『装苑』2026年3月号連載
「今の時代を作る人」完全版を特別公開!


ジャンルという枠組みを軽々と飛び越え、緻密なアンサンブルと爆発的なエネルギーで唯一無二のサウンドを鳴らす5人組バンド、BREIMEN。常に実験と変化を繰り返しながら、リスナーの心を揺さぶり続けてきた彼らが、フィーチャリングにTOMOOを迎えて、新たなシングル「ファンキースパイス feat. TOMOO」をリリースした。10年来の交流が生んだというこの楽曲は、まさに予測不能なジェットコースターのようでありながら、極上のポップスとして成立している。
なぜ彼らの音楽は、これほどまでに自由で刺激的なのか。楽曲制作の裏側にある“実験”の正体とは。そして、メンバーそれぞれが胸に抱く、音楽への衝動とは何か。バンドの現在地と未来について、高木祥太(Vo.、Ba.)、サトウカツシロ(Gt.)、いけだゆうた(Key.)、So Kanno(Dr.)、ジョージ林(Sax.)、の全員に、じっくりと話を訊いた。
本記事は『装苑』2026年3月号掲載「今の時代を作る人」に収録しきれなかった内容を加えた、ロングインタビューです。
photographs: Josui(B.P.B.) / live photographs: Goku Noguchi / styling: yuya nakajima / hair & makeup: Riku Murata
interview & text: SO-EN

ジェットコースターみたいな展開の多さもありながら面白いポップスが作れました!
――「ファンキースパイス feat.TOMOO」を聴いた時の第一印象として、何度もリピートしたくなるような癖になる曲だと感じました。今回の曲のこだわりやポイントを教えてください。
高木祥太(以下、高木): TOMOOちゃんとは10年ぐらい前から「一緒にやろう!」という話をずっとしていて、今回それが実現しました。「ハイスクール!奇面組」は、てんやわんやとしたハチャメチャな世界観なので、それに合いつつ、TOMOOちゃんとBREIMENが初めての“共演”ならではの何かを探しました。結果として、ジェットコースターみたいな展開の多さを持ちながらも面白いポップスが作れたと思います。奇面組自体がリメイク作品なので、原作の漫画や元のアニメの頃の時代感みたいなフレーバーは入れようかなと。だから、BREIMENがやる中でも結構オールドなファンクというか、ジェームズ・ブラウンみたいな音響感がありつつ、かと思えば最新のラテン系のフィールのラップがあったりとか。とにかく、どれだけいろんな情景に変わっても、歌で一本、筋を通す。アレンジが歌にとってのスパイスになっている、という感じですね。スパイシーなアレンジだけど、ポップスである、という落としどころになった気がします。


――TOMOOさんとは初めての共演とのことですが、一緒にセッションしてみて感じた魅力や、新たに発見したBREIMENの一面はありましたか?
高木:TOMOOちゃんとは知り合ってから長いですし、一緒に曲を作ったりもしているんですが、たぶん、同じスパイスを使っていても分量が違うみたいな感じなんです。今回の曲はこっちで作ってTOMOOちゃんに歌を入れてもらう形でしたが、彼女は本当に声だけで勝負できる人。ラップのところでも思ったんですが、彼女の声にはタグが付いているというか……。制作しながら食らってましたね。
サトウカツシロ(以下、サトウ):祥太って、自分のことを表現するだけじゃなくて、プロデュースがすごく得意というか、お題やケースがあった時にそれにマッチした力を発揮する人で。祥太がワンコーラスぐらいのデモを作って共有したら、すぐにTOMOOちゃんが歌を入れて返してきてくれて。もうその時点でバチっとハマってる感じはありましたね。
サトウ
カツシロ


