衝動と共に駆け抜ける俳優、日高由起刀の挑戦。舞台『二階堂朝陽は助けに来る』インタビュー

2026.08.28

2024年、主演映画『HAPPYEND』で鮮烈なスクリーンデビューを果たし、’25年には2作連続でNHK連続テレビ小説に出演するなど、その独自の存在感で注目を集める若手俳優、日高由起刀さん。

この秋、細川徹さんが作・演出を手がける舞台『二階堂朝陽は助けに来る』に真田進一郎役として出演し、また新たなステージへと一歩を踏み出す。そんな日高さんに、作品への思いとこれまでのキャリア、そして表現者としての理想についてまっすぐに語っていただきました。

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / hair & make up : Boyeon Lee / styling : Hiromi Toki / interview & text : SO-EN

一度きりが積み重なって、
舞台の醍醐味になる

日高由起刀(以下、日高):一番大きいのは「楽しみ!」という気持ちです。『二階堂朝陽は助けに来る』は、前作『地図にない』とは規模も雰囲気もまったく異なる作品なので、不安要素がないわけではありません。ただ今は、以前とは違う作品になる予感へのワクワクのほうが大きいです。

日高:初めは映像と違ってやり直しがきかないことや、その時その時に見せられるものは一回きりだということにとらわれていました。でも回数を重ねるごとに公演がどんどん良くなっていることを実感して、自分にも「もっと回数を重ねてブラッシュアップしたい」、「1日1回や2回公演では少ない」という感覚が生まれてきました。

あと、笑いが取れる場面は嬉しくて、つい狙いにいってしまったこともあります(笑)。その時はなぜウケているのかを客観視できていなかったので、張り切って笑いをとりにいった日に客席から違う反応が返ってきたこともありました。お客さんの空気が日によって変わることや、それによっていただく反応が別のものになることもすごくおもしろいなと感じていました。

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自分自身とキャラクターの接点

日高:一人ひとりの個性がはっきりしていて、粒立っているなと感じます。けれどまだ稽古が始まっていないこともあり、今は観客の皆さんに近い視点で「千葉さんを主軸に、どんな風にキャラクターと物語が構成されていくのだろうな」と楽しみにしている状態です。

特に皆川さんは、正直、末恐ろしいなと思っています。だからこそご一緒できることがとても光栄です。作・演出の細川徹さんとはスチール撮影のときにお話しさせていただいたのですが、「絶対におもしろくなるから」と言ってくださって。そこは身を委ねてもいいのかなと思いつつ、細川さんとキャストの皆さんと一緒にイチから作品を作り上げられることが本当にうれしいです。

日高:今の僕は二階堂のようにはなれていないので、シンプルに尊敬します。自分にはまだそこまで人を思いやる余裕がないというか……。だから真田が感じる変化は、自分の実感と地続きになるのかもしれません。ここまで徹底して他者を思って接することができる人に会ったことがないので、実際に出会ったら心を打たれるだろうな、と。

そうして自分の気持ちがキャラクターと重なることで作品が良くなるのかなと思いますし、細川さんは、稽古中や稽古外での僕たちの姿も見ながら、本を作ってくださるはず。僕自身も、演じていないときの皆さんから汲み取れるものがあればいいなと思っています。

日高:最初にオファーをいただいたとき、歌とダンスができるかどうかも尋ねられました。僕はどちらも好きなのでそうお答えして。僕、実は歌がかなりうまいんです(笑)。

日高:サザンオールスターズさんやコブクロさんの曲です。体を動かすことが好きなので、ダンスも好きです。舞台上で大人の男8人が踊る姿は、想像するだけでもかなりおもしろいなと思っています。

衝動で進んできたこれまでと、
見据える未来像

日高:大好きだった陸上へのモチベーションが下がり、モデルの仕事への憧れが大きくなっていったことで、思い切って陸上を辞めました。

モデルを始めた当初は右も左もわからず、「痩せていないといけない」「肌を焼いてはいけない」という勝手な思い込みもありました。でも体作りをしていくうちに、陸上をがむしゃらに続けた経験や、こつこつ積み上げる姿勢が生きてくる感覚があるとわかって。それから俳優の仕事を始めると、応援してくれる人がいることへの感謝の気持ちや、モチベーションの置き方が陸上に通じていることがわかりました。

