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M A S U デザイナー 後藤愼平に聞く、Instagram(インスタグラム)の活用術!
文化服装学院の学生に向けた、Metaの次世代クリエイター支援プログラム vol.4

2024.11.08

FacebookやInstagram、Threadsなどのプラットフォームを運営するMetaが文化服装学院とタッグを組み、次世代のクリエイター育成を目的にした特別ゼミを全6回で開講。
4回目のテーマは「M A S U(エムエーエスユー) デザイナー 後藤愼平が語るSNSとの向き合い方」。
昨年パリコレ進出を果たすなど、いま最も勢いのあるデザイナーの一人、後藤愼平さんをゲスト講師にお迎えしました。2つのInstagramアカウントを効果的に活用し情報発信を行う後藤さんから “SNSとの向き合い方” を深堀りします。M A S Uが憧れだという学生とのQ&Aコーナーも!

photographs : Norifumi Fukuda (B.P.B.)

\1から学ぶ/
▶︎第1回「ファッション業界とInstagramの関係」はこちら◀︎

【第4回】
M A S U デザイナー 後藤愼平が語る

SNSとの向き合い方

M A S U:@masu_officialaccount
後藤愼平さん:@shinpei.goto

後藤さんのプロフィールはこちらをチェック

全6回の講座を進行するのは、Metaのグローバル パートナーシップ チームの皆さんと、文化服装学院の卒業生でもある、フリーランスエディターの岡島みのりさん。

後藤さんはブランド公式アカウントと個人アカウント、2つの軸でM A S Uのクリエイティブな世界観を発信し、ファンとの繋がりを深めています。ブランドの魅力を最大限に引き出しコアなファンを惹きつける、その秘訣とは?

後藤さんとM A S UがInstagramで魅せること

大平かりん(以下、大平):後藤さん、Instagram歴は長いですか?

後藤愼平(以下、後藤):めっちゃ長いです。文化服装学院に在学していた頃から利用しているので、12年間ほどやっています。初めはどのように使うかもわかっていなかったです。加工アプリだと思ってダウンロードしました(笑)。

岡島みのり(以下、岡島):長く利用されていて、投稿の内容も徐々に変化してきたと思いますが、個人のアカウントではセルフスタイリングの写真が多いですね。これらは意図的に投稿しているのでしょうか?

後藤:すごく計算をしているわけではないですが、今の自分のムードのようなものを載せているのと、コレクションの盛り上がりをファンの方と一緒に作っていく感覚で色々投稿しています。この2つの投稿で被っているキャップ (写真上)はパリのお土産屋さんで買ったキャップなんですが、今、僕が被ってるキャップ(写真下)はそれをオマージュして作りました。
投稿を追ってくれている方が見たら「これがこうなったんだ」という過程がわかるので、よりコアなファンが生まれやすいのかなと。

岡島:コレクションや商品化する前の段階を追えるというのはファンにとっては嬉しいことですね。デザイナーの頭の中を覗ける感覚。制作過程をオープンにしているのも、同じ理由ですか?

後藤:そうですね。写真やルックだけでは伝わらない部分もあると思いますし、制作の過程自体が本当に楽しいんです。リサーチするのも、トワルを組むのも、生地を選ぶのも作るのも、すべてのプロセスが楽しい。そしてもちろん、ショーも楽しいです。これらの過程を全く公開せずに、いきなりルックだけを発表するよりも、制作の途中で少しずつそのテンション感を発信しながら、期待値を高めていく。いわば、ティザー映像のようなものですね。最終的に、期待を良い意味で裏切る結果になっても面白いと思っています。

大平:ファンからはどのようなリアクションが届きますか?

後藤:時々、ものすごく長文のメッセージを送ってくれる方もいますよ!本当によくここまで理解してくれているなって思いますね。ずっと追い続けてくれているからこそ、分かるんだろうなと思います。

大平:デザイナーご本人がこのように発信してくれるのは、より会話や想像が広がりますよね。

インスピレーション源は?

