上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.12 デザイナー 竹内美彩

2023.12.28

上白石萌歌さんが、ジャンルを問わず今気になる人を訪ねてお話を伺う連載。12回目の今回は、「フォトコピュー」のデザイナー竹内美彩さん。アトリエは、緑に囲まれて自然光が差し込む心地よい空間。落ち着いたきもちでクリエーションが出来るという、そのアトリエにお邪魔しました。上白石さんがプライベートでも着る機会が多いという「フォトコピュー」の服。その魅力はどんなところにあるのでしょうか?

布を生かした立体のクリエーション

上白石萌歌(以下 上白石)「フォトコピュー」の服は日常でよく着ているので、今日はすごく興奮しています。素敵なアトリエですね。ここで服が生まれていると思うと、すごく嬉しい気持ちになります。

竹内美彩(以下 竹内)ありがとうございます。日本では、スタジオだけでアトリエを持たないで仕事をする方も多いと思うのですが、私は布を触りながら実際手で作り上げていくのが好きなので、アトリエの空間を充実させました。

上白石 デザイン画からではないのですか?

竹内 いろんな方法で服を作るのですが、もちろんデザイン画を描く時もあるし、古着をアレンジして作ることもあります。でもいちばん多いのは、ボディに布をおいて作る立体裁断ですね。

上白石 デッサンをして、紙にパターンをひいてというやり方が多いと思っていたんですが、竹内さんのやり方は特殊なんですか?

竹内 だいたいパターンをひいて作る方がほとんどだと思います。以前フランスにいたのですが、フランスだと立体でイメージを作ってパタンナーに見せます。私はその方法で。

上白石さん着用:ニットのトップス “SOLENE” (23AW) ¥46,200、デニムスカート “DELLA” (24SS) ¥68,200 ともにPHOTOCOPIEU/リング 人さし指は¥171,600、中指は¥123,200 ともにイー・エム(イー・エム アオヤマ)

恐竜モチーフの秘密

上白石 「フォトコピュー」との出会いは、友人に誘われて伺った展示会でした。その時は暖色系のニットを購入したんですが、こんなに素敵なブランドがあるんだと思いました。
春夏に恐竜ニットがありましたが、とても目を引くモチーフでしたね。なぜ、恐竜を?

竹内 小学校の図工の授業で、粘土で立体を作ることがあったんですが、女の子のお題はケーキで男の子は恐竜だったんです。“なんで?”って思って私はケーキではなく恐竜を作りました。その時から恐竜にはジェンダーに対する反抗の象徴みたいなものがあって。そういう意味で登場させています。

上白石 キャラクターチックな可愛らしい恐竜ではなく、がちの恐竜!きっと強い恐竜ですね。気持ちを目覚めさせてくれたモチーフ!

竹内 あれはヴェロキラプトルという恐竜で、秋冬のウールバージョンも作っています!

ブランドイメージを映しだすルック写真

上白石 シーズン毎の「フォトコピュー」のルック写真が大好きで、芸術鑑賞的な感じでいつも楽しみにしているんです。テーマだけじゃじゃなく、服の背景を感じるような作り方が好きなのですが、ルック写真にはどうこだわっているのですか?

竹内 これだけはやりたくないと思っていることがあって、それは作られすぎた美しい部分だけを見せること。あとはその場での偶然性も楽しくて、それは受け入れたりします。このポスターは、デビューシーズンの服でパリで撮ったもの。日常的なことからずれたくないと、カメラマンとも話し合って撮影しました。

デビュー当時の「フォトコピュー」のポスター

上白石 私が好きなのは、ルック写真として親切過ぎないから。この服を取り入れたらこうなるかなと想像できるような、余白があるところです。

竹内 きちんと見せるというより雰囲気を大切にしたいので。

上白石 この服にはストーリーがあるなって写真を見て思うんです。「フォトコピュー」の服は上品だけど日常に落とし込みやすいですね。去年の夏に買ったスカートは旅行の時の勝負服で、おしゃれに着こなせるしそのスカートで自転車も乗れてしまう!そういうことを許してくれるスカートでした。

竹内 私の服作りは、素敵な生地を毎日身に着けたいというところがスタート。大きなテーマを掲げるわけじゃなく、そしてステージ衣装のようなことでもありません。日常的に着たいと思うことが大切なんです。そして、見過ごしがちなものに価値を見出したいと思っています。

上白石 ブランド物の服って毎日着ちゃいけないような雰囲気があるんです。だからファストファッションに走ったりしがちなんですが、「フォトコピュー」のように、1つのアイテムが日常も特別な時も着られるって、なかなかないような気がします。「フォトコピュー」というブランド名の由来も、フランス語でコピー機ということで量産するという意味もあるけど、それとは別に唯一無二であるということも伺いました。本当にその通りでどちらも感じます。

本当の自分を服で表現する

竹内 フランスにいた時は、小柄で童顔だったからかいつも幼く見られがちでした。でも内面は違うという思いから、見た目とは違う本当の自分を服で表現したんです。ポスター撮影の服はパリの「イザベル マラン」で働いているときに自分のために縫ったもの。思い出が詰まった服で、ここからドレスを派生させて作ったりしたんです。仕事着でもあったし、女性の品格を表した服でもありました。

上白石 思っている以上に、自分のことをそのまま見てくれる人はそんなにいないんですよね。私は10代の時から俳優の仕事をしているのですが、そのころから違ったイメージで見られがちだったんです。だから自分が日常生活で纏う服だけは、自分の内面に正直でいられる服でいたいと。「フォトコピュー」はそれをかなえてくれるんです。

竹内 私が感じていたことを代弁してくれて、本当に嬉しい!

