた絵が。

長坂真護さん。上白石さんのアートとガーナの若者の絵の前で。

――撮影を終えて――

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup : Karen Suzuki
styling:hao

オールインワン ¥63,800 アキコアオキ
WEB:https://www.akikoaoki.com/
ニットセーター ¥35,200 アカネ ウツノミヤ
WEB:www.akane-utsunomiya.com/
イヤリング ¥3,500 グレイ
WEB:https://graey.jp/
ネックレス ¥12,900 miyu nakamura(ロードス)
TEL:03-6416-1995
ローファー ¥26,400 カンペール

Kamishiraishi Moka
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞し、デビュー。2019年、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。adieu名義での音楽活動を行う。4月から「The Covers」(BSプレミアム)のMCを務める。TBS金曜ドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」に出演中。

Nagasaka Mago
1984年生まれ。2017年6月、ガーナのスラム街・アグボグブロシーを訪れ、先進国が捨てた電子機器を燃やすことで生計を立てる人々と出会う。以降、廃棄物で作品を制作し、その売上から生まれた資金でこれまでに1,000個以上のガスマスクをガーナに届け、スラム街初の私立学校を設立。この軌跡をエミー賞授賞監督カーン・コンウィザーが追い、ドキュメンタリー映画“Still A Black Star”を製作。2021年アメリカのNEWPORT BEACH FILM FESTIVALで「観客賞部門 最優秀環境映画賞」を受賞。スラム街をサステナブルタウンへ変貌させるため、日々精力的に活動を続けている。
日本テレビ本社にて長坂真護展が開催中→https://www.ntv.co.jp/goodfortheplanet/event/#nagasaka

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