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上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.7 写真家 石田真澄

2023.07.28

写真に興味を持つようになったのはどうして?

上白石萌歌(以下 上白石) 真澄ちゃんとは2021年に映画のキャンペーンで写真を撮ってもらったのが最初で、仕事では2回ぐらいご一緒したかな。自分と同世代の人がこんなに活躍していて、すごく刺激を受けてます!

どうして真澄ちゃんの写真に惹かれるのかあらためて考えたときに、全部の写真に大事に光を取り込んでいるところだと思って。逃したくない光を写真に閉じ込めている。そして被写体がとてもリラックスしている。会ったことない人に対して親近感さえ覚えるの。

私も趣味で写真を撮るんだけど、人にカメラを向けることってすごいことじゃない?見るよりも強い行為で、すごく緊張が伴うでしょ。それを全く感じさせないのがすごいなって。会話するように写真を撮っているみたい。そもそもなぜ写真を始めたの?

石田真澄(以下 石田) 中学に入った時ガラケーを持っていたんだけど、すでに当時カメラの機能もよくなってきていたから、それで写真を撮るのが楽しかったの。それまでカメラは修学旅行や運動会以外持ち歩くということはなかったから、日常で写真を撮ることはそこまでなくて。その後に小さなデジタル一眼レフを使うようになってから更に撮るようになったかな。

上白石 真澄ちゃんのインスタをさかのぼると、同級生をずっと撮っている写真があって、あの頃ね。“写ルンです”とかでも撮ってたの?

石田 撮ってた!高校の時の海外研修旅行で、デジタル一眼レフカメラ以外に何かカメラを持って行きたくて、小学生の時に“写ルンです”を使っていたのを思い出して、一つ持って行ったの。それがきっかけでフィルムを使うようになった。当時、学生という肩書きから外れる事がすごく怖くて、この毎日を忘れたくないと思った事がきっかけで友達や日常の風景を撮り続けてた。

上白石 今日もコンパクトカメラ二つ持ってたね。

石田 今日はね、この小さなサイズのカメラがいいかなって。

自分の色って、自分じゃわからない

上白石 真澄ちゃんの撮るスタイルには一貫したものを感じる。一眼レフで構えて撮るより、旅先で撮るスナップ写真のように小さいカメラで撮るという。そして、どんどん真澄ちゃんの色がはっきりと表れてきてとても洗練されていく感じがする。自分の写真の“色”って自然と見つかったの?

石田 最初は自分じゃわからなかった。展示をしていろいろ意見を受け取って、“あ、そうなんだ”ってはじめわかる。大学1年の時に、展示をしてたくさんの方に見てもらって、そこからわかってきたかな。それまでは意図して作品を作ろうと思っていたわけじゃなく、好きなものだけ撮っていたから、以外と“色”はわからなかったな。

上白石 自分の表現したものって客観視できないよね。

石田 そうだね。“写真集を作るために”とか“賞を取るために”って、最初から向き合っていれば違ったかもしれないけど、そうではなかったから。今はだんだんと客観視できるようになってきていると思う。

上白石 真澄ちゃんの写真に感じる青を、私は勝手に“真澄ブルー”って呼んでいるんだけど、もともと色がないもの、例えば光がそうなんだけど、真澄ちゃんを通すと真澄ちゃんの色になる。フォトグラファーの人って、持っている機材は、そう大きく変わらないのに、なんでその人しか表現できないものがあるんだろう。それに気づいたとき写真をとることのすごさを感じた。画家と一緒だよね。キャンバスにのせる色や技法の表現がみんな違う。そういうことを意識したことある?

石田 それでいうと、最近何人かの友人で旅行に行った時に、それぞれでラインのアルバムに写真を追加していたのね。それを見返しているときにみんなのアップしている写真の違いが面白いなって思った。同じところに行って、同じものを見て、近くにいたのに「こんな見え方していたんだ」と気付かされる。同じ場所にいても見ている角度が違ったり、何を綺麗だと思って撮っているのかの違いが顕著に出るんだよね。友達とのラインのアルバムのような身近なものでもその違いを感じたかな。

フィルムの写真の魅力はどこに?

上白石 真澄ちゃんはずっとフィルムで撮影しているけど、それにこだわるのはどうして?

石田 フィルムを使うきっかけになったのは高校の海外研修なんだけど、持って行った“写ルンです“が研修中に撮り終わらなくて、その後1か月かけて撮ったの。フィルムって現像してみるまで、何が写っているかわからない事が楽しいって言うでしょ。確かに何が写っているかわからないものもあるんだけど、その前後の写真とか、ちょっと写っているものを見て想像して全部思い出せた。アイフォンで撮ると、意図的に見返すという機会が少ないけど、フィルムで撮ると現像から上がったタイミングで、その当時の記憶を思い出す瞬間があることがいいなと思ったんだよね。そして、記憶を思い返すからだんだんその記憶が濃くなってくる。英単語を覚えるみたいにね。英単語って時間を空けながら、そして時間をかけて徐々に覚えるでしょ。時間を空けて見直すことによって、思い出が濃くなって心地良くなって、安心する。そこからフィルムで撮るようになったな。

上白石 でも、仕事でフィルムを使っていると、撮れているか不安になることない?デジタルとフィルムと二刀流でやっている人もいるけど、真澄ちゃんはフィルムオンリーでしょ。ドキドキしない?

