「舞妓さんちのまかないさん」衣装デザイナー伊藤佐智子さんに聞くキャラクターと衣装

注目俳優を含めた豪華キャストに加え、
映像界のトップクリエイターが集結

この1月からNetflixのドラマシリーズとして配信スタートした「舞妓さんちのまかないさん」は、第65回小学館漫画賞を受賞した同タイトルのベストセラーコミックを原作とした連続ドラマシリーズ。2021年にはアニメ化もされており、幅広い層の支持を得ている作品だ。また、そんな人気作品を元に、日本を代表する映画監督の是枝裕和さんが初めてNetflixとタッグを組み、総合演出を手掛けたことも話題になっている。是枝監督の元に集結したのは、今勢いのある若手俳優から実力派の魅力的なキャスト陣をはじめ、企画として『告白』や『君の名は。』など多くの作品をヒットに導いてきた川村元気さん、美術に『キル・ビル』や『三度目の殺人』の種田陽平さん、音楽では『海街diary』の菅野よう子さん、フードスタイリストには『かもめ食堂』『南極料理人』を担当した飯島奈美さんなど、映像界のトップクリエイターたちである。

今回はそんなクリエイターの中のひとり、『今夜、ロマンス劇場で』『繕い裁つ人』などでも衣装デザインを手掛けた伊藤佐智子さんに作品中の衣装についてお話をうかがうことができました。

――映画や舞台でのお仕事が多い伊藤さんが、今回、Netflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」の衣装デザインを受けるきっかけとなったお話などありましたら教えてください。

いちばんのきっかけは是枝監督からのお声がけだったからですね。実はお話をいただいた際は映画だと思っていたのです（笑）。ただ、Netflixの作品制作や取り組み方などについての話を周りからよく聞いたりしていて、少し興味を持っていました。そして、この作品の背景やドラマ化におけるコンセプトなどをうかがった上で、（是枝）監督が総合演出を手掛けたら、きっとおもしろい作品になるんじゃないかと考えたんですね。

――華やかな表舞台だけではない、舞妓さんの日常を少しのぞかせてもらったような気持ちになりましたが

そうなんです。この作品はその日常がよく描かれているところに監督も興味を持ったと仰っていて、私自身も取材に行った時、髪の毛は結ってあるままリラックスした部屋着を着ている彼女たちの生活がシュールで面白いと思ったんです。日常と非日常のふたつの世界をまたいでいるような不思議な感覚に陥りました。それは何となくですが、京都の街自体にも同じようなことが言えるかもしれませんね。

――舞妓さんになることを夢見て、京都・祇園にやってきたキヨとすみれを主人公に、屋形を舞台に日常を描いたストーリーとなっていますが、それぞれのキャラクターやその衣装について伊藤さんが相談されたことや提案したことなどありましたら教えてください。

それぞれの性格や趣味のようなものは監督から事前にうかがっていたので、基本的にはそういう部分を肉付けしてゆく作業をしていきながら、衣装まで落とし込みをしました。例えば、すみれは子供の頃からすごく蝶々が好きな女の子なので、私服でも蝶のプリントが施されたTシャツを着せたり、着物柄にも蝶をあしらったものを用意しています。また、蝶が花から花へ飛び移る軽やかさや華やかさを重ねていきながらイメージしていきました。

日常と非日常の世界の住人のような
キャラクターを作りたかった

――まかないさんのキヨは、原作のキャラクターの衣装イメージとは違うオリジナリティを感じましたが、それもあえての提案になりますか。

そうなんです。原作では今風のお洋服にエプロンをしているようなスタイルなんですが、私はこの舞妓の世界に「現実と非現実」とか「和と洋」、「過去と未来」の入り混じった独特な空気を感じたので、キヨに関してもそんな世界の中の住人にすることができたらと思い描いていました。祇園に来るまで、田舎でおばあちゃんと2人で暮らしていたキヨがどんな生活をして、どんなものを食べていたか、そんな記憶が大きく影響している人物像にしたかったのです。

――それで、割烹着のような日常着や半纏などを愛用しているキャラクターなのですね

シーンとしてはそれほどありませんが、キヨはおばあちゃんとの生活が好きでとても大切にしていたこと、その記憶が屋形の生活でも生かされています。みんなに作るまかないにもどこか懐かしさを感じたり、故郷の味などに細かな配慮もできる女の子。それは、おばあちゃんの着ていた上っ張りのような洋服を真似て着ていることに、彼女の人間味が滲み出てくるのではないかと思いました。いつも着ている割烹着のような服は、藍染めしたものになります。深みのある色がこの台所に映えると思ったんです。半纏は、キヨが田舎から持ってきた私服ですね。

――また、キヨが頭に巻いていた手ぬぐいも彼女の風貌に合っていてかわいいですね

昔、お料理をする時は、頭に三角巾をつけたり首に手ぬぐいを巻いたりしていましたよね。そこからヒントを得て、まかないさんとして気合いを入れた鉢巻姿やヘアバンドのようなあしらいで、キヨらしく遊びをプラスしてみています。今、手ぬぐいってかわいい柄がたくさんあるじゃないですか。せっかくなので季節ごとに変化をつけて四季を表し、各回で変えていきました。最終的に10種類使用しています。

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