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上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.25  俳優 石田ひかり

上白石萌歌さんがジャンルを問わず、今気になる人とさまざまなテーマでお話を伺う連載。今回は親子役としてドラマで共演をした俳優の石田ひかりさんです。共演で意気投合し、プライベートの時間も一緒に過ごすことがあるようです。取材中も、終始満面の笑顔を絶やさないお2人。会話は演技の相談から動物愛護の話まで。2025年初の素敵な連載取材になりました。

初共演なのにはじめましてという感じじゃなかった

上白石萌歌(以下 上白石) 今日はいつもと違う空気が流れていますね。お母さまにしか作り出せないたおやかな空気!ちなみに私はひかりさんのことをお母さまと呼ばせていただいています。改めましてよろしくお願いします。私たちの出会いはドラマ『警視庁アウトサイダー』ですね。

石田ひかり(以下 石田) そう、萌歌ちゃんが大学を卒業した年だったわね。

上白石 2023年かな。

石田 そんな最近?

上白石 親子役として共演させていただいたんですが、とても印象に残る作品で面白いシーンがたくさんありましたね。

石田 私のシーンは、ほとんど萌歌ちゃんとのシーン。コロコロ掃除が大好きな親子っていう設定で、嫌なことがあるとすごく激しくコロコロをするっていうね。なんだか面白かったね。

上白石 木村ひさし監督は面白いことが大好きでした!あれが初共演。初めてお会いした日が確かクリスマスで、お互いクリスマスプレゼントを持って現場に行ったんですよね。ひかりさんのためにプレゼントを選ぶのがすごく楽しみで。勝手ながらもともとシンパシーをすごく感じていました。

同じ雑誌の創刊号と最終号に⁉

石田 同じ仕事をしていて、しかも姉妹で俳優。そして妹同士っていうことで、私もシンパシーを感じていたのよ。あのメイクルームで会った瞬間のこともよく覚えていて。なんて健やかな人なんだろうって。

上白石 わー!ありがとうございます。言葉を交わす前から全てを開け放したいっていう絶大なる信頼がなぜかあって、それ以来母として慕っています。私の実の母にも会っていただいたり、ひかりさんのお嬢さんと三人で食事に行ったり。本当に家族のようにお付き合いをさせていただいています。

石田 なんだか不思議なご縁よね。そして共通点もいっぱい。実はデビューの雑誌が同じ「ピチレモン」だったり。私は創刊号なのよ。

上白石 すごい伝説を作った方だ!私は最終号に載りました。偶然にも最初と最後ですね。

石田 オーディションのことも覚えているし、何もかも初めてだったから、なんでこんなにいっぱい写真撮るんだろうとか、なんでこんなにお洋服着るんだろうってすべてが驚き。私は中学1年生とか2年生だったかな?萌歌ちゃんは何年生だったの?

上白石 小6でした。濃ゆいメイクが怖くていつもマスカラに怯えてて。自分の知らない世界でしたね。でもとてもいい経験でした。カメラに慣れることもできたし。当時は他にどなたがいらっしゃったんですか?

石田 当時同じ事務所で田中りっちゃん(田中律子さん)が一緒にオーディション受けて、一緒に撮影もしたの。

上白石 レジェンドのみなさまだ!すごい。他にも共通点があるんですが、私たち姉妹は石田姉妹を目指そうってずっと言っているんです。恐れ多くも、石田姉妹のようになれたらと。

石田 とんでもございません!ただこの仕事、少し特殊なところがあるから、誰にも相談できない悩みを持つこともあって、そういう意味では姉の存在は本当に心強い。萌歌ちゃんもそうでしょう?兄弟や姉妹でお仕事されてる方たちたくさんいるけど、一度みんなで会ってどう思っているか話してみたいね。

上白石 それすごく面白いと思います! 

石田 あとは、そういう子供をもつ親たちとも話をしてみたい。

上白石 うちの母どうですか?私、よく怒られますけど・・・。(笑)

石田 どんな気持ちでスクリーンや画面を見ているのか聞いてみたいのよね。親にしかわからない喜びとか悩みがきっとあると思うから。

あの時代の厳しさがあったから今いい環境で働ける

上白石 俳優デビューはおいくつですか?

