
写真家として活動するミチルと、心に傷を抱える少年トア。7 年前に運命的に出会い、姉弟のように支え合ってきた 2 人が、初めての旅に出る。北海道・女満別の雄大な自然を巡る旅は、互いの心を満たす幸せな時間となるが、やがてトアは心の闇を打ち明けはじめる——。
本作『青い鳥』は、増田彩来監督自身の「幸せってなんだろう」という問いと、旅先での記憶から生まれた物語。ミチルを演じた森七菜さん、トアを演じた黒川想矢さん、そして増田彩来監督に、作品の着想から撮影秘話、本作の魅力まで深く語っていただきました。
増田彩来=撮影 photographs : Sara Masuda / styling : Shoh Sasaki / hair & make up : Ai Miyamoto (yosine,Nana Mori) , Yumiko Chugun (Soya Kurokawa) / interview & text : SO-EN

映画『青い鳥』より
幸せって何?長年の問いと実体験から生まれた物語
―― 映画を拝見し、短歌の読後感と余韻に近いものを感じました。物語はどのように着想されたのでしょうか。
増田彩来(以下、増田):「幸せってなんだろう」という問いが、自分の軸として常にありました。いわゆる幸せと言われるものが、なんかしっくりこないというか、そう思えないこともあったんです。
でも写真を撮っている時にファインダーの先にあるものはいわゆる〈幸せ〉のような時もあったりして、「結局なんなんだろう」という疑問がずっと自分の中にありました。
―― ご自身の問いが原点なのですね。
増田:そんな問いがある中で、大好きな旅をして写真を撮りながら、いろんな場所に出かけていたんです。ある時、友達と行った旅がすごく素敵な時間で。いろんな写真を撮って、いろんな景色に出会って……それで、最後に夕日が落ちる時間帯に海に行ったんです。
二人で「いい旅だったね、いい時間だったね」って話している中でだんだん日が暮れていき、空が青く染まった。そこに白い鳥が飛んできたのを見て、友達が「青い鳥だ」と言って。
―― 美しい光景ですね。
増田:はい。二人で「青い鳥だ!」ってはしゃいでいた時、幸せが何かわかった気がしました。それは形があるのではなく、そこに至るまでの時間や出会い方、すごく広い意味で自分の見方次第というか。
自分にとってはそれがとても大切な気づきで、今後、大切にしていきたいものだと思ったんです。その体験から物語が生まれました。
―― 童話の『青い鳥』にもインスパイアされているのでしょうか。
増田:小さな頃から絵本をよく読んでいて、『青い鳥』は好きな絵本の一つです。童話の内容というよりは、幸せというものを考える時に「青い鳥」という言葉とイメージがあり、様々な要素をつなげていったらタイトルになりました。
今作と内容は違いますが、幼少期にあの本を読んだからこそ「幸せってなんだろう」という問いが生まれた気がします。

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―― 語られない背景も多く、想像の余地が多くある映画です。ミチルとトアの背景を、お二人はどのように理解されていましたか。
森七菜(以下、森):監督が用意してくださったキャラクターシート(資料)は読んでいましたが、ミチルが監督と重なって見えたら、自分なりの正解に近づける気がするなと思っていました。なので監督のことを思い浮かべ、自分の中のイメージを重ねてお芝居をしたところがありました。先ほどの旅のお話なども聞いていたので、それを私がもう一度、生き直すようにできればいいなって。
黒川想矢(以下、黒川):最初、脚本を読んだ時は、すごく寂しいなって思いました。トアのことはまだ完璧に理解できていないのですが、不思議と自分に重なるところもありました。トアは葛藤を抱えていますが、自分の苦しい・辛い気持ちを、うまく言葉にできなくてもミチルに伝えようとする部分には強さも感じます。
ただ、「トアがこういう人だ」というのは、自分一人で考えているだけではよく分からなくて、監督や森さんと話しながら役に向き合っていました。
森さんは、写真を撮ってくださったりと普段からミチルのように接してくださったので、そういうことの積み重ねがトアへの共感につながっていったのかなと思います。


「目で見ているのはその人自身の意識」、登場人物の心情を映すアングル
―― 増田監督の写真の世界がそのまま映像化されているような映像美も印象的でした。今作の視覚言語で大切にされていたことは何でしたか。
増田:特に意識していたのはアングル作りです。普段から、目に見えているものと実際のものは違う、と感じることが多くて。例えば、俯瞰して物事を見る人なら、自分の外側から状況を見ているような感覚になったり、逆に視野が狭いタイプなら、視界には目の前の相手しかいない……みたいなことがあるように思います。そう考えると、見えているものはその人自身の「意識」なんじゃないかな、と。その感覚をもって、今回は「ミチルやトアの意識のアングル」を考えながら撮りました。絵のための絵にならないように作る、というのは最も大事にしていました。
最初のシーンは、どこまでも広いところにいる意識。じゃあ、その「どこまでも広いところにいるときの感覚」を再現するアングルってどこなんだろう、という考え方です。
―― 衣装も二人ともブルー系統で統一感があって素敵でした。雪景色の中の映像美に一役買っていましたし、「青い鳥」というキーワードとの関連も効いていて。衣装はすぐに決まったのでしょうか?
森:いろいろと試着させてもらいましたが、決定した衣装は「あ、絶対これだな」という感覚がはっきりありました。それも皆さんと意見が一致して、すぐに決まった記憶があります。そこで「みんなが見ようとしているものが一緒なんだな」と思ったのも安心材料でしたし、何より、あたたかかったし(笑)。最高でした!


映画『青い鳥』より
―― 大事ですね(笑)。厚手のウールでしたよね。
森:はい、そのウールのコートの色がすごく良くて。フィルムに写ったときも映像に写ったときも、光の塩梅でちょっと違う色に見えたり。面白いなぁって思っていました。
―― 黒川さんが着ているジップトップもすごくかわいくてお似合いでしたし、欲しい!と思うくらいでした。
森:わかります。
黒川:僕はずっとあの服を着ていたんですけど、旅をしていると焚き火の匂いがついてしまったり、雪で濡れて乾いて毛だらけになったりしていって。そういうふうに旅の中で服が変化していくと、その服のことがどんどん好きになりました。それでなじんでいったのかな。衣装の佐々木(翔)さんのおかげです。
森:(拍手)。
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