高木:今回の曲は、コメディ要素の強いアニメの、しかもリメイク作品のオープニングで、フィーチャリングがTOMOOちゃん。という限定的なケースだったので、ある程度「狙って」やった部分は大きくあります。普段は、あまり狙って雰囲気を出すようなことはしないんですけど、逆にやってみたら、ちょっと新しい感じになったかな。アレンジメントにおいても、もう難しく考えずとも、割と何をやってもBREIMENになるな、と。ずっと実験はしてるんですけど、肩の力抜いてやれるタームに入ったなと思って。普段、俺が歌ってるところにまた違う声が入っても、ちゃんとBREIMENのサウンドではあるなっていう。それは新たな発見というよりは、「気づき」って感じですかね。
正解を探してるというより、
とりあえず思いついたことは全部やってみる
――BREIMENでは、普段はどのように曲作りをしているのですか?
高木:本当にいろんなパターンがありますね。僕がゼロイチ(最初のデモ)を作るパターンもあれば、スタジオでセッション的に音のギフト(アイデア)を出し合って広げることもあるし、歌詞だけから生まれてくるようなときもあります。曲によってルートが違うのも、僕らの特徴の一つかもしれません。今回の「ファンキースパイス」は僕がデモを作って、そこからみんなで再構築しました。自分が作ったデモは「一旦これは忘れて」ぐらいの勢いでみんなに投げるんで、今聴き返すと全然違いますね。デッサンみたいな感じです。それを、強固にするもよし、違うところを見せるもよし、みたいなのをみんなでわぁわぁ言いながらやってます。


――そういった自由にアイデアを出しながら再構築していく過程で、誰かの一言やワンプレイで、曲が思わぬ方向に育っていくこともありますか?
いけだゆうた(以下、いけだ):めっちゃありますね。結構、誰かが適当に言ったことをやる、みたいな。アイデア出しに関してあんまり責任を感じたりせずに、とりあえず全部やってみるというか。
So Kanno(以下、Kanno):「ファンキースパイス」も、途中のビートを何回か試したよね。最初トラップっぽいのをやったんだけど、次の日くらいに「やっぱ違う」ってなったり。消えたビートがいっぱいあります(笑)。
So Kanno


サトウ:試したやつ全部採用してたら、たぶんモンスターが生まれてる(笑)。でも、試してみないと分からないこともあるし。曲作りの時って、祥太がものすごい集中力を発揮するんで、俺はできるだけ集中力を出さないようにして、適当なことを思いつく脳みそでいる、みたいな。ギャグを言う感覚で、絶対それはないだろう、みたいなアイデアを出してみたり。
高木:覚えてるので言えば、前のアルバム『FICTION』の「チャプター」という曲で、途中で音がフリーズするみたいな展開があるんですけど、これはSo(Kanno)ちゃんがアルバム制作中にずっと言ってた「音が止まるんじゃなく、映像が止まっちゃったみたいに、音がずーっと伸び続けたら面白いよね」という風にしたりとか。「ドキュメンタリ」って曲のイントロのサックスのフレーズも、バンドのキーがズレてるんですけど、あれも林さんが吹いて「これいいじゃん」ってなったり。
サトウ:林さんのアイデアの出し方って、もう極限まで行っちゃった人の出し方みたいな感じだよね(笑)。


削ぎ落とすほどに、
それぞれのプレイが見えてくる
――結成から時間が経ち、皆さんも30代に差し掛かる中で、バンドとして変わったこと、変わらないことは何でしょう?
高木:最近は音数が減ってきています。結成当初に近いシンプルな編成に戻ってきていて、ある意味原点回帰かもしれません。『Play time isn’t over』という2枚目のアルバムの時はコロナ禍で脳味噌も内省的になって、音も凝縮されて“えぐみ”のあるものになりました。そこから『FICTION』というアルバムで一気に削ぎ落として、今はたぶん一番音数は少ないです。でも削ぎ落とせば落とすほど、それぞれのプレイやフレーズが見えてくるんです。
いけだ:「何か面白いことしたい」と思うことですかね。学生時代にメンバーたちと知り合いはじめて、もう気づけばアラサーです。おじさんになってきました。良くも悪くも丸くなってきた部分は確かにありますが、常に「何か面白いことをしたい」という本質的な部分はこのままでありたいです。
高木:コントラストがついた感じはしますね。僕は最近、自分のことがだいぶわかってくる年齢になってきて、それと戦っています。自分の傾向がわかるとそれに対して無意識に対策してしまうんです。でも正解に近づくことって、つまんなくなる部分もある。丸くなってくるとも言えるけど、なるべく「分からない自分」を最近は探しています。年月が経てば経つほど、どんなものも完成に向かっていくけど、俺はそれをなんとか完成させたくなくて。
だから昔よりわがままになったかもしれません。それは自己防衛的なものかもしれなくて……。元々世の中にいる感じがない人間だったのが、だんだん社会の中に含まれていく感覚があって。そこで「俺はここに別にいるわけではなかった」と気づいて、自分なりの距離を探している途中です。
サトウ:チャレンジングじゃないものの反対に、“落ち着いた完成”みたいなものがある気がして。祥太はそれに抗ってるんだなと思う。俺は良くなっていきたいから、その良くなった上でさらにチャレンジする、みたいなベクトルがあるけど。
高木:うちは本当に言論統制を全くしてないバンドなんで。マジでみんなバラバラなんですよね、本当に(笑)。