石田 本格的にデビューしたのは15歳ぐらいかな。

上白石 私お母さまが主演した「あすなろ白書」のDVDボックス持っていて、年末に一気見しました!あの頃のお話を伺うと、今の自分の忙しさの比じゃない。あの当時の作品の作り方とかいかがでしたか?覚えてらっしゃることがあれば。

石田 具合が悪くても休めないのが当たり前だったな。だから体温計とか家になくて、計ったところで休めるわけじゃないから意味がないの。でも最近までそうだったよね、コロナまでは。今は体調崩してもきちんと休めるという、ちゃんといい労働環境になったなって思うの。本当にいいことです。

上白石 それはお母さまたちが大変な思いをして、我々の時代まで継いでくださった、切り開いてくださったことだと思っています。だって玄関で寝てたって聞いたことがあります。

石田 玄関でね、靴を脱ごうと思って座ったら後ろに倒れてそのまま寝ちゃったの。あとね、家に帰った時にやっていた映画が、起きてテレビをつけたらまだやっていて。え⁉これしか時間経ってないのって。今はちゃんと22時とか23時に終わるでしょ。かえって物足りなかったりして。(笑)

上白石 我々からすれば、22時23時は結構遅いですよ。

石田 まだ撮れるのにって思っちゃうの。

上白石 私たちの時代なんて甘いな。

石田 そんなことないのよ。絶対そっちが正しいし、その方がいいと思う。私は親が丈夫に産んでくれたし、こういうちょっとポジティブな性格だから乗り越えてこうやって今話せるけど、体を壊した人もいっぱいいるからね。やっぱりそういう労働環境は大事です。

上白石 でも「あすなろ白書」を全部見てもそういうことを微塵も感じないんですよね。みんなすごく生き生きしていて。玄関で倒れ込んで寝るようなことは全く感じなかったので、エンターテイナーってすごいなって思いました。

石田 やるしかなかったからね。

上白石 全12話見て、人の記録だなって思いました。6、7話ぐらいからひかりさんがもう大人の女性になっていて。裸で椅子に座っているシーンとか、“うわー、もう大人だ”って思ったりして。それぐらい長いスパンで、すごく刹那的な時間を閉じ込めた作品なんですよね。これを残してくださった皆さんに感謝しかないです。

石田 もちろん私一人でできることではなくて、その時の全エネルギーを全スタッフと全出演者がそこに注ぎ込んだことは間違いないから。そういうふうに受け止めてもらえて本当に幸せだと思います。

いつもラインで相談しちゃう

上白石 自分が腐りそうな時やもうダメかもって思う時でも、ひかりさんがこんな素晴らしい演技を見せてくださるんだから、自分も頑張らなきゃって素直に思います。

石田 そんなことはないんですけど・・・。萌歌ちゃんのことだって私はいつも見ているし、本当にいつも気にしているし、ずっと幸せでいてほしいと思う。作品にも仲間にも恵まれて、それ以上にあなたが本当に努力しているのを私は知っているから。

上白石 見てくださっていたなんて本当に嬉しいです。でもお母さまにはよくラインで相談しますよね。迷ったすぐに。

石田 私が抱えたことのない悩みをぶつけてくるので困っちゃうんだけど・・・。私はそんなこと考えたことないっていうような。

上白石 例えば、“今日お芝居でスムーズに感情を作れなかった。本当に悔しいんですけど”ってラインしたら、めっちゃ大きい文字で、“人間だもの”って返信がきて。(笑)あ、いいんだこれでって。人間であることを忘れてたって。ものすごく元気出ました!

他人を演じるんだから悩んであたり前

石田 あとは、そんなに簡単にいかないよっていうことは伝えた気がする。芝居なんて一生かけても答えなんか出ないんだから悩んで当たり前だし、逆に“わかった”って言ってほしくないなって。ずっとこうやって、もがき苦しんで生きていくんだと思う。別の人間を表現するなんて正解のないストーリー。この先ずっと向き合っていくことだから、ああでもないこうでもないっていうのをずっと続けてほしい。

上白石 それが答えですね。確かに分かるわけがないですよね。むしろ私も始めたてがいちばん演技が上手でした。初めての作品が東野圭吾さんの「分身」っていうドラマなんですが、長澤まさみさんの幼少期の役で、母親の遺影を見るシーンですっと泣けたんです。あ、演技するの意外と簡単って。あの頃の自分に会いたい。

石田 経験を積むと、演技でちょっとこっちを向いた方がいいかなとか、ちょっと肩を動かした方がいいかなとか、いろんなこと考えちゃうじゃない。私もこのあいだ夏にやった作品で、子役ちゃんがとにかく自転車こいでくださいって言われて、もうそのことだけを必死にやってたの。それしか考えてないんだよね。

上白石 それ素晴らしい!

