上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.27  最終回 ミュージシャン 水曜日のカンパネラ・詩羽

上白石萌歌さんがジャンルを問わず、今気になる人とさまざまなテーマでお話を伺う連載。27回続いた人気の企画ですが、今回をもって上白石萌歌さんの卒業となります。最終回は、本誌装苑5月号のファッションストーリーと連動させて、水曜日のカンパネラの詩羽さんが登場です。2人は4月25日公開の映画『パリピ孔明 THE MOVIE』で共演。対極のイメージなのに不思議と意気投合し、心地よいリズムで会話のラリーが。映画のこと、歌のこと、ファッションシューティングのこと・・・。楽しい2人の会話が続きます。

今回は装苑5月号のファッションページと連動!

上白石萌歌(以下 上白石) 今日は装苑5月号のファッション撮影も一緒にできて楽しかった!

詩羽 なかなか普段とは違う雰囲気で良かったよね。かっこいいとかわいいが相まって。

上白石 詩羽は装苑のイメージがすごくあるね。

詩羽 仕事始めて結構早い時期に装苑デビューさせてもらったんだよね。私も学生の時からファッションが好きだったから、装苑に出してもらえて嬉しかったな。

上白石 節目節目の詩羽を装苑で見ている気がする。たしか断髪式やってたよね?

詩羽 あれがちょうど一年前。武道館のライブが終わった後だったから。

上白石 すごく装苑っていう雑誌と詩羽がリンクするよ。

詩羽 嬉しい!

上白石 今回の撮影は“スーパーロマンティック”と“ゴシックモード”のファッションシューティングだったね。どうだった? 

詩羽 “ゴシックモード”の感じ私は好きなんだ。

上白石 私もすごく好きだった!

詩羽 かっこいいとかわいいがミックスされているゴシックってやっぱりいいんだよね。ゴスロリもめちゃめちゃ好きだし、ロリータとかもいいね。

上白石 ファッションのルーツとしてはそれぞれ近いよね。

詩羽 私はいろんなファッションをやってきたから、服もたくさん持ってる。去年はロリータファッションにはまっていて、ワンピースドレスみたいなものをたくさん買ったな。そういうスタイルが今日もできて楽しかった。

映画で共演して急接近⁈

上白石 私たちって会うのは4回目ぐらいだよね。今日ですごく急接近したような感じがする。この記事を見ている人は、“なんでこの組み合わせ?”って思うかもしれないけど、私たちは『パリピ孔明 THE MOVIE』という映画で共演したんだよね。

詩羽 撮影現場とかでは全然話さなかったのにね。

上白石 同じシーンが少なかったから。

詩羽 ほぼ同じシーンがなかった。映画の現場でもパリピのドラマの時もなかなか会えなくて、打ち上げでやっと話せたね。

上白石 詩羽はドラマの時は詩羽の役で出ていたけど、映画ではshinという役。

詩羽 ドラマと映画でまったく違う役で出演させてもらうのって珍しいよね。普通ドラマから引き継いで同じ役で出ているでしょ。私は全く別人だから不思議だった。

上白石 映画では、私と孔明がタッグを組んで、そのライバルとして神尾楓珠さん演じる司馬潤とshinの兄妹がいて。

詩羽 同じシーンはなかったけど、萌歌ちゃんが歌うシーンはちゃんと見てたよ。

上白石 パリピのドラマを撮る時に、私が演じるシンガー“EIKO”っていう人物をリアルに存在する人と考えたときに誰がイメージできるかなって考えたの。自分が演じる時に、この役を他の誰かが演じるなら、と想像する癖があるんだけど、EIKOに関しては詩羽が真っ先に浮かんだんだよね。あと幾田りらちゃんも浮かんだ。そしたら、その3人で映画のエンディングテーマを歌うことになって!

詩羽 本当にびっくり。なかなか一緒に歌うことのない3人が歌うとはね。でも嬉しかった。

私と萌歌ちゃんは画材が違うんだよね

上白石 声質も全然違うしね。詩羽は画材が違うって言ってたけど。

詩羽 そう画材が違うんだよね。私と萌歌ちゃんは一般的に見たら交わることがなさそうな感じでしょ。きっと誰もがそう思う。萌歌ちゃんは私の中で水彩絵の具なの。水彩って、他の色が入ってもなじむ。萌歌ちゃんはいろんなことになじむ人っていうイメージがすごくあるの。で、私はポスカ!色がガツンと出る感じ。だけど乾いて新しい色を塗ったら前の色を全く消すことができる。萌歌ちゃんの水彩画って、重なっていくことで色の深みが出てくるんだよね。性格の違いなのかなと思って。

上白石 すごく素敵な表現!