後藤:こちらの方(写真上)は総武線で見かけたんです。計算されたファッションというよりも、本人の“好き”が溢れすぎていて、結果的にこのスタイリングに辿り着いたのであろう、ハプニング的な要素がすごく刺さって。緑のキャップと水色のジャケットの組み合わせがかっこいいなと思ったのと、クマちゃんのような謎のブローチがついているんですが、それがその時の僕の気分にピッタリとハマりました。

後藤:このパンプスは「シンデレラパンプス」と名付けたのですが、値段が高かったこともあり、バイヤーさんたちの反応はあまり良くなかったんです(笑)。M A S Uは基本的に卸販売がメインなので、お客様と僕が直接話す機会はないのですが、このような写真(写真上)を載せることで、セレクトショップの店員さんがお客様に商品を説明する際の参考になるかなと思っています。シンデレラの靴からインスピレーションを得ていますが、よりお客様に商品をプッシュするためのアプローチでもあります。
ですが、この靴が売れてほしいというよりも、こういう靴を履いてる男の子が増えたら可愛いと思って作ってるので、投稿を通じてより広がるといいなと思い投稿しました。

大平:面白い!Instagram上でリサーチすることはありますか?

後藤:あまりしないですね。保存はたまにします。

岡島:ブランドのオフィシャルアカウントも見ていきましょう。

後藤:ブランドらしさが伝わる、ルックやビジュアルを載せています。

大平:運用ルールはありますか?

後藤:投稿するタイミングは気をつけています。 たとえば、デリバリーが始まる日程に合わせて、遅すぎず早すぎないタイミングで告知するよう心がけています。1週間前だと少し早すぎるので、3日前や2日前のギリギリで投稿するようにしています。また、ルック画像はランウェイショーで発表後、できるだけ早く公開するように意識していますね。

飾らないアイテムの投稿にはどのような背景が?

岡島:M A S Uの投稿の中でも、この飾らないアイテムの写真が皆さん好きだと思いますが、これは意図的に撮影しているわけではないですよね。

後藤:これは(写真上)中国の工場のおばちゃんが撮った写真で。「今、こんな感じだよ」と途中経過を送ってくれた時に「可愛い!」と思い、保存していた写真です。

後藤:これは(写真上)僕が履いていたデニムを脱ぎ捨てただけという写真なんですが、ベルトの位置や何かを調整したわけではなく、可愛いと思った瞬間に撮影して保存していたものを、このパンツシリーズを発売するタイミングで載せました。ほかの写真とのバランスをみて投稿しています。

大平:オフィシャルのアカウントでこのような投稿があると親近感が湧きますよね。

M A S Uボーイズ&ガールズたちが流行を作る!

岡島:M A S Uボーイズ&ガールズ(M A S Uが大好きでブランドのアイテムを着こなす方々の愛称)もまとめてみました。

大平:え?M A S Uボーイズ&ガールズは(岡島)みのりちゃんが作った造語ですか?

後藤:これまでもM A S U(マス)ボーイズと省略して呼んでいます。

岡島:ガールズもたくさん見ますよ。展示会やポップアップにも女性が多くいらっしゃいますよね。皆さんがM A S Uを着こなしたスタイリングをInstagramにタグ付けをして、投稿しているイメージです。こういった現象はいつ頃から?

後藤:M A S Uを国内で1番多く取り扱っていただいているPALETTE art alive(パレット アート アライヴ)というセレクトショップが大阪にあるんですが、3、4年前にこのお店の10周年イベントに行った時に、M A S Uのアイテムを着てくれていたお客様がたくさんいて、声もかけていただいて。
このような体験はこの時が初めてだったので、名前を付けたほうが良いなと思い「マスボーイズ」という名前を作りました。と同時に、ブランドの軸になるようなジーンズのラインを確立させたいと思っていたので、それ以来、ジーンズラインも「マスボーイズライン」と呼んでいます。

マスボーイズというのは男の子だけを指しているわけではなく、“天使”のような意味にしているんです。年齢も国籍も性別も関係ないのが、マスボーイズ。とはいっても、女性が「私、マスボーイズです!」とは言えないですよね(笑)。

岡島:マスボーイズやファンコミュニティが盛り上がる場所づくりもされていますよね。

後藤:2023年の成人の日に、横浜で「Masuboysland」というイベントを開催しました。過去10シーズン分のアーカイブを販売して、その中で最新コレクションも発表するというイベントを仕掛けました。

大平:面白い!

後藤:初めてパリに行くシーズンだったので、どれだけM A S Uが愛されているのかを記録したくて。そのためには、リアルな熱気がないと伝わらないと思ったので、関係者や業界の方は一切声を掛けず、ブランドのファンの方のみ。

岡島:私も行きましたが、成人式に行かずにこのイベントに来たという方もいて、会場は大勢の方でいっぱいでしたね。

後藤:トワルをサイレントオークション形式で販売するイベントも年に1回、開催しています。多くのブランドでは、シーズンが終わるとトワルを処分してしまいますが、僕は制作過程にも価値があると思っています。なので、その価値をこちら側で一方的に決めるのではなく、お客様に金額をつけていただく形にしました。制作の過程を見せるという点では、先ほどお話ししたInstagramのやり方に近いですよね。

大平:サステイナブルでもありますね。コレクションを発表するだけがゴールではなくて、その過程で生まれるものも価値があって、さらに後藤さんはそこに人を巻き込んで、コミュニケーションを深く取っていることが素敵ですね。

後藤:他のイベントもまたやりたいと思っています!