石田 こんなにまっすぐで純粋な気持ちにはもうなれないなって。私は並走するんだったら、スピード合わせた方がいいかなとか、ちょっとこっちに振った方がいいかなとか思うじゃない。彼女は何にも考えずにひたすらこぐ。

台詞は自分の身体を通して相手に届ける

上白石 沖田修一監督の作品に出た時、子供がすごく生き生きしていていいなって思ったので、監督にどんなオーディションをしたんですかって聞いたら、自分の好きな食べ物で歌を歌ってと言ったらしいんです。受かった子はそれがエビだったので、“僕の好きなものはエビ”って歌って踊ったらしいんです。もう台詞とかじゃないんですって。

石田 そう。芝居って考えれば考えるほど、ドツボにはまっていくのよね。でもやっぱり考えることはすごく大事。相手の台詞をちゃんと聞いた上で自分の台詞を出さなきゃいけないし、またそれをどういうふうに次の人に繋ぐか。実はものすごく考えなきゃいけない。台詞を体にちゃんと落とし込んで、その役として現場に立てるようにしていかなきゃいけないんだけどね。

上白石 以前、“明日ものすごく感情が難しいシーンがあるんですけど、ひかりさんならどうしますか?”って相談したら、もう現場入りの時点でその役の人として存在すればいいんじゃないっておっしゃっていただいたのをすごく覚えていて。いつも私は明るくしなきゃとか気を使ってしまうんですけど、そういうものを取っ払ってその日を過ごしてみたら、すごく自然に感情が出てきたんです。これなんだって。

初共演のときの感動は今も

石田 現場の空気に助けられることってすごく大きいじゃない。他の人の声を聞いて内面が刺激されたり。身も心も柔軟で、より動いて反応するっていうかね。そういうふうにして、気持ちが自然に萌歌ちゃんの体を通してまとわりついて表現していくという。でもちゃんとできてるよ!大丈夫よ。

上白石 もっともっと血の通ったお芝居がしたいって思っていて。年々緊張することが多くなって心臓がバクバクして台詞が言えなくなることがあって、すごく落ち込むんです。ダメだなって思うことばっかりで。でも、出来上がったものを見ると意外とそうでもなかったりとか。そういうことは増えてきたんですけど、しんどさは感じているんです。

石田 それはちゃんと誠実にお芝居っていうものに向き合っていることのあらわれですよ。

上白石 そうなんですかね?

石田 私は若い頃、本当になにも考えてなかったからね。(笑)

上白石 でもひかりさんと初めてお芝居した時に、こうなりたいって本当に心から思いました。私はただ台詞を聞いているだけだったんですけど、心に直接言葉を渡してくださる。その時私はお芝居をしていないような感覚になりました。本当に素晴らしいお芝居を受ける時って自然と心が動くから何もしなくていいんだって。お芝居っていうのは自分のためじゃなくて、相手に届けるものなんだなって。到底かなうものではないんですけど、ひかりさんみたいになりたいなって心から思いました。

お芝居はもがき苦しみつつ楽しんで

石田 とにかく答えは簡単には見つからないのでね。そこがこの仕事の醍醐味じゃないかな。

上白石 そうですね。だから楽しくもがくということが私の指針になっています。

石田 そうそう。できるだけ楽しんでもがき苦しむのだ、娘よ。もがき苦しめ。(笑)

上白石 はい母上!本当にこの関係性に感謝です。
でもひかりさんこの世界に娘が多すぎて、軽く嫉妬してます。私だけのひかりさんでいてほしいってずっと思っているんですけど・・・。

石田 まあでも長くやっているから、気づけば本当にたくさん子供がいますね。ありがたいです。

上白石 でもいちばんの娘でありたいです。

石田 お年玉上げたじゃない。(笑)

上白石 あー、親にももらってないのにいただいてしまいました!

石田 実の娘二人と萌歌ちゃんだけよ。

上白石 やったー!もう実質娘です。また親子役がしたいですね。今度はバトルしてみたいです。“もうお母さんて大嫌い!生まれてこなきゃよかった”って。

石田 いろんな形でまた共演したいね。

動物愛護のこと。いつかは自分の環境を整えてお迎えしたい

上白石 最後に動物愛護のお話を少し伺わせてください。

石田 私は犬を2匹飼っているんだけど、まだまだ悲しい境遇にいる子たちがいっぱいて、それを手助けするためにある団体をお手伝いしています。とはいえ毎日エサはあげられないし、お散歩に連れて行くこともできない。私が今できることは、その現実を知ってもらうことぐらいだと思っているんだけどね。今年もなるべく一頭でも多く、そういう環境からせめて温かいところに保護してあげたい。そしてできることなら次のお家を見つけてあげるお手伝いをこれからも何とか続けていきたいですね。

