森七菜インタビュー|新作『藁にもすがる獣たち』で悪女に挑んだ表現欲

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / styling : Masako Ogura
hair & makeup : Tomomi Shibusawa (beauty direction) / interview & text : Yushun Orita

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等身大のキャラクターから、フィクショナルな人物まで、森七菜が演じ上げてきた役どころは実に多彩だ。各作品への参加の決め手となるものは何なのかを聞いてみたところ、この言葉が返ってきた。台本には俳優がこれから体験することが書かれている。これを演じ手である自分自身の未来だと感じられるかどうかが、現在の森の作品選びの基準。セリフは脚本家の書いたもので、役の言動の多くは作り手の要請によって決まる。しかし、そこに自身の未来が描かれていると感じたとき、「すべてが自然なことのように感じられる」と──。

そんな彼女の出演最新作『藁にもすがる獣たち』は、1億円の争奪戦を描いたエンターテインメント。森が演じる“し〜な”は、自身の目的のためならば手段を選ばない悪女だ。この作品にも、“未来”を垣間見たらしい。

森が「ジェットコースター」にたとえたように、この群像劇は先が読めない。完成した映画を観た彼女は、結末に驚くこととなった。というのも、森は本作に取り組むにあたり、し〜なが登場するシーンの台本にしか目を通していなかったというのだ。

物語がどう始まり、どのようにして終わるのか。これを知らずに創作現場に参加することに、不安はなかったのだろうか。率直な疑問をぶつけてみると、「不安を感じながらも、このアプローチが必要だった」と撮影時を振り返る。

森といえば、昨年放送されたドラマ「ひらやすみ」(NHK)での自然体な演技が光っていた。東京の阿佐ヶ谷を舞台にした作品で彼女が演じたヒロインは、どこかですれ違ったことがあると錯覚してしまうほど、親近感を覚える存在だった。対するし〜なは、かなり現実離れしたキャラクター。演じるうえでどんな違いがあるのか。

人々が思い描くし〜な像の着ぐるみに入り、中にいるのが森七菜だとバレないようにする──この発言から、彼女がどれほどユニークな感性の持ち主なのかを思い知る。ひとりで役を立ち上げるのではなく、制作に携わる人々のイメージを役づくりの出発点にしようというのが森のスタンスだ。

これまでに森は、今作とは別ベクトルのチャレンジングな役どころに、いくつも挑んできた。新型コロナウイルスに最前線で立ち向かう人々の奮闘を描いた映画『フロントライン』や、居場所を求めて歌舞伎町をさまよう若者たちの姿を描いた映画『炎上』など、社会的なテーマを持った作品だ。いずれも出演者が背負うものが大きいように思えるが、森自身は不安を感じたり、苦しさを覚えることはないのだろうか。この問いを投げかけてみると、毅然とした答えが返ってきた。

これから先の人生で演じてみたい役柄はあるのだろうか。「つまらない答えなのですが」と前置きしたうえで語られた言葉からは、俳優・森七菜の核が見えてくる。

ジャケット ¥104,500、スカート ¥57,200 イレニサ(ザ・ウォール ショールーム)/その他 スタイリスト私物 


映画『藁にもすがる獣たち』

チャンネル登録者数2桁の弱小YouTuber大学生、佐藤寛治は、バイト先のネットカフェで客が置いていった怪しげなボストンバッグの中から、1億円の札束を発見! 思わずバッグを持ち去ってしまう。そこに不良警官やヤクザの親分、組の構成員、夜の気配を漂わせる悪女のし〜な、ワケあり主婦、それぞれの人生が交錯しはじめる。バッグの持ち主は? なぜ大金はネットカフェにあったのか? 国内外の映画祭で高い評価を獲得している城定秀夫が監督、脚本は数々の特撮・アニメ作品や実写作品のヒット作も手がける小林靖子が城定監督と共同執筆した。

城定秀夫監督・共同脚本、鈴鹿央士、成宮寛貴、森七菜ほか出演。9月25日より公開予定。東映配給。©︎2026「藁にもすがる獣たち」製作委員会

Nana Mori

2001年生まれ、大分県出身。’19年に公開された映画『天気の子』のヒロイン、天野陽菜役に抜擢され注目を浴びる。第49回日本アカデミー賞では、社会現象を巻き起こした映画『国宝』にて優秀助演女優賞を受賞。主な出演作に、映画『ラストレター』(’20年)、『ライアー×ライアー』(’21年)、『ファーストキス 1ST KISS』『フロントライン』『秒速5センチメートル』(すべて’25年)、主演作『炎上』(’26年)、ドラマ「この恋あたためますか」(’20年)、「舞妓さんちのまかないさん」(’23年)、「ひらやすみ」(’25年)など。

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