今、若手ブランドが生き残っていくために必要なこと

岡島:デザイナーを目指している学生の皆さんも多いと思いますが、いざブランドをスタートするなど、新しく始めたことを継続していくにはどのようなことが必要だと思いますか?SNSでの発信も切り離せない存在かと思います。

後藤:気合い(笑)。自分の中で得意なことや誇れることを何個か持ってる人のほうが強いと思っています。たとえば、服のデザインが90点、人付き合いが80点、SNSが80点といったように、全てが100点でなくても、いくつ武器を持っているかが大切だと思います。普段意識していなくても、日常的にやっていることが実は自分の武器になることもあります。デザイン科などに進むと「デザインができなければいけない」とか技術的なことばかりを考えてしまいがちですが、視野を広げればもっといろいろな可能性が見えてくるはずです。そのことに気づいて、強みを生かせる人が、最終的にこの業界に残っていくと思います。

大平:ちなみに、後藤さんがアシスタントや人を雇う時は、その方のSNSはチェックしますか?

後藤:絶対見ますね。

大平:どのようなところを見るのでしょうか?

後藤:まず鍵垢だったら面接もしない(笑)。Instagramはわかりやすいポートフォリオだと思います。他の方との繋がりや興味関心があることもInstagram上で判断できますよね。

【Q&Aコーナー!】
学生から後藤さんに聞きたいこととは?

Q:M A S Uの個性的なデザインはどのように工場に発注していますか?工場選びのコツも教えてください。

後藤:M A S Uは少し特殊で、中国の縫製工場が協力してくれていて、現在は7割ほどその工場で縫っています。そのため、工場選びという面ではとても恵まれています。本来であれば、服のデザインごとに得意とする工場が異なるため、工場に関する知識や経験を持った人がブランドにいると安心ですし、困った時に相談できる相手がいるといいかも。DMなどでメッセージを送ってみるのも良いと思いますよ。丁寧に質問したら、きっと皆さん答えてくれると思います。

Q:将来のビジョンなど、学生の頃から決まっていましたか?何年先のことまで考えていますか?

後藤:中学3年生の頃に漠然とデザイナーになろうと思っていて、高校2年生の時には、25歳でブランドを持つと決めていました。そして、25歳になる年に、前の会社を強引にでも辞めようと思い、そこからはなんとかしようと動き始めましたが、たまたま今の会社に声をかけてもらって、その夢を実現できました。同時に、30歳になっても成功できていなかったらこの仕事をやめる覚悟もしていました。その決意を持ち、死ぬ気でやってきたからこそ今も継続できているのだと思います。
僕の場合、「何歳までに〇〇をしよう」といった目標を決めておかないと、ずるずるとやってしまうので、自分を追い込むためにも5年ごとのスパンで目標を決めています。

Q:未来のことを決めるのが得意ではないです…。会社に一度入り、長い期間働くと責任も増えていきそうで、辞めることが心苦しくなってしまいそうです。

後藤:いい人ですね(笑)。具体的に考える必要はないと思いますよ。具体的にしすぎてしまうと、良くない苦しみになってしまうので「なんとなくイケているか、そうでないか」くらいの感覚で捉えるのも良いと思います。誰にでも言えることですが、仮に明日会社を辞めたとしても世界はあまり変わらないですよ。そう思わないと、やっていけない。自分が世界で必要不可欠なピースだと思い込んでしまうと、新しいチャレンジがしにくくなってしまう。会社では人が入れ替わっていくのは当たり前なので、あくまで柔軟に楽しくなるように頑張りましょう。

Q:文化服装学院に入って良かったことを教えてください。

後藤:コミュニティや友達に出会えたことですね。これまでM A S Uは14シーズンやっているんですが、初期に声をかけて展示会に来てもらった学生時代の友達は、今でも買い物をしてくれています。

\M A S Uboysの学生をSNAP!/

コーディネートのポイントは?
後藤さんへのリスペクトを込めて、今シーズンのM A S Uを着ています!

次回は「ファッションメディアの現在地 SNSの活用術とマーケティングトレンド」について学びます。お楽しみに!

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