詩羽 違いはあるけど、例えば同じ絵を描くときに水彩を使った後に最後にポスカを使っても、そのポップさと淡い感じがマッチする。そんなふうにして出来上がる作品のように、意外とここもマッチしたかなって思った。

上白石 私が感じるのは、詩羽はポスカなんだけど紙からはみ出して描かれているの。なんかそういうイメージなんだよね。

詩羽 多分、私のイメージが強いからなぁ。

タイプの違う3人でのレコーディングが楽しすぎた

上白石 詩羽とりらちゃんと3人でレコーディングの時も、詩羽の声だけやたら大きかったよね。(笑)

詩羽 声が通るのよ。レコーディングの時に “声を拾いすぎちゃうから、詩羽だけ一歩下がって”だって。面白すぎたよ。

上白石 3人のレコーディング、新鮮だった。

詩羽 実は、私はレコーディングがあんまり得意じゃないんだけど、3人でのレコーディングは楽しすぎたね。

上白石 画材も違うし、キャラクターも全然違う。こんな人たちが交わったらこんなに面白いものができたよって。

詩羽 パリピの映画は本当にいろんな情報が詰まっている作品。みんなが強い。すごい人たちの集まりだった。

上白石 漫画の最終回みたいにね。

詩羽 ボスキャラっぽい人たちが全員集合しちゃってね。

ずっと前から、私は詩羽のファンだから

上白石 もともと詩羽のことはすごく好きで、水カン(水曜日のカンパネラ)としてデビューした時からずっと見てたよ。世間があなたの存在にすごく注目してた!

詩羽 ありがたいです。

上白石 詩羽のファッションがすごく気になっていたから、インスタとかSNSでずっと追いかけていたんだけど、会ったらさらに気になる人になった。私は詩羽の歌っている時の顔が好きなんだ。よく言われない?

詩羽 どうだろう?ファンの人には言われるね。

上白石 上白石 私、ファンだから。

詩羽 確かにステージに立っている時はもう無敵。マリオのスターのように本当にキラキラした状態でやってる。運動が得意じゃないから体力に自信がないんだけど、ステージで体力切れになったことは1回もないし、逆に動き回って走り回っているのが楽しい。そういうのが歌っているときの顔の表情に出ているのかもね。

上白石 歌に愛されている人だなって思う。あと動きもいいよね。歌に導かれて踊る即興っぽいダンスが好き。

詩羽 即興の方が得意!萌歌ちゃんはどっちがいい?振りが決まってる方か、即興か。

上白石 私は動かないよいつも。不動。(笑)

詩羽 ライブの時も動かないの?

上白石 ほぼスタンドマイクであんまり動かなくて。

詩羽 私はもう動きまくってる。スタンドなんか置いておかれたら、多分マイクで音拾えないくらい動いてるよ。(笑)振りが決まっているのは、台本覚えるのと同じで頭に入るけどうまくできない。音に合わせてフリーに動くのが好きだな。

上白石 そういう意味では本当にスタイルも真逆だし音楽も全然違うね。

詩羽 声質も違うしね。私はadieuの声めちゃめちゃ好きだよ。

上白石 嬉しい!詩羽のソロ曲もいいよね。水カンでは見られない詩羽の顔が見られるし、こういう心の表現もあるんだなって感動する。

猫って人生変えてくれるよ

上白石 詩羽は猫への愛情もすごいよね。

詩羽 お勧めしますよ。萌歌ちゃん、猫を飼いたいってずっと言ってるよね。命を預かるっていう意味では責任は大きいけど幸せだよ。幸せなことしかないよ。

上白石 最近は詩羽に猫っぽい要素を感じる。そして詩羽は猫を動物というより人として接してそう。

詩羽 ルームシェアして一緒に暮らしている状態。お互い干渉するわけでもなく、尊重し合ってる。

上白石 きっと猫は詩羽のことを大きい猫ちゃんだなって思ってるね。

詩羽 多分、大きい猫だなこいつって。(笑) 時々おやつをくれるやつだなとか思ってるはず。

上白石 表現とかもすごくバイタリティがあって力強い人だと思っていたから、そういう癒しの時間があってよかった。

詩羽 家に帰る幸せができて、本当に毎日が豊かになった。嫌なことがあって落ち込んでも、家に帰ったらそれが打ち消されるから。心が傷つく機会がすごく減った。だから心が疲れてきたかもって思う時期が来たら、それがあなたの猫を飼う時です。

