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上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.17  デザイナー 熊切秀典

2024.05.28

上白石萌歌さんがジャンルを問わず、今気になる人を訪ねて循環問題やサスティナブルをキーワードにお話を伺う連載。今回はビューティフルピープルのデザイナー熊切秀典さんです。上白石さんが仕事で着ることが多かったビューティフルピープルの服。今ではのクローゼットにはなくてはならない存在になっているようです。服の素材のこと。デザインのこと。サスティナブルについて熊切さんに伺います。

ビューティフルピープルの服はスタメンです!

上白石萌歌(以下 上白石) 今日はお会いできる機会をいただきありがとうございます。

熊切秀典 (以下 熊切) なかなか人前に出て話すことがそう多くないのですが、今日はよろしくお願いします。

上白石 ビューティフルピープルファンの私にとってすごく幸せな機会をいただきました。ファンは全員がどんな方がお洋服を手がけているのか気になっていると思います。

熊切 そうですよね。もう少し出ていくようにしないと・・・。

上白石 ビューティフルピープルとの出会いは、多分7年ぐらい前。まだ10代で衣装としてスタイリストさんが用意してくださったんです。袖を通したときに着心地がよく、衣装としても見栄えがよかったので、ブランド名を聞いたんです。私たちの仕事は服を着ていても現場ですぐに着替えてしまうことが多いので、なるべく自分の肌になじむものをと思って選んでいるんですけど、ビューティフルピープルの生地はとても肌になじんで、何通りの着方があったりするのが唯一無二ですよね。いまやクローゼットのスタメンにはビューティフルピープルのアイテムがたくさん。このショールームにある黒のライダースジャケットのバッグも持っていて、最初は硬かったんですが、だんだん軟らかくなって経年変化を楽しんでいます。

長く着られることの大切さ

熊切 あのバッグは衣料用のレザーで作っているんです。バッグ用のレザーだと仕上がりが硬かったり、耐久性をすごく意識しちゃうんですけど、服を作る感覚で自然に作っているので、肌に触れるということを前提に考えました。デビューコレクションを“大人のための子供服”というところから始めたんですが、子供ってとても正直で、ちくちくする服はすぐ脱いじゃうんですよ。それから風合いの良さって大事なんだなって思って取り組んでいます。とはいえその風合いの良さを、ただ単に上質にするだけでは面白くなかったので、コットンでもしなやかで耐久性もあるものを糸を作るところから意識しているんです。

上白石 服は着てテンションを上げつつも、ちゃんと日常生活にもなじまなければいけないものですよね。ビューティフルピープルの服は、何回洗ってもとても綺麗に保たれているし、最初に着たときの高揚感が続いているんです。それって発明ですよね。洗濯をして一発でダメになっちゃうTシャツとかあるのに。

熊切 上質で長く着られるものというのが基本なんです。今日僕が着ているTシャツは、色褪せないように黒の染料にもこだわったものです。

“大人のための子供服”をコンセプトにスタートしたブランド

上白石 ちなみに私のお気に入りのライダースのバッグはどんなことがきっかけで生まれたのですか?

熊切 うちのライダースジャケットと同素材で作っています。基準が“着用できる”ということから発想しました。

上白石 ライダースジャケットをリメークしたわけじゃなくて?

熊切 ライダースのディテールを作ってデザインしているので、リメークではないです。

上白石 そしてこのバッグ台本がちゃんと収まるんです!さらにペットボトルも入るし。ヘビーユーザーです。

熊切 ライダースジャケットは、着る人が手ぶらになるようにポケットが5つあって、これもそう。機能面では同じですね。

上白石 女性が持ってもとてもシック。いろんな要素が凝縮されていて、長く使いたいアイテムすね。

熊切 ライダースがビューティフルピープルデビューのトピックスになるアイテムで、大人が着る子供服をテーマに、120㎝と130㎝の2サイズで作りました。それを大人が着るとミニマムになるんです。子供と共有するという考えで、風合いもそうだしレザーの概念を覆すことがこのブランドの目指すところでした。

上白石 今日着させていただいているレザーのトップスの素材にもびっくりしました。普通のコットンみたいに軟らかくて、苦しくならないんですね。素材選びからクリエーションしていることがわかるような気がします。

熊切 デザインより前に素材から入るので、実用的でしっかりしていながら、上質の持つ華奢さを出していこうと。

学生のころから変わらずにある好奇心

上白石 新作がでるたびに驚かされることがあって、例えばトップスは袖が多くついていたり。今までの服の概念ががらっと変わります。チャレンジとか好奇心のブランドだなという印象があるのですが、そういうアイディアはどういうところからくるのですか?