石田 毎回不安かも(笑)。特に二日間のロケや海外ロケとか。でも、今ここでデジタルを使ったら、自分にとっての保険用になっちゃう気がしてるんだよね。とりあえずおさえでとっておく、という使い分けになってしまう気がするんだ。自分なりの使い分け方が見つけられたらいいなとは思ってる。

被写体に緊張を感じさせないのが素晴らしい!

上白石 不思議だけど、フィルムの方がいろいろなものが宿っている感じがするね。とくに真澄ちゃんは人を緊張させないから、自然と被写体も心を開く。それがそのまま写真に写るんだと思う。空間とか時間とかも写る。真澄ちゃんの写真が素敵なのは、真澄ちゃんの人柄とか、独特な雰囲気を持っている人だからだと最初から思っていた。緊張ってする?

石田 初めての人は緊張します!

上白石 でもその緊張は写真からは伝わってこない感じがする。

石田 写真撮る人が、焦っていたら撮られていて心配にならない?問題なくうまく撮れているのを途中で共有出来たら、お互いに安心できると思うんだけどね。今こんな感じで撮ってますよ、とかモニターチェックとか。フィルムだとそれが出来ないから対面しているときは、不安がないようにするのがとても重要だと思っている。短い時間内でそつなく撮影することは難しくないけれど、75点ぐらいの完成度で常にそつなく終わるのは嫌。だから対人の場合は、心地よい時間を過ごせる関係性を常に気にかけるかな。それが最優先で撮影のイメージを決めるかも。例えば、撮影場所もいっぱいまわって被写体が疲れてバタバタと終わるより、リラックスして何事もなく終わることは、仕上がりの写真の完成度と同じぐらい重視するかな。

上白石 私も含めて、みんなすごく安心しきって真澄ちゃんに撮られている。写真って不思議で、お互い信頼し合っているかどうか怖いくらわかるよね。機械なのに見透かされるような気がするけど、真澄ちゃんの写真には少しもこわばりを感じないのが素敵。震えるぐらい緊張する人もいるでしょう。でも緊張がすべて悪いわけじゃなく、その空間じゃなきゃ生まれない写真もあると思うから。

石田 人によっても違うし、時と場合によっても違うね。

上白石 これから、どういう写真を撮っていきたいとか目標はある? 

石田 今と変わらずに、人も物もいいと思ったものは平等に見ていたいな。

上白石 インスタの写真を見ても、人も物も同じぐらいの熱量で偏りがないよね。そして、真澄ちゃんのホームページも好き!時間ごとに写真が進んでいくのがとても素敵。

石田 お世話になっているデザイナーさんが、「石田さんの写真はいろんな時間の光があるから」って、たくさんの写真を時系列で表現してくれて。昼間見るのと、夜見るのとでは見え方が違う。私もとても気に入ってるの。

上白石 これからは昼だけでなく、夜の光もたくさん撮ってほしい!

石田 今は昼間の仕事が多いけれど、夜も楽しいよね。

撮影を終えて

萌歌 私は真澄ちゃんの写真が好きだから、今回の撮影では、“真澄ちゃんが撮る写真の画角の中にいる”“真澄ちゃんの光の中にいる”という興奮があったな。

石田 萌歌ちゃんは、私の写真を理解してくれているからとても安心して撮れた。初めて撮る役者さんでも、なんかうまくいくなって思うときは、私の写真を見ていてくれている方だったりするの。こう出来上がるだろうという想像がお互いに共有できていると、とても心地よく撮れる。萌歌ちゃんは写真も撮るから、こうしたらきれいかなとか、こう動きたいなというのがちゃんとあって、それが伝わってくるのが楽しかった。自然にゆっくり時間が流れて、気持ちよく撮影ができたな。

――撮影を終えて――

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup : Tomomi Shibusawa(beauty direction)
styling:hao

【服クレジット】
トップス ¥39,600 ジョン、シューズ ¥58,300 グレープ(共に ザ フォーアイド)
MAIL:info@thefoureyed.shop
デニムパンツ ¥40,700 コトハヨコザワ(オン・トーキョー ショールーム)
TEL:03-6427-1640
ピアス ¥20,115、キーホルダー 参考商品 共に サンディー リアン(リディア)
TEL:03-3797-3200

Kamishiraishi Moka
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞し、デビュー。2019年、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。adieu名義での音楽活動を行う。4月からスタートのTBS金曜ドラマ「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」に出演。数多くのドラマ、映画に出演する傍ら、「The Covers」(NHKBSプレミアム)のMCも務める。

Ishida Masumi
1998年生まれ。
2017年5月、自身初の個展「GINGER ALE」を開催。2018年2月、初作品集「light years -光年-」をTISSUE PAPERSより刊行。2019年8月、2冊目の作品集「everything with flow」を同社より刊行。雑誌や広告などで活動。現在、福岡県福岡市の本屋青旗(https://aohatabooks.com/)にて、夏帆写真集「おとととい」の写真展「otototoi」を開催中。
WEB:http://masumiishida.com/

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