みんな違う方向を向いてエネルギーを出してるから、BREIMENは遠心力で進んでるコマみたい
――音楽表現についてはどうですか?ジャンルを超えて行き来したり、ミックスしたりする実験的な姿勢や変化は、BREIMENにとって自由なのか、挑戦なのか、あるいは本能的なものなのでしょうか?
高木:その3つ、全部だと思います。自由、挑戦、本能のバランスが大事で、単純に道から逸れたいだけでもない。実験してみたい気持ちもあるし、本能的にそこに向かっている部分もある。特に僕は理由を求めがちな人間で、感覚でやったことに対して、後付けでもいいから理由や名前が欲しい。
サトウ:本当に祥太は、理由好きなんですよ。理由中毒というか。
高木:感覚に対して理由をつけたい、名前が欲しいみたいな。自分の衝動に対して理由を毎回探している感じです。
――では、そんなバラバラな皆さんを繋ぐ、BREIMENの音楽の核にある価値観や、音楽へ向かう衝動とは何なのでしょうか。

高木:“即興性”だと思うんですよね。曲作りでは細部まで構築していくのですが、その瞬間瞬間の表現が強いバンド。だから極限まで作り込んだ曲でもライブでは全然違うアレンジになったりするし、パッと出た何かが、この曲をこの曲たらしめている部分になることが意外と多い。衝動ともいえるかもしれません。そう考えると、バンドの核になってるのは“遊び”なのかもしれないですね。
いけだ:僕も、“ノリと勢いと悪ノリ”だと思ってます。それによって表情を豊かにするということを考えてやっています。時々変な顔したら面白いだろうな、みたいな。音を聴きながら映像とか色とかが浮かんでくるので、1本の映像作品みたいにコントラストをつけたり、急に白黒になったり、みたいな感覚で表情を豊かにしていく感覚ですね。

ジョージ林(以下、林):僕個人としては“挑戦”ですね。そもそも、こういうバンドにサックスが一人いること自体、そんなに多いケースではないと思っていて。ギターやベースみたいに、サックスが当たり前に入る音楽シーンを当たり前にしたい、という思いでずっと活動しているので。それを楽しく、遊び心を持ちながら長く続けていきたいですね。
サトウ:宮本武蔵になりたいんです。剣豪として極めた結果、“無刀流”に辿り着いたように、ギターを極めたい。もうそれしか考えてない。それが自分にとっても他の人にとっても良くなることに最近気づきました。
Kanno:俺にとっては、このバンドはそれぞれが恐れずに別のことを考えて、それを持ち寄っても大丈夫な場所、っていうのが核にあるのかなと。自分の生活の中で好きな曲やジャンルのトレンドがあって、それが生活の中で変化していく。そのタイミングで制作が入ると、その時の自分の気分やトレンドでビートやアレンジを提示するんです。だからそれは日記的な側面もあって、この曲の制作が1週間前後だったら全然違うものになっていたかもしれない。その瞬間の自分を記録してるみたいな感じです。

