上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.15 菓子研究家 福田里香

2024.03.28

上白石萌歌さんがジャンルを問わず今気になる人を訪ねて、循環問題やサスティナブルをキーワードにお話を伺う連載。15回目は本誌の“フード”の連載が好評のお菓子研究家、福田里香さん。けれど今回は本物のスイーツ作りではありません。100年後も定番として愛される美しい家具を作り続けるマルニ木工の端材となる木片を使って、木のスイーツ“WOODEN FOOD”の制作です。マルニ木工のショールームをお借りして行った、童心に帰るようなワークショップ。そしてその後は楽しい食のトークも!

福田さんがマルニ木工の木片で作ったスイーツの数々

家具の端材から小さなお菓子を作ります!

上白石萌歌(以下 上白石)はじめまして。可愛いスイーツがテーブルに並んで、パーティーが始まりそうですね!そもそもお菓子研究家の福田さんが、マルニ木工とこのようなことを手がけることになったきっかけを教えてください。

福田里香(以下 福田)マルニ木工とは、昨年の秋にあったインテリア、アート、ファッション、テクノロジー、フードなどの才能が集結したイベント「DESIGNART TOKYO(デザイナート トーキョー)」で一緒にお仕事をさせていただきました。テーブルウェアブランドWASARA(ワサラ)と、こちらのマルニ木工とのコラボレーションの展示スペースを空間ディレクションしたんです。マルニ木工の端材の木片の形をかえずに、食品やフラワースタンドのようにお皿を花びらのように見立てたスタンドを作りました。

デザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO」で、マルニ木工とコラボレーションしたWASARAの展示

端材として燃やされる前に可愛いアートを

上白石 こういう木片の状態からは想像ができない仕上がりですね。なかなかイメージするのが難しいように思うのですが。

福田 木片の形をみたら何とかできそうかなって。でも、毎回提供されるパーツが違うんです。驚いたことに、大きな家具を作っているのに、大きなパーツがまったくなくてこんなにかわいいものばかり。それって、とても素材を大切に家具を作っているということなんですよね。この小さな木片も、本来は最終的には燃やされてそれを燃料にして機械を動かすらしいんです。だから無駄にはならないんですが、燃やす前に何かできないかと思って。

おいしそうな色はずっと同じ色が使えるように、調合しないのがポイント

上白石 完成したスイーツは色がとてもきれいでおいしそうに見えますね。

福田 グリーンはオリーブグリーン、黄色はマスタードイエローに寄せているんです。食欲の増す色は、赤からオレンジ。逆に青は食欲減退色と言われていますね。

上白石 そういえば街中華のテーブルも赤いです!

福田 ファミリーレストランもオレンジ色が多いです。どんどん進化するから変わってきてはいますけどね。

ナチュラルカラーの木片に色を付けてプチフールを作りましょう!

大人も楽しめるおいしそうな積み木“WOODEN FOOD”

福田 この木片のお菓子は可愛い積み木みたいでしょう。積み木って日本だと四角とか三角の形だけど、海外だとおままごとセットや、パンとかリンゴ、卵とかの食べ物を木で作っているんです。そして英語で“WOODEN FOOD”。“WOODEN FOOD”は大人の積み木みたいな感覚ですね。

上白石 これらを制作するときのインスピレーションはどういうところから湧いてくるのですか?

福田 デザイナートのイベントの展示の時は、食器のためのアートディレクションだったのですが、お皿にのせる食べ物があったほうがいいかなと思ったんです。本物の食べ物は無理だけど、木の素材の食べ物ならいいんじゃないかと。いろんな形のパーツを見て想像を膨らませるんですが、作っていたらだんだん楽しくなって。

上白石 なかなか木片を見て食べ物は想像つかないと思うのですが、福田さんならではの発想ですね。

福田 マルニ木工の木片の形は食べ物を抽象化していくと不思議と似てくるんですよ。サイズ感も同じですし。

福田さん作のアイスキャンディーやプチフール

上白石 この連載では、循環問題やサスティナブルをキーワードにいろいろな方にお話を聞いているんですが、ここまで原形を変えずに違うものを作る方はいままでいなかったです。

福田 逆に形を変えてしまったら無限に種類が増えてしまうんです。なのである程度ルールがあったほうがやりやすいんですね。

出来ないことを頑張るより、出来ることをもっと頑張る!

