FacebookやInstagram、Threadsなどのプラットフォームを運営するMetaが文化服装学院とタッグを組み、次世代のクリエイター育成を目的にした特別ゼミを全6回で開講。
3回目のテーマは「今Instagramで求められる、新しいファッションコンテンツ」。ゲスト講師にはフリースタイルフットボーラーのKazane Shimazakiさん、ダンサーのKazuho Monsterさん、渋谷PARCO プロモーションディレクター 村山哲郎さんの3名をお迎えし、Instagramでの成功体験やリール制作へのこだわりポイントをたっぷりとお聞きしました!
photographs : Norifumi Fukuda (B.P.B.)
\1から学ぶ/
▶︎第1回「ファッション業界とInstagramの関係」はこちら◀︎
【第3回】
今Instagramで求められる、
新しいファッションコンテンツ
全6回の講座を進行するのは、Metaのグローバル パートナーシップ チームの皆さんと、文化服装学院の卒業生でもある、フリーランスエディターの岡島みのりさん。
(左)Kazuho Monsterさん(中央)Kazane Shimazakiさん(右)村山哲郎さん
今回のクリエイターズトークでは、日頃からサッカーボールやダンスで圧倒的なパフォーマンスを発信するKazaneさん、Kazuhoさんのお二人と、様々なファッションコンテンツを生み出す渋谷PARCO 村山さんから「今Instagramで求められる新しいファッションコンテンツ」をテーマに、クリエイターとしてのこだわりや戦略、Instagramから生まれたサクセスストーリーについてお話ししていただきました!
進行を務めるのはMeta グローバル パートナーシップの小串良輔さん。
Kazane Shimazaki
Instagram:@kazaneflowerboy
Kazuho Monster
Instagram:@kazuhomonster
村山哲郎
Instagram:@muratetsu
Instagramとの関わり方、パフォーマーとして意識していることは?
小串良輔(以下、小串):KazuhoさんとKazaneさんは長い間、Instagramを活用されていると思いますが、パフォーマーとしての発信で特にこだわっているポイントを教えていただけますか?
Kazane Shimazaki(以下、Kazane):サッカーボールを使って技をする「フリースタイルフットボール」というパフォーマンスをずっとやっているのですが、ここ3〜4年はそこにファッションを掛け合わせて、自己表現するようになりました。最も心がけていることは、サッカーボールをないがしろにせず、かつファッションに溶け込むように見せることです。
小串:Instagramでの発信を通して「こんな大きな仕事が決まった!Instagramをやっていてよかった!」と思った瞬間はありましたか?
Kazane:たくさんあります。好きなアーティストの楽曲を投稿に使用したらご本人からフォローとリアクションが来てアメリカで会えることになったり、大好きなヒステリックグラマーとのお仕事で、ディレクションに入って撮影させていただいたり……。ファッションや様々な仕事を経験し、Instagramを通して発信していたからこそ、ボールパフォーマーだけではできていなかったことも実現できたと思います。
小串:いきなり想像の斜め上のオファーだったのでびっくりしました(笑)。さすがです!Kazuhoさんはいかがでしょうか?
Kazuho Monster(以下、Kazuho):世界中を見渡した時に、ダンスに興味がある人ばかりではなく、むしろほとんどの人はあまり興味がないと思うんですよね。なので、誰が見ても“すごい”と思う動画を作ることを意識して、技などを取り入れることにこだわっています。スタイリングもこの考えと似ていて、誰にでも印象が残るように、必ずセットアップの服を着て帽子をかぶることを徹底し、動画撮影しています。
自分にとってのサクセスストーリーは、ファッションの仕事をするのであればトップを狙いたいと思っていたので、エルメス(Hermès)さんとお仕事をさせていただけたことが1つと、マイケル・ジャクソンの公式アカウントに僕の動画を載せていただけたこと。唯一、この動画だけマイケル・ジャクソンのTシャツを着たのでこだわりのセットアップは着ていなくて。自分の美学を崩してでも、マイケルへの愛を表現した投稿です。それが伝わったのが嬉しかったです。
小串:すごい話ですね!狙い通り。
リール制作におけるこだわりは?
