
マリア・グラツィア・キウリによるディオール 2017-’18年秋冬オートクチュールの作品。コートには、タロットカードを題材にした精緻な刺繍が施されている。壁の絵は、ジュリオ・ロマーノの『シファクスの宴』(16世紀半ば頃)。権力、知恵、策略などを象徴する人物がタロットのモチーフと重なる。
世界最大級のアートコレクションを誇るルーヴル美術館。その歴史上初となるモード展が注目を集めています。

会場の入り口。展示されるのは、クリスチャン・ディオール 1949年春夏オートクチュールのドレス。
ビザンティン帝国時代から始まる装飾芸術の旅
「ルーヴル・クチュール(LOUVRE COUTURE. Art and fashion: statement pieces)」と題されたこの展覧会は、装飾芸術部門のフロアで開催される半年間限りの特別展。常設されるビザンティン帝国時代から第二帝政期にかけてのアートピースと対話するように、約100点の著名デザイナーの作品が配置されています。


ドルチェ&ガッバーナ 2013-’14年秋冬のドレス。ビザンティン美術のモザイクに着想を得たもので、およそ1500年前の東ローマ帝国テオドラ皇后がモチーフになった。手前に展示されるのは、ヴェネチアで発掘された12世紀のモザイク。
その面積は、なんと9,000平方メートル。これほど空間を贅沢に使ったモードの展覧会も史上初といえるでしょう。展示される服やアクセサリーは、今回のために国内外のメゾンから貸与されたもので、クリスチャン・ディオールの1949年春夏のドレスから始まり、トリを飾るのはヨウジヤマモトの現代のドレスです。

鳩がモチーフになったJW アンダーソンのクラッチバッグ(2022年)と、中世の教会で使われていた聖具の容器(上)。
ディオール、シャネル、バレンシアガなど、ファッション界の重鎮たちはもちろん、JW アンダーソン、イリス ヴァン ヘルペン、ジャックムスなど、気鋭クリエイターの作品までを網羅。

中世・ルネサンスのタペストリーが展示される部屋。中央は、ジョン・ガリアーノによるディオール 2006-’07年秋冬オートクチュールのドレスで、中世の城を舞台にしたファンタジー映画『悪魔が夜来る』(1942年)が着想源になった。
この展覧会の副題になった“ステイトメント・ピース(主張する作品)”たちは、時代を超えてアートとの親和性を語り、さらにはファッションという装飾芸術を再発見させているのです。
ルーヴル美術館屈指のコレクションとともに、その一端をご紹介します。

ルブタン 2007-’08秋冬のブーツ。無数のスタッズを打ち込んだメタリックなロングブーツは彫像のようでもある。聖母マリアと聖ヨハネの像(15世紀中頃)と並んで陳列。

バンビの柄のアンサンブルと鹿の角のヘッドピースは、ジャン シャルル ドゥ カステルバジャック 2010-’11秋冬の作品。狩のシーンをモチーフにしたタペストリーを背景に。

高橋盾が手がけるアンダーカバー 2017-’18年秋冬のドレス。横の壁に展示されるのは、マクシミリアン皇帝の狩猟をテーマにした16世紀のタペストリー。ドレスのシルエットはその皇帝の衣服を思わせ、蜂の巣のようなスカートはルネサンス期に流行したヒダ状の付け襟“ラフ(ruff)”を彷彿とさせる。

クリスチャン ルブタンのスリッポン(1995年)。16世紀のヴェネチアの絵皿と並んで陳列。

アレキサンダー・マックイーン 2010年春夏のシューズ「アルマジロ」。動物のような曲線がエキセントリック。

デムナによるバレンシアガ 2023-’24年秋冬オートクチュールのドレス(右)と16世紀中頃の甲冑の対話。「服をつくることが、私の鎧なんです」とデムナはコメントしていたそう。

甲冑の展示室にて。ニコラ・ジェスキエールによるルイ・ヴィトン 2020-’21年秋冬のバッグ。