
「アズディン・アライアが収集したDiorコレクション」展より。クリスチャン・ディオールが幼少期を過ごしたグランヴィルの家の庭をイメージした展示。中央は1955年春夏オートクチュールのドレス。
偉大なクチュリエだった故アズディン・アライア(Azzedine Alaïa)は、ディオール(DIOR)の大コレクターでもありました。その秘蔵コレクションが、いまパリで一挙に公開されています。
この特別な企画展を開催するのは、ラ ギャラリー ディオール(La Galerie Dior)とアズディン・アライア財団(Fondation Azzedine Alaïa)。これら二つがタッグを組み、ダブル・エキシビションが実現したのです。


写真左:クリスチャン・ディオールによる1951年春夏オートクチュールのアンサンブル。右:ムッシュ ディオールが独立前に手がけた他社の作品も数点展示される。写真は、ディオールによるルシアン・ルロン1945年秋冬オートクチュールのドレス。
ADのあとに記事が続きます
ADのあとに記事が続きます
コレクターで知られたアライアが生涯をかけて集めたコレクションピースは、ほかのメゾンのものと合わせて、およそ2万点にのぼったといいます。中でもディオールは、なんと約600点に及びました。

ミステリアスな夜の庭園に迷い込んだかのような空間。クリスチャン・ディオールが愛した花をモチーフに、その後継者たちが手がけた作品も並ぶ。
その数からも、アライアにとってディオールは特別な存在であったことがうかがえます。実際、1956年に故郷のチュニスからパリへやって来たアライアは、ディオールで数日間、インターンとして働いた経験があり、、厳しい作業場は強烈な思い出として刻まれたのだそうです。


写真左:クリスチャン・ディオールによる1952年春夏オートクチュールのイブニングドレス。右:ジャンフランコ・フェレによるディオール1989年秋冬オートクチュールのドレス。レースにはマクラメ刺繍が施されている。
ギャラリーがあるモンテーニュ通り30番地は、1946年にクリスチャン・ディオール(Christian Dior)が自身のクチュールメゾンを開き、数々の伝説が生まれた場所。アライアが通ったのもこのアトリエであり、ムッシュ ディオールが繰り出すスタイルが世界を席巻していた頃でした。しかしその翌年に、ムッシュは急死の運命をたどることに。


写真左:イヴ・サンローランによるディオール1960年春夏オートクチュールのレセプションドレス。右:クリスチャン・ディオールによるオートクチュールのアフタヌーンドレス(1950年頃)。
ラ ギャラリー ディオールでは「アズディン・アライアが収集したDiorコレクション(Azzedine Alaïa’s Dior Collection)」と題した展示で、100点以上の作品を初公開。常設されるアーカイブ資料とともに、クリスチャン・ディオールをはじめ、その後継者であるイヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノが手がけた作品を紹介しています。

迫力の大ホール“ディオールの舞踏会”より。アライアが所有したディオールのドレスは前列に展示。
アズディン・アライア財団での展覧会「アズディン・アライアとクリスチャン・ディオール、オートクチュールの二人の巨匠(Azzedine Alaïa and Christian Dior, two masters of haute couture)」では、約30点のクリスチャン・ディオールの作品と対話するようにアライアの作品を陳列。ファッション史に刻まれた二人のクチュリエの世界観が交差し、その関係性が浮かび上がります。

もう一つの展覧会「アズディン・アライアとクリスチャン・ディオール、オートクチュールの二人の巨匠」より。
二つの展覧会から感じられるのは、アライアがディオールに寄せた敬意。そして、その卓越した審美眼に感嘆せずにはいられません。
【ラ ギャラリー ディオールの展示】

手描きのデザイン画、コレクションノート、フィッティングをするムッシュ ディオールの写真。

常設されるムッシュの書斎の再現。


“ディオールのパレット”の部屋では、ムッシュが1947年春夏から1957年秋冬にかけて制作した22のコレクションのチャートを展示。生地スワッチから彼が好んだカラーパレットを探る。


イヴ・サンローランによるディオールのオートクチュール。写真左:1959年春夏の昼のアンサンブル『マイヨ』。右:1959年秋冬の午後のアンサンブル『ロンドン』。

1954年秋冬オートクチュールで発表されたHラインのカクテルドレス。構造がわかるパターンの表示が興味深い。


“夢のアトリエ”の部屋では、過去のコレクションのために作られたトワルやディオールのお針子たちのデモンストレーションを見学できる。

クリスチャン・ディオールによる1952年春夏オートクチュールのドレス。アーティストのエヴァ・ジョスパンが制作した手刺繍のテキスタイル作品『ミス ディオール』とともに展示。ジョスパンは、近年のマリア・グラツィア・キウリによるディオールのショーでも会場の装飾を手がけた。
次のページでは【アズディン・アライア財団の展示】を紹介。