日高:昔から思いついたらすぐ動いてしまう性格なんです。例えば何か欲しいものがあったとして、それが1週間後に届くというのも待てないし、旅行が2日後に控えているとしたらその2日間の予定を全部なくしたくなってしまう(笑)。今は両親と仲がいいのですが、陸上を辞めてモデルになると言ったときはケンカになって、衝動的に家を飛び出したこともありました。

そういう衝動を行動力と呼んでいいのかわかりませんが、モデルをやりたいと思ったらすぐ動いていましたし、今もそういう部分がある気がします。

日高:一番は両親です。離れて暮らしていても姿や仕事を見てもらえるというのは、両親にとっても大きいことだと思いますし、その機会を増やして恩返ししたい気持ちがあります。それから、俳優の仕事は人間として成長できる機会が多いなとも感じていて。「これがあるから続けている」というよりは、応援してくださっている方々のために頑張りたい、という気持ちが今は一番です。

日高:実際に行ってみて不思議だったのは、「モデルとしてここに立ちたかった」という気持ちがあまり湧いてこなかったことです。むしろ「俳優・日高由起刀として招かれてファッションショーを観ている」という状況が、自分でも予想していなかった着地点だったことに感銘を受けました。モデル一本でやっていたら届かなかったかもしれない場所に来られたような感覚がありました。

日高:昔からアーティストへの憧れがあって、高校生の頃から写真や絵を趣味で続けています。そうした「表現者」の括りと俳優も同じなんだということに、実際やってみて気づきました。自分が尊敬してきたアーティストのように、作品を見ればすぐに誰が手がけたものかがわかる——そんな代名詞のような表現手法を俳優として持てたらおもしろいなと思う一方で、「日高由起刀って結局何者なの?」と思われるのも、それはそれでいいなと思っていて。どちらがいいか、今は悩み中です(笑)。

ビッグスターになりたいというよりも、胸を張って「こうだ」と言えるものを持っている存在でありたいです。

Yukito Hidaka

2003年⽣まれ、⼤阪府出⾝、神奈川県育ち。 ⾼校卒業後にモデルとして活動を始め、演技未経験ながらオーディションを経て、2024年公開の映画『HAPPYEND』(2024年)で主演に抜擢。スクリーンデビューにして主演を務め、⼀躍注⽬を集めた。その後は、ドラマ「東京サラダボウル」(NHK・’25年)、連続テレビ⼩説「あんぱん」(NHK・’25年)、連続テレビ⼩説「ばけばけ」(NHK・’25年)、「僕達はまだその星の校則を知らない」(KTV/CX・’25年)や、「ESCAPE それは誘拐のはずだった」(NTV・’25年)など話題作への出演が続き、俳優として着実にキャリアを重ねている。さらに、韓国語が堪能で、⽇本と韓国の両国で活動の幅を広げている。モデルとして培った存在感と、瑞々しい感性を⽣かした演技で、今後の⾶躍が期待される若⼿俳優のひとり。

日高さん着用:ニット ¥135,300、デニムパンツ ¥122,100 ブレス(ディプトリクス TEL 03-5464-8736)/その他 スタイリスト私物

モチロンプロデュース『二階堂朝陽は助けに来る』

作・演出:細川徹
出演:千葉雄大 戸塚純貴 牧島輝 坂元愛登 篠原悠伸 日高由起刀 大水洋介(ラバーガール)皆川猿時
「EXシアター六本木」2026年10月17日(土)~11月1日(日)
全席指定 ¥10,900、ヤング席 ¥5,500(税込)
チケット前売り発売中
お問い合わせ「モチロン」TEL 03-3327-4312(平日11:00〜19:00)

「COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール」2026年11月7日(土)~9日(月)
「富山県民会館」206月11月14日(土)、15日(日)

特設サイト:https://mochiron-ltd.com/stage/nikaidoasahi/

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