上白石 だからいっぱい欲しくなるんだと思います。今日はいているデニムもストレッチがきいてとても着心地がいいですね。

竹内 肉厚なデニムなのであまりウィメンズだと使わない素材なのですが、迫力とかボリュームがあって、女性がかっこよく見えるんです。

上白石 私はあまりスカートをはかないのですが、初めてしっくりきたのが「フォトコピュー」のスカート。マニッシュなテンションもあって、自立した女性像みたいなものが具わっていて。いつも「フォトコピュー」が似合う女性でありたいと思っています。

モールスキンのワンピース “ LOTTA” (24SS) ¥74,800、ニットのキャミソール “CECILE ”(23AW) ¥26,400 ともにPHOTOCOPIEU/リング 人さし指は¥123,200、中指は¥171,600 ともにイー・エム(イー・エム アオヤマ)シューズ ¥80,300 カチム

ファッションを通して伝えるべきこと

上白石 フランスは男女平等なイメージがあって、日本とは違う部分がまだまだたくさんあると思うから、現地でいろいろ感じたのではないでしょうか?

竹内 日本で会社務めをしていた時は、役職ある上司はみんな男性で、ご機嫌を伺いながら仕事をするのが普通。でもフランスは違いました。女性の上司はいたし、役職などの垣根なくみんなで意見交換したり、時には笑いあったり。こんなふうにもっと平らでいいのにと感じましたね。

上白石 ファッションはそういうボーダーを超えられると思っているんです。「フォトコピュー」の服は、意識しなくても台頭にいられるし、好きな自分でいられる。この先、メンズも作ってほしいです。私も着てみたいし、着ている男性も見てみたい。

竹内 メンズに関しては結構リクエストされます。たまにデニムやニットは、男性にも着てもらえているのですが、今後はさらに考えていきたいです。

上白石 服は言語もいらないし性別もないから、そういうものに救われている人がたくさんいるんでしょうね。

竹内 なので、あえてルック写真にはメンズモデルを使ったりしています。今後も垣根を超えたものを表現していければ。

一つのことをじっくりと。
プロダクト的な取り組み

上白石 服を好きになった原体験というのは? 

竹内 絵を描くのが好きで、漫画家になりたいと思ったこともあったんです。服は小学生ぐらいの時から、型紙など使わずキャミソールやシャツもどきを作っていました。デザイン画を書くのが好きで、マンガの「ご近所物語」を読んで実果子になりたいなって。父親が陶芸を仕事にしていたので、アートの世界には興味があったし、プロダクトとかグラフィックも好きでしたが、立体で表現するなら服がいいかなと。一つの形をつきつめて、時間をかけて作り上げるプロダクト的な服作りが好きです。
仕事としてなぜファッションがしっくりきているのか疑問だった時期もあったのですが、ジェンダーの問題などを考えると、デザイン業界の中でいちばん“性”と距離が近いからなのかなって思います。

上白石 服も芸術だと思うので、どういう形でも何かを創る人生だったのかなって思います。

竹内 自分でもそう思います。とにかく手で何かを作るのが好きで、料理も好きだし、今レザークラフト教室に通って、レザーのバックを作ったりしています。作り方が服と全く違って、フレッシュな気持ちで出来るんです。まだまだ試作ですが、レザーでいろいろ作りたいですね。

上白石 竹内さん、レザーが得意なイメージがあります。

竹内 「イザベル マラン」のパリのアトリエでもレザーのヘルプをやっていた時があって、結構楽しかったんです。レザーもプロダクトっぽいですよね。そういう面で興味があるのかも。

上白石 たしかに服よりもプロダクト感が強い気がします。そうやって日々の関心が服に反映されるんですね。

竹内 そうですね、大きい会社だとそれはできないから。方向性とかをきちんと決めて、やりたいようにやってみる。自分の気持ちに正直にやろうって。

インスピレーション源は人間観察?

上白石 ファッションは常にシーズンを先読みしなければいけない中で、追われているとか想像が尽きていると思う瞬間はありますか?