熊切 僕はこの会社を文化服装学院の同級生と立ち上げました。10代の頃からずっと一緒にいる人とブランドを作って、その頃から何も変わっていない。当時は知識がなかったから、いろんな服を見て“この服どうなっているんだろう”って。“自分たちらしくするならどうすればいいんだろう”って。服の面白い構造とか可能性をずっと探ってきていて、今でもそれをやり続けています。学生の頃の気持ちのまま新しい服を。多分それが着る人の驚きになっているのかな。

上白石 学生時代の好奇心が今も?

熊切 今でもあります。例えば学生の時は学校に行くとみんな、直角に線を引くところから始まるんですけど、僕らは直角じゃなくでもいいんじゃない?ということも考えたり。生地は縦と横のまっすぐな糸で作られている。だからパターンも縦と横が重要なんですけど、それさえも疑って何か新しさにつながらないかと模索してみたり。縦と横を崩したり、逆に全く崩さなかったり。ものづくりの中から生まれていくアイディアです。従来のつくり方を壊すというか。でもつくり方はお客さんには直接関係ない。だけどそこを追求することで、着る側にも驚きが感じられるのかもしれないですね。

上白石 基礎を壊すってすごいことですよね。

熊切 型破りであるには、型を知っていないといけないんです。追求するために壊す。壊すといっても、昔は壊すデザイナーがいっぱいいたけど、もう壊し方もなくなっているんです。だけど僕は壊し方が見つからないのであれば、新しい直し方を見つける。そういうのを探っている中で新しいデザインを見つけます。

上白石 だからビューティフルピープルの服って、一見斬新で目を引くけど日常になじむラフさもあるんですね。日常に溶け込むのが早いから、“あ、今日も着ていた!”となるんです。そういう生活に浸透する力がすごく不思議。

熊切 そこを褒めてもらえると嬉しいですね。服が好きだけど、最終的には人が着るということを考えなければいけないので。

ショーで服を発表することについて思うこと

上白石 2023年春夏のパリコレを動画で見たのですが、ダンサーの小暮香帆さんが出演していましたね。お友達なんです。新作コレクションを着て躍動する彼女を見て、服に大きな可能性を感じました。ショーで見せる服には特別なものがあるように思ったのですが。

熊切 コロナの時はムービーでの表現でしたが、僕たちの奥行を理解してもらえて海外での評価も上がりました。2023年春夏のパリコレは、ステージで見せるものとは違った形ですが、コロナ明けで戻るのであれば、評価が上がった部分の要素をプラスしてランウェイとは違うショーをやろうと思ったんです。

上白石 ショーを見るのはきっと特別な感覚ですよね。

熊切 僕たちの会社名にはエンターテイメントという名前がついているんですけど、楽しんでもらうことはとても重要で、それを軸にショーの可能性も追求していきたいと思っています。

上白石 今後ショーの中でやってみたいことはありますか?

熊切 一般的にショーはモデルを40人ほど起用して約10分で見せます。レギュレーションはあるんですが、それとは違う形で自分たちの服の可能性を見せるものにしていきたいですね。他のブランドとは違う立ち位置ということも認められてきているので。

上白石 コロナ禍にネットで買い物をすることが多くなったのですが、そんな中で、やっぱり服はちゃんと自分の目で見て、袖を通して買うことが大事だなって思うようになりました。そういうことも人が足を運ぶショーでは感じられそうですね。

熊切 そうですね。とはいえファッションショーは半年に1回の、プレスやバイヤーに向けた特別なものなので、その反応から新たな可能性を探ります。

上白石 コロナ第一波のときに、本番前日に中止になった舞台があって、ゲネプロが最初で最後。あらためて、人に生で表現を見てもらうことって特別なんだなって思いました。ものを作る人にとって、生で見てもらう尊さって共通しているものですよね。