上白石 こういう作業を子供たちと一緒にやったら楽しそう。子供の想像力ってすごいですし、自然の木の素材は小さな子供にとってもいいですよね。福田さんは幼少期からこういうことが得意でしたか?例えば図工とか家庭科とか。

福田 図工が得意だと思っていたんですが、大学は美大なんです。そしてついた仕事がお菓子関係。

上白石 もはや肩書が一つに絞れないですね。総じてアート作家さんというイメージ。

福田 ありがとうございます。とはいえ仕事の範囲は「フードまわりのこと」に限定ですね。映像の中に出てくる食べ物のことを分析したり、実際にお菓子の商品開発、書籍などでしょうか。

上白石 私も、お芝居しながら歌を歌ったり写真を撮ったり、お仕事を通してさまざまなジャンルの方と出会ったり、自分の肩書について1つに定められないところがあるんですが、そういうのをどう思いますか?

福田 うーん・・・。実は、私は出来ないことが多い人間だったんです。

上白石 え!そうなんですか?

福田 長女だから両親は私がオールマイティに何でもできるのが当然だと思っていた節があるんです。でも出来ることだってこのレベルなのだから、出来ないことを一生懸命やるより出来ることに集中するほうがいいのでは?と思い始めて。人間なんだから、絶対に無理なことはあるんですよね。好きなことは食べ物のこと。文章を書くのも嫌いじゃない。仕事で苦手な事は極力避けたいから、できることの範囲でまとめるイメージです。

仕事はあまりハードルを上げないで、ふわっと超えるの

福田 私は仕事のイメージを円グラフで考えているんです。例えばおしゃべりがうまいとか、これが出来るあれが出来ない。出身が福岡。マンガが好き・・・とか。何でもいいからいろんな自分の要素で円を全部を埋めるの。その円をふわっと浮かせて、設定したラインを超えるようにする。理想を高くすると越えられないから、低い位置のラインを取りあえず超えるというイメージね。

上白石 働くってすごく深刻に捉えがちだったけれど、福田さんの円のイメージを聞くと、自分のアイデンティティを一個ずつ拾いあげて突き詰めていけばいいんだなって思います。

福田 そして長く仕事を続けるためには気持ちを軽くしないと駄目なんですよね。何かを手放すということは一大決心なんだけど、それも大切なこと。

削られた木くずは、ケーキの上の飾りのチョコレートに

食べるという行為が表現することって?

福田 食べ物関係の仕事をしていてふと思うのは、食べ物をキーワードに話を広げたときってあまりクレームこないなってこと。例えば「進撃の巨人」も食べ物切りで原稿を書いてみたりしたんですけどね。

上白石 あれは食べ物というか、人間を食うというか・・・(笑)。

福田 あとおもしろかったのが、「北斗の拳」。ケンシロウが第一話でいきなり捉えられて牢屋に入るんですが、そこで食べているのがどう見てもクラブハウスサンドイッチ!えっ、捉えられている人が?って。つっこみどころが満載。こうなってくると作家の美学ですよね。もはや食のシーンがチャームポイントになっているんです。

上白石 映画にも食べるシーンはいろいろあって、私にとってはそういう描写がかなりのポイントになっているんです。中でも沖田修一監督の「南極料理人」が好きで、以前沖田監督の作品に出演出したことがあるんですが、食事のシーンをとても大事に撮る監督なんです。きっとそれは“生きているところを映したい”ということなんですよね。逆に食べるシーンがない作品はどこか無機質に感じます。食べる行為って欲望をむき出しにすることだから、食事のシーンのあるなしや、食べ物の扱いが丁寧かどうかで、その作品の見え方が違ってきます。

福田 食事のシーンは思った以上に深い意味を感じさせますよね。物語の中で一緒に食事をしたのに、離れて行ってしまったらそれは裏切り者。ご飯食べて腹の底を見せあったのに何故?って。だから、物語にそういう描写が入っているなら、作者も鑑賞者も敵かそうじゃないかを混同しないように見極めることが必要だと思います。

上白石 普通に考えて、普段の生活でも、一緒に食事をしない人とはお付き合いしないですしね。友達もそうですけど、一緒にご飯を食べてそこから関係が始まる。人となりが見えるのも食事の時ですし。実を言うと、私はその食事のシーンがとても苦手なんです。どう見せたらいいかわからなくなってしまう・・・。そういう時は福田さんの「フード理論」の本を思い出しますね。こういう意図があって食べるシーンを作っているんだって、納得できると思います。

上白石萌歌作の“WOODEN FOOD”!ケーキボックスに入れて

お菓子は最高のエンターテイメント

上白石 食べ物の中でも、福田さんがお菓子と向き合おうと思ったきっかけは何ですか?