竹内 疲れを感じるときはあります。けれど、それが生活の一部になっているので、こうきたからこう返すというように、自然とかわしてしまいます。デザイナーとしての仕事量はかなり多いので、自分でちゃんと休みを取らないと枯渇してしまうことがあります。少し疲れたと思ったら旅行に行ったりキャンプに行ったりして、自分を違う場所に置くようにしています。

上白石 いくら自分の好きなこととはいえ、枯渇することはありますよね。

竹内 自分を違う場所に置くという点でもうひとつ感じることは、フランスに住んでみて、言葉を勉強してその環境で生活することて生まれたもう一人の自分がいる感覚はあって。そのもう一人の自分がインスピレーションの種にもなっています。あとは、何も考えずに電車の中や駅にいる人を見ることも好きです。意外とそこでインスピレーション源が見つかったりするんですよね。人の服に木漏れ日があたっているのを見て、こういう柄があったらいいなと想像したり。街を歩くといろいろ思いつくことがあってストックされるんです。

上白石 たしかに電車は知らない人に接近できる場所ですね。私も人間観察が好きなので、電車に乗って人を見たりします。こういう仕草を取り入れたいなとか。自分の生活から汲み取って仕事に生かしたりすることも多いです。

竹内 きっと、その方がリアルな演技ができますね。

上白石 絶対に自分ではスタイリングできないような服を、電車でおばあちゃんがしているのを見るとすごく参考になります。

竹内 そう!でもそれはフランスにいたときの方が印象的で、歳をとればとるほど派手になるみたいな。赤やピンクの服を着て、夏には肌も見せて。シワもかっこいい!

上白石 素敵ですね!そういう方を見ると、歳をとって慎ましく生きるよりも、どんどんはじけていきたいと思いますよね。

竹内 カッコいいおばあちゃんになりたい!

(左)ファッションシューティングで、上白石萌歌さんが着用したワンピース。素材はシルクの楊柳。さらっとした風合いが肌に心地よい。(右)”注染”という染色方法で4回に分けグラデーションでタイダイに染め上げた素材。

生地へのこだわり

上白石 表現する人にとってインプットはとても大事だと思うんですが、いちど全部手放すということもインプットですよね。竹内さんはどうされていますか?

竹内 全部手放すことも必要だし、あとは素敵な布をたくさん見ることかな。これで服を作りたい!という衝動に駆られます。

上白石 本当に布が好きなんですね。こんなにいろんな素材に溢れているブランドをあまり見たことがないです。

竹内 生地はいろんな産地に行って見つけるんですが、ちょっと癖のある人から買いたいんです。癖のある生地を作っている人は、いい意味で癖のある人が多いから。

上白石 信頼している生地やさんがいるんですね。海外で買うこともありますか? 

竹内 コロナ前は行っていました。イタリア製の素敵な生地とかありましたね。イタリア親父が作ったちょっとセクシーな生地とか。また使いたいです。

上白石 土地柄とか人間、生き物、土とかダイレクトに感じそうですね。日本でも織物とかニットとか地域によって特徴があったりするのがとても不思議です。食べ物と同じようにその土地の繊維があったりするんでしょうね。

竹内 なので、探しに行くのが本当に楽しいです。

上白石 今後の展望があったら教えてください。

竹内 今10シーズン目なんですが、今まで服作りに必死だったので、これからはもっと“着てくれる人に届ける”ということをきちんと考えたいと思います。今ウェブサイトを作っているのですが、私が感じていることや共感できることを、言葉でも発信できたらいいなと思っています。

上白石 「フォトコピュー」が好きな人は、竹内さんの思想を知りたいと思っているはずなので、それはとても楽しみです。

ジャカードのブルゾン “OAKLEY ”(22AW) ¥77,000、シルク楊柳のワンピース “YLVA” (24SS) ¥97,900 ともにPHOTOCOPIEU/シューズ ¥74,800 カチム

※PHOTOCOPIEUの商品は、デザイナー自身のために作った服が、友人のために作るようになり、徐々に作品が増えてブランドになったという経緯があり、全ての商品名に人名が付いているのも魅力のひとつです。

――撮影を終えて――

撮影・上白石萌歌

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup : Tomomi Shibusawa(beauty direction)
styling:Miri Wada

PHOTOCOPIEU
WEB:https://www.photocopieu.fr
TEL:03-6265-8322
イー・エム アオヤマ
TEL:03-6712-6797
カチム
WEB:https://katim.sc/

Kamishiraishi Moka
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞し、デビュー。2019年、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。adieu名義で音楽活動を行う。数多くのドラマ、映画に出演する傍ら、「The Covers」(NHKBSプレミアム)のMCも務める。2024年3月、東京から開幕する舞台「リア王」にコーディリア役で出演。▶︎https://stage.parco.jp/program/kinglear

Misa Takeuchi
1986年 滋賀県出身。高校は美術科を専攻。バンタンデザイン研究所X-SEED卒業後、アパレルメーカーで企画デザイナーとして4年間勤務。2013年に神戸ファッションコンテストを受賞。2014年にサンディカ・パリクチュール校での留学を経て、「イザベル マラン」や「ヴェロニク ルロワ」のアシスタントデザイナーを経験。帰国後の’19-‘20年秋冬に「フォトコピュー」を始動。
Instagram:@photocopieu

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