熊切 そういう意味では役者さんは尊敬します。見る方はその場限りだけど、それまでの影の努力がすごいじゃないですか。ファッションショーも作品を披露するのは10分だけなんですけどその前からものすごく準備していて、職人さんが糸を撚るところからスタートしているんです。いろんな人の手が関わって、服が出来上がってくるのはへたしたらショーの2日前とか。なかなか厳しいですよ。

上白石 リハーサルが出来ないときもありますよね。ハラハラしますね。しかも異国だと、なかなかスムーズにいかなかったり。

熊切 パリでランウェイショーをはじめた当初は、僕たちは海外では無名のブランドだったので、モデルやお客さんがすぐ来られるように有名ブランドのショー会場の近くでショーをやっていました。そういうドキドキ感も楽しいですけどね。

サスティナブルへの取り組みはごく自然の流れ

上白石 ビューティフルピープルはSDGsとかサスティナブルへの取り組みをずっと前からされている印象があるのですが。コーヒーのかすを染料にしたアイテム、ビニール傘のバッグなど、ごく自然に取り組んでいた印象があるのですが、そのような意識はいつぐらいからあったのですか?

熊切 働き始めたころから、そういうことは当たり前になっていました。普通レザーは化学物質で鞣すのですが、僕たちは最初から植物を使ったベジタブル鞣し。ぱっと見たら化学物質を使ったクローム鞣しの方が綺麗に見えるし傷も隠れるけれど、味も含めてベジタブル鞣しの方が好きですね。環境にとって優しいことの方が、僕は好きなのかもしれません。

上白石 手に取るほうも思い入れが出来ますよね。より愛着が湧くし、その商品を手に取ることで自分もその取り組みに便乗させてもらえるような。

熊切 あたりまえのことでやっているけど、きちんと伝えていかないとだめですね。

上白石 でもこんなにさりげなく自然に取り組んでいることが心地いいし、少しずつ私もやっていけたらと思います。

熊切 僕もそこはバランスをとっていこうと思います。食事とかもオーガニックを食べた次の日は、ファーストフードを食べたくなるでしょう(笑)。服作りもバランスは大事なのかなって思うけど、自分たちの住んでいる環境は良くしていかないといけなし。

上白石 そういう意識を持てば、自分が地球の一員だということにもつながりますね。一人が頑張ってたくさんやるより、一人一人がやらないと。それがニュースタンダードになっていけば。

熊切 まさにそう思います。僕らも声高に言うんじゃなくて、いろんなところに潜ませながらやっていこうかな。

インプットもアウトプットももの作りから

上白石 ずっと季節を先取りして服を作っていらっしゃいますが、どういうことで息抜きしていますか?

熊切 ものづくりしていればアイディアが出てくる。それがいちばんリラックスしている状態。

上白石 素敵ですね!アウトプットしながら、インプットですね。

熊切 そうですね。服を作る過程の中でインプットすることが多いですね。

上白石 私もそうかもしれないです。お芝居でへこんだら映画を観て復活して。エンタメでへこんで、エンタメで回復する。本当に自分はこの仕事が好きで、これ以外は考えられないなって実感します。

熊切 他のことで気晴らしって出来ないんですよね。ものを作る中でしか癒されないって、何となくわかる気がします

上白石 ほかのことから刺激を受けて、自分も心を使ってそれを表現するということはそれこそ循環だし、そういうものに出会えているのは幸せなことですよね。

熊切 僕もデザインすることの楽しさを見つけられたのは幸せです。

喜んで着ていただけるのがいちばん!

上白石 デザインの道を選んだのはいつからですか?

熊切 文化服装学院に入るまでは大学進学を考えていたので、まだわからなかったですね。文化に入ったら服作りが楽しくなって、ブランドに就職したらやっぱり自分でデザインしたくなって。いつか自分のブランドを作ろうと目標ができました。

上白石 やりがいを感じる瞬間は?

熊切 やっぱり人が着て喜んでくれたときかな。自分の納得できるものが出来た時も嬉しいんですけど、それを喜んで着てくれたらさらに嬉しい。とはいえ、あんまり喜ばれても照れちゃうんですけど(笑)。

上白石 そうなんですか?あんまり褒められてもだめですか?

熊切 褒められるのはちょっと苦手で・・・。

上白石 日頃からたくさん着させていただいているので、これからも新作を楽しみにしています。それと、今持っている服も大事に長く着ようと思います。

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