上白石 そうなの?でも、私まだ自分の世話もままならないから・・・。

詩羽 そうか、自分の世話はできなきゃだめだね。私は意外とちゃんとしてるから。家とか綺麗だよ。

上白石 物がすごく多いけど、整頓できているんだよね。

詩羽 例えば地方遠征のとき、ホテルに着いてまずするのは、化粧品を使う順番に全部並べること。シャンプーも持ってきているものを自分の使いたい場所に置いて、ホテルで自分が生活しやすい環境にセッティングする。

上白石 それは小さい頃から?

詩羽 そうだね。小さい頃から布団をしわ一つなく、ぴたーってしてから布団に入る。なんか変なルーティーンが自分の中にたくさんあって。生活の中のマイルールってある?

上白石 家に帰ったらすぐパジャマに着替える。あらゆる締め付けから解散されたくて。

詩羽 それはいいね。

歌うこととお芝居は少し似てるかも

上白石 詩羽の誠実さって歌に出てる。そして歌い方もどんどん変わっていくね。

詩羽 そうだね。声色がどんどん増えてくなって感じはする。

上白石 「ミスiD」のオーディションも見たし、水カンとしてデビューした時の歌い方も知ってるし。最新の曲は『願いはぎょうさん』だよね?

詩羽 『願いはぎょうさん』とか『動く点P』とか。

上白石 『願いはぎょうさん』は、聞いた時も今までとちょっと違うと思った。なんかshinっぽかった

詩羽 それはわかる。shinの歌い方は水カンとちょっと変えたから。水カン自体はshinのキャラクターとはまた違う感じ。私の中では水カンはポップス。shinはもっと純粋で音楽に対するまっすぐさを出したね。

上白石 本当に詩羽って不思議。『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』に出ていた時も、詩羽らしくその役にはまっていたんだけど、歌う時のキャラクターは全然違ってすごいな。私がお芝居を10歳ぐらいから始めてやっとできたようなことを軽々とやっていて、ずるいなぁ。(笑)

詩羽 萌歌ちゃんから“演技教えてください!”ってラインがきて、誰が誰に言ってんねん!て。(笑)

上白石 いやー、素晴らしいから。歌ってお芝居と同じところがあるのかな。

詩羽 水カンは、演じる延長線上に音楽があるから確かにそう思えるかもね。

上白石 演じるっていうことを、歌を通して自然にやってきていたんだね。

詩羽 でもやっぱり違いはあるかな。人とのコミュニケーションだったり、キャッチボールだったり、そうやって作り上げるのが演技の面白いところ。音楽にはそれがないからね。基本自分の中で完結しているものを、どううまく表現するかだから。演技って誰かがいる中で演じるでしょ。その現場ごとの違いがまた面白い。展望感や空気感が人によって違うっていうのをすごく感じる。

ネガティブはもうやめた!

上白石 詩羽は、新しいことに対して怖いとか、飛び込むのがいやだとかあまり思わないんじゃない?基本的にポジティブなバイブスしか感じないんだけど、それはもともとの性格なのかな?

詩羽 いや、もともとはネガティブ。だけどそれは意味がないなって気づいてやめたんだよね。

上白石 それすごくわかる。私も最近ネガティブと人見知りやめてみた。

詩羽 一旦やめてみよう、くらいの気持ちで。一日やめただけでも変わっていく何かがあったりするんだよね。よく飽きたって言うんだけど、SNSが飽きたからもう触りませんっていう時期もあったりして。人見知りに飽きたからコミュニケーションとるくらいの感覚。でも、ネガティブは意味ないからやめたね。

上白石 人は明るい方が素敵だと思うし、心は健康な方がいいからね。私も最近人見知りやめるのと同時に、コミュニケーションをとるために現場でいろんな方にプロフ帳を書いてもらっているんだよね。前から役作りのために、その役になってプロフ帳を書くっていうのをやっていたんだけど。

詩羽 あれって裏表一枚の紙に、自分の人生をぎゅっと凝縮しなきゃいけないやつでしょ?その人の意外な一面が知ることができるから、それ絶対いい!