福田 基本的に人の欲望に興味があったから。お菓子は、映画やゲーム、漫画、音楽と同じように娯楽なんですよね。

上白石 お菓子は幼いことから興味があったんですか?

福田 作るのは興味がありました。母にいちばん最初に買ってもらった高額なおもちゃが“ママレンジ”。小さなフライパンで、本物のホットケーキが焼けるおもちゃです。そこからですね。プレッシャーはあるけど、好きな仕事だからそのことに対してのアイディアはなぜか出てくるんです。

上白石 それをアートにまで広げていくってすごいことですね。お菓子って、洋菓子だけでなく日本の和菓子も素晴らしいですよね。美しくて芸術的で、食べるのがもったいないけど食べてもおいしい!

福田 私の友人の若い和菓子職人さんが、“お菓子は美しいけど食べてなくなってしまうのがいい”って。なるほどなって思いました。美しいものの儚さ。萌歌ちゃんの舞台のお仕事に似ているかもしれない!同じ舞台でも、昨日と今日では違うと思うし。

上白石 そうかもしれないですね。どちらも芸術ですね。福田さんご自身は芸術的な観点でいうと、お菓子にはどういう可能性があると思いますか?

福田 お菓子は芸術ではあるけれどエンターテイメントかな。楽しい。可愛い。癒し。そういうものであってほしいですね。これを食べるときは幸せって。だからお菓子は可愛いで十分だと思うんです。ここ最近は、すべてを“カワイイ”という一言でまとめてしまう傾向があるでしょう。美しいとかカッコイイとかの上位互換は可愛いなのかしら?でもお菓子はカッコいいって言って食べている人はいないし、お菓子はやっぱり可愛くあってほしいかな。

上白石 見て可愛くて、食べていろんなことを忘れられる。失恋のシーンとかもケーキを食べまくっていることが多いです。お菓子自体がエンタメなんですね。

福田 見た目がかわいくて癒される。だけど“可愛い”は“怖い”でもあるんですよ。“食べちゃいたいほど可愛い”って言うでしょ。

上白石 あ、それ言いますね!

福田 “可愛い”って言葉は本当に意味が深いですね。その“可愛い”の最たるものがお菓子だと思っています。

出来上がったお菓子を木片のカプチーノとともに

――撮影を終えて――

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup : Tomomi Shibusawa(beauty direction)
styling:hao
撮影協力:マルニ木工
WEB:https://www.maruni.com/

上白石萌歌着用
ブラウス ¥39,600 クローゼット(H3O ファッションビュロー)、デニムパンツ ¥38,500 バウム・ウンド・ヘルガーテン(S&T)、ネックレス ¥23,293 スーザン アレキサンドラ(LYDIA)、その他 スタイリスト私物

【SHOPLIST】
H3Oファッションビュロー 
03-6712-6180

S&T
03-4530-3241

LYDIA
03-3797-3200

Kamishiraishi Moka
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞し、デビュー。2019年、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。adieu名義で音楽活動を行う。数多くのドラマ、映画に出演する傍ら、「The Covers」(NHKBSプレミアム)のMCも務める。現在、舞台「リア王」にコーディリア役で出演中。▶︎https://stage.parco.jp/program/kinglear

MBSドラマイズム 「滅相も無い」 4月16日(火)初回放送スタート 
WEB:https://www.mbs.jp/messoumonai/
放送日時:MBS 毎週火曜深夜0時59分~
     TBS 毎週火曜深夜1時58分~

Rika Fukuda
菓子研究家。新宿高野に就職後、独立。書籍や雑誌で提案するフルーツレシピが人気。著書に『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『季節の果物でジャムを炊く』(立東舎)、『物語をおいしく読み解く フード理論とステレオタイプ50』(文春文庫)など多数。本誌装苑では“フード”を連載中。
Instagram:@riccafukuda 

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