皆さん、“パリコレ”という言葉を聞いたことがあると思いますが、何となく知っていても、実際に何が行われていて、なぜ注目されているのかを知っている人は少ないのではないでしょうか?今回の企画では、“パリコレ”の基礎知識から近年の動向まで、26年間パリコレを見てきた編集者がわかりやすく解説します。この記事を読めば、コレクションに対する見方が変わるかも!
※この記事の執筆にあたり、オートクチュール・モード連盟のエグゼクティブ・プレジデントであるパスカル・モラン氏にインタビューを行いました。同連盟とモラン氏の多大なるご協力に感謝いたします。
ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)のショー会場となったパリ市庁舎。
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Q:パリのファッションウィークは年に何回あるの?
パリコレは、年に6回開催されています。その種類はこの先の項目で詳しく解説していきます。
Q:コレクションには種類があるの?
プレタポルテとオートクチュールのコレクションがあります。
\1. プレタポルテコレクションって?/
(ウィメンズとメンズで時期を分けて、春夏、秋冬のコレクションをそれぞれ開催)
日本では“パリコレ”という言葉に聞きなじみがありますが、正式名称は、パリ・ファッションウィーク(Paris Fashion Week®)。世界4大コレクションといえば、パリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンのファッションウィークで、その中で最も多くのブランドが参加するのがパリです。ちなみに、“ファッションウィーク” と呼ばれるのは、一週間前後の日程で行われているから。
パリのファッションウィークを運営するのは、オートクチュール・モード連盟(La Fédération de la Haute Couture et de la Mode、以下FHCM)。年間スケジュールは各都市の運営機関が話し合って調整していて、毎シーズン、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリの順でファッションウィークを開催しています。
パリ・ファッションウィーク 2025年の年間スケジュール
・1月21日〜1月26日:2025-’26年秋冬メンズコレクション
・3月3日〜3月11日:2025-’26年秋冬ウィメンズコレクション
・6月24日〜6月29日:2026年春夏メンズコレクション
・9月29日〜10月7日:2026年春夏ウィメンズコレクション
公式カレンダーもあるよ!
パリ・ファッションウィークの公式カレンダーに記載されるイベントには、ショーとプレゼンテーション※の二つがあります。メンズは6日間で約70のブランドが、ウィメンズは9日間で約110のブランドが参加。メインのショーは1時間から1時間半ごとに組まれ、間を埋めるようにプレゼンテーションがスケジューリングされています。ちなみにショーは予定時刻より、特別な場合を除き、30分程度遅れて始まるのが常。プレゼンテーションは2時間半以上の催しであることがFHCMによって定められていますが、例外も許容されています。
※プレゼンテーションとは、インスタレーションや複数回のミニショーなど、ブランドによって様々な形式で行われる発表イベント。
現在開催中の2025年春夏ウィメンズコレクションの公式カレンダー。期間は9月23日から10月1日まで。太字はショー、それ以外はプレゼンテーション。多い日は14ブランドが新作を発表する。
コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)2024年春夏コレクション。
\2. オートクチュールコレクションって?/
(春夏、秋冬のコレクションを開催)
オートクチュールウィーク(Haute Couture Week)を開催しているのはパリのみ。春夏・秋冬と、それぞれ4日間、約30メゾンが参加していますが、実はオートクチュールの正規「会員」とされるフランスのオートクチュールメゾンは、そのうちのわずか3分の1程度。残りは国外にアトリエを置く「通信会員(Corresponding Member)」と「招待会員(Guest Member)」でカレンダーが構成されています。
オートクチュールウィーク 2025年の年間スケジュール:
1月27日〜1月30日:2026年春夏コレクション
7月7日〜7月10日:2025-’26年秋冬コレクション
Q:オートクチュールって何?
“オートクチュール(Haute Couture)”はフランス語で、“高級な仕立て”を意味する言葉。法的に保護された呼称であり、オートクチュール組合(La Chambre Syndicale de la Haute Couture)の会員などで構成された専門委員会が承認したメゾンのみに与えられています。過去に会員に迎えられた日本人は、森 英恵(もり・はなえ)さんだけ。招待会員には、2016年7月から継続して参加している中里唯馬(なかざと・ゆいま)さんがいます。
オートクチュールメゾンになるためには、フランスにアトリエの拠点があり、創造性、アトリエ技術、オーダーメイド、コレクションの回数などについての条件を満たす必要がある。
ハナエモリ(HANAE MORI)1977年春夏 オートクチュールコレクション。文化学園ファッションリソースセンター所蔵
メゾンにおけるオートクチュール部門は、単に高級オーダーメイドの服を売るために存在するわけではありません。実はブランドの価値を見せるために存在しているのです。ショーで使われた服は、そのブランドのショーウィンドーを飾ったり、俳優に貸し出されたりと、様々なプロモーションに活用されています。
オートクチュールは、“デザイナーの実験室”とも言われていて、プレタポルテのようにマーケットを気にすることなく、デザイナーが作りたいものを作れる場。そして、メゾンが誇るアトリエ技術を披露する場でもあります。
このようなことから、オートクチュールはブランドの広告塔とも言われていて、プレタポルテ、香水、革小物など、ほかの製品の価値を高めることにも貢献しているわけです。
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