自分にあまり期待しないほうが自分らしくいられるのかも

上白石 詩羽の自分自身の表現とか、やりたいことへの貪欲さに共感を覚えるんだけど、自分を好きでいるための秘訣ってある?

詩羽 自分のことは大好きだし、大嫌い。矛盾が前提としてある中で、矛盾を愛してるっていうのは最近すごく感じるかな。自分に対して希望を持ってるけど、全く持ってない自分もいて。でもそれってどっちの自分も私。ただその時によって出てくるものが違うだけ。ネガティブとかポジティブもそう。ネガティブになったら私らしくないんじゃなくて、ネガティブタームの詩羽が現れたのね、オッケー!くらいの気持ちで。自分自身を受け入れるっていうことをしてから、すごく生きやすくなったって思う。自分に寛容でいることが、私らしさを自然と作っていったのかな。シーズンで変わったりするけど人間なんてそんなもんだよ。変に期待しないっていうのがいいかもしれない。

上白石 不思議だね。子供みたいに無邪気なところがありながら、しっかりとした大人の考え方をもっている。会えば必ず元気になるし、これからもいろんな人にたくさん元気を与え続けて欲しい。詩羽に元気がないときは私が与えてあげるからね。

詩羽 私も元気出るよ。私がパーって強く光るライトだったら、萌歌ちゃんはもっと広く優しくみんなを照らすタイプだよね。すごいなって思ってる。

上白石 灯台の光になりたいなあ。

詩羽 なってる、なってる。そのくらいの差が二人にはあるから、だからこそ尊敬できるんだな。

上白石 私も尊敬してます。楽しい撮影と素敵なお話をありがとう!

――撮影を終えて――

――上白石萌歌さんからの卒業メッセージ ――

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup : Tomomi Shibusawa、Kana Ohira(beauty direction)
styling: hao


上白石萌歌着用
チェックトップ ¥49,500、Tシャツ ¥24,200 シーロン/デニムパンツ 参考商品 パメオポーズ(パメオポーズ表参道旗艦店)シューズ ¥53,900/グレープ(ナインフォックス ショールーム)

詩羽着用
ジップフーディ 参考商品、スカート ¥70,875、ベルト 参考商品/SANDY LIANG(LYDIA)/Tシャツ ¥17,050 モーメンタル、レッグウォーマー ¥26,400 アクア・リシュンスー、ピアス ¥15,400、ネックレス ¥29,700 マーランド バッカス(ナインフォックス ショールーム)/スニーカー ¥41,800 ミキオサカベ/タイツ スタイリスト私物

【SHOPLIST】
シーロン
info@siiilon.com
ナインフォックス ショールーム
info@9fox.ltd
パメオポーズ表参道旗艦店
03-3400-0860
ミキオサカベ
https://mikiosakabe.shop/ 
LYDIA
03-3797-3200

Kamishiraishi Moka
2000年2月28日生まれ、鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションにて、当時史上最年少の10歳でグランプリ受賞。‘12年にドラマ「分身」で俳優デビュー以降、数々の映画、舞台、ドラマで活躍。‘19年に、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。またadieu名義で音楽活動にも精力的に取り組む。4月からスタートするTBS金曜ドラマ「イグナイト-法の無法者-」では初の弁護士役に挑戦。4月25日公開の映画『パリピ孔明THE MOVIE』ではドラマに引き続き、ヒロイン•英子を演じる。
Instagram @moka___k


Utaha

2001年8月9日生まれ、東京都出身。2001年に「ミスiD2021」にて「アメイジング ミスiD2021」「赤澤える賞」受賞。同年に水曜日のカンパネラの2代目主演・歌唱担当として加入し、24年は日本武道館公演~METEOR SHOWER~を開催する一方で、ソロアルバム「うたうように、ほがらかに」をリリースし、多様な音楽表現を見せた。近年は、映画やドラマなどで俳優としての才能も発揮。4月25日に公開する映画『パリピ孔明THE MOVIE』に出演している。
Instagram @utaha.89

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