上白石 素晴らしいですね。そういう現実ってなかなか届きづらかったりするけれど、愛を持ってこういう場所で発言してくださることが大切なんですね。

石田 微力ですが影響力のある仕事をしているので、そこは存分に生かそうと思っています。私は自分が何を言われても本当に気にしなくて、ただ現実じゃないことや自分以外のことを言われるのは嫌。でも動物が好きな人は、そういうひどいことを言ってくる人は本当にいないです。

上白石 私もいつかお迎えしたいんです。でもまだ覚悟が足りないと思っていて。

石田 生き物だし、お迎えしたら20年近くのお付き合いになるからね。

上白石 覚悟が決まって、自分の面倒もきちんと見られるようになったら猫ちゃんを迎えたいな。まずはそういう環境をちゃんと作ること、自分を律することからだと思ってます。

石田 全然焦らなくていいし、その時が来たらね。

上白石 人生の夢なんです。

石田 動物は本当に純粋に見返りを求めないからね。

上白石 問題は、私、猫アレルギーなんです。

石田 え⁉それで猫飼いたいの?それ、大変よね・・・。

上白石 はい。そこからなんですけど、自分の寿命を削ってでもいいから一緒にいたいんです。

石田 そうなんだ。好きなのにアレルギーっていうのがいちばん切ないね。

上白石 ワンちゃんは大丈夫なんですけどね。猫アレルギー、頑張って克服したいと思います。その時はご伝授ください!今日はありがとうございました。

石田 素晴らしい仕事始めでした。いい一年にしましょうね。

――撮影を終えて――

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup :Kenji Toyoda
styling: hao


上白石萌歌着用
ベスト¥60,500、中に着たシャツ¥41,800 共に ラインヴァンド(ラインヴァンド カスタマーサポート)/Tシャツ¥44,000 シー ニューヨーク(ブランドニュース)/パンツ¥82,500 ミナ ペルホネン/腰に巻いたスカーフ¥25,300 フミエタナカ(ドール)/ベルト¥139,000 デシグアル(デシグアル 銀座中央通り店)/シューズ¥15,180 ハルタ/その他 スタイリスト私物

石田ひかり着用
コート¥82,500、ベルト¥34,100 共に フミエタナカ(ドール)/シャツ¥39,600、つけ襟¥23,100 共に キーコ(フクリエ)/ブラックレーススカート¥39,600 ビリティス・ディセッタン(ビリティス)/中に重ねたグレースカート¥16,940 ミズイロインド(マーコート)/リング¥308,000、ブレスレット¥896,500 共に テッド・ミューリング(カジツ)/ブーツ¥99,000 デプト(DEPTカスタマーサービス)

【SHOPLIST】
カジツ
03-6810-0187
デシグアル 銀座中央通り店
03-6264-5431
DEPTカスタマーサービス
customer@d-e-p-t.tokyo
ドール
03-4361-8240
ハルタ
03-3874-3317
ビリティス
03-3403-0320
フクリエ
055-919-4254
ブランドニュース
03-6421-0870
マーコート
03-6421-4401
ミナ ペルホネン
03-5793-3700
ラインヴァンド カスタマーサポート
customer@leinwande.com

Kamishiraishi Moka
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞し、デビュー。2019年、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。25年1月10日公開の映画『366日』に出演。ドラマに引き続き出演が発表された映画『パリピ孔明THE MOVIE』は25年4月25日に公開する。数多くのドラマ、映画に出演する傍ら、『The Covers』(NHKBSプレミアム)のMCも務める。adieu名義で音楽活動も行い、2024年7月、約2年ぶりとなる新曲「背中」を配信リリース。8月「SUMMER SONIC 2024」に出演。12月22日には約1年半ぶりにワンマンライブを開催した。

Ishida Hikari

1972年5月25日生まれ。東京都出身。1986年俳優デビュー。その後、映画『ふたり』や、NHK連続テレビ小説『ひらり』、フジテレビ系ドラマ『あすなろ白書』などで主演を務めた。1991年 『ふたり』『あいつ』『咬みつきたい』で、第15回日本アカデミー賞 新人俳優賞受賞。現在、木ドラ24『週末旅の極意 2~家族って近くにいて遠いもの~』(テレビ東京系)にて主演。また2025年4月4日(金)公開の映画『アンジーのBARで逢いましょう』に出演する。

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