高木:ジャズのレコードとかも、元々はライブの記録からはじまってますよね。だからある意味、即興的で瞬間的なものを結構大事にしてる気がします。「銀河」という曲のアウトロなども何回もテイクを撮ったけど、最後にこれで行こう!と決めたら、それで行く感じです。そこに正解はもはやなくて、それぞれのスタンスが違う。カツシロは突き詰めたいタイプで、僕はファーストテイクでも良かったりする。ただ、完成させたくないという気持ちもあります。完成しちゃったら終わる気がするんです。
みんなの話を聞いて思ったけど、このバンドってコマみたいな感じなんですよ。
みんなが違う方向を見てるけど、進む方向は一緒で、それぞれにエネルギーを出しているから遠心力で進んでいるような。だからそれぞれの考えや極めたいものがバランスを崩したら、もしかしたら止まっちゃうかもしれない。
サトウ:例えば僕が急にギターを極めるのをやめてガーデニングを極めるようになったら終わっちゃうかもね(笑)。
いけだ:いや、それ意外と止まらないかも!ライブガーデニングとか面白そう(笑)。

ドロドロの、ぐっちゃぐちゃになりたい
――では最後に、未来のBREIMENとして挑戦したいことを教えてください。
高木:まずは、やばいライブをやりたいです。今はオンライン上で手に入るものがありすぎる時代だからこそ、リアルな体験、記録に残るものよりも記憶に残る、現象としてのライブを作っていきたい。あとは「ハッチポッチステーション」みたいな番組が好きだったので、そういう音楽教育番組をやりたいし、映画音楽にも携わってみたいです。それと海外でのレコーディングもしたいです。イギリスとかヨーロッパでやってみたい。
サトウ:僕はドロドロぐちゃぐちゃになりたい!綺麗になりたくない(笑)。ずっとロックが好きなので。
林:僕はストリングスとかホーンセクションみたいな大きな編成でやってみたい。祥太の作る曲はハーモニーが美しくて、オーケストラを入れたら本当に素晴らしいサウンドになると思うんです。そういうのを突き詰めた結果、ドロドロぐちゃぐちゃになりたい(笑)。
高木:面白いのは、この二人(サトウと林)って結構言ってることとやってることが真逆なんですよね。カツシロは研ぎ澄まして完成に近づけるのが得意なのに「ぐちゃぐちゃになりたい」と言い、林さんは「綺麗なものを」と言いつつ、実はマジで訳がわからないことをやる。お互いが左右のウイングみたいな感じで、それが面白いんです。
Kanno:僕はドラムとしてみんなの支えになる。おじいちゃんになっても支えたい。
一同:笑

BREIMEN
高木祥太(Vo.、Ba.)サトウカツシロ(Gt.)、いけだゆうた(Key.)、So Kanno(Dr.)、ジョージ林(Sax.)によるオルタナティブファンクバンド。2018年7月より現在の5人組体制へ。ファンクやR&Bをルーツに、高い演奏技術とユニークな構成でジャンルを縦横無尽にクロスオーバーするミクスチャーファンクを展開。個々のメンバーもサポートミュージシャンとして活躍しており、そのグルーヴと遊び心ある音楽性で、大きな注目を集めている。2024年4月にはメジャー1stアルバム『AVEANTIN』をリリースし、多種多様なアプローチにより、その音楽を、より深くより広いものへとアップロードしつ続けている。
公式サイト:https://www.brei.men/
X:@BREIMEN_JP
Instgaram:@breimen_jp
YouTube:@BREIME_Channel

BREIMEN
テレビアニメ「ハイスクール!奇面組」オープニングテーマ
『ファンキースパイス feat. TOMOO』
BVCL-1518 ¥1,650
TVアニメ「ハイスクール!奇面組」のオープニングソングであり、BREIMENの遊び心あふれるファンクとTOMOOの柔らかくも芯のある歌声の邂逅によって生まれた最新系の青春ファンク。奇面組にも通じるまじめにふざける精神とどこか泣けるようなノスタルジックさを、キャッチーなメロディーとライブ感のあるグルーヴで届ける。何度もリピートしたくなる癖になる一曲。『ハイスクール!奇面組』のリバイバルにふさわしく世代を超えて愛される作品になっている。
Streaming/Download:https://va.lnk.to/yfKK13
BREIMEN「ファンキースパイス feat.TOMOO」Official Music Video (TVアニメ『ハイスクール!奇面組』オープニングテーマ)
BREIMEN「銀河」Official Music Video
BREIMEN「チャプター」Official Music Video
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Vol.21 HANA
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特別編 シンガーソングライター 澤田 空海理×映画監督 枝優花