小串:お二人のリール制作でのこだわりを教えてください。
Kazane:この動画(上)は危ないですね(笑)。
定点っぽいアングルで何パターンもスタイリングが切り替わる動画の編集方法は今、流行っていますが、3〜4年前は全く流行っていなかったんです。そんな中で、どのようにしたら服を切り替えてみせられるのかを模索し、ビデオグラファーのOTOMEくんに「車を使ってトランジション作れない?」とお願いをしたら、見事にやってくれて。めちゃくちゃ良い映像になりました。いまだにお気に入りの動画です。
小串:全て任せる人が多い中、アイディアを考えてビデオグラファーに依頼することがすごいと思う。
Kazane:動画編集も元々自分でやっていたんです。小学6年生の頃からムービーメーカーを使って編集していました。この動画(上)は自分の部屋の中で撮影をしているんですが、これを編み出した時、天才だと思いましたね(笑)。「ボールを一度上にあげて、止めたらいいんだ!その間に着替えてボールが落ちる」ということを考えて公開しましたが、あまり再生が伸びず。ですが、再生される・されないということよりも、自分が満足できる面白い映像とかパフォーマンスができた時の方がしっくりくるので、これは体現できてるかなと。
小串:ありがとうございます。続いて、Kazuhoさんお願いします。
Kazuho:この動画(上)は、すごく再生された動画で、全ての再生数を合わせると8000万回ほど。伸びる動画内容だと感じていましたが、しっかりと戦略を練って撮影しています。お店の前で店舗のブランドロゴが入ってる紙袋を持ち、パントマイムをした動画が仮に何千万回も再生されたら、そのほかの実店舗を持っているファッションブランドや企業からオファーをいただけるのではないかと思い、このスタイルの投稿を出しました。そしてこの動画をきっかけに、ヴァレンティノ(Valentino)さんやマークジェイコブス(MARC JACOBS)さんなどの、ファッションブランドからお声がけをいただいて、お仕事に繋がりました。
そしてこれは初めて話すことですが、ソロで撮るよりも、後ろや周りにたくさんの人が映っていたほうが再生されやすいです。動画(上)の左に座っている方、実はこのお店の店長さんなんですが、お客さん役をやっていただいて。映り込んでいる方がどんなリアクションをするのか、という視点も大切で、再生数にも繋がっていきます。ユーザーがシェアしたくなるような仕掛けを作り、その要素を動画内に散りばめることが重要。
Kazuho:これはお気に入りの動画(上)で、マークジェイコブスの服を上下で着用させていただいています。 これも800万回ぐらい再生されて、マーク・ジェイコブスご本人がストーリーズに載せてくれました。
この動画にも僕のこだわりがあって、 先ほどのお店の前で撮影している動画やコラボ動画以外は自分しか映さないというのを決めているんです。 人が映っていない動画の中で、1番上手に撮れた動画なので、ロケーションも相まって1番のお気に入りです。
小串:ということは、数字マジックのようなコツを捨ててでも、こだわりがある動画も投稿しているんですね。
Kazuho:逆にこれはもう自分のスキル勝負というか、そういった再生されるテクニックは一切入れずに、自分のパフォーマンスで勝負しています。とはいっても、数字は重視しているので先ほどもお伝えした通り、誰が見てもすごいと思うムーンウォークなどを中心にやっています。
クリエイターとの動画制作が強み!
小串:ここからは渋谷PARCOのInstagram戦略をお聞きしたいと思います。改めて渋谷PARCOについてご紹介いただけますか?
村山哲郎(以下、村山):渋谷PARCOは、ファッションビルとしては特殊な構成になっていて、全体で190店舗ほどあり、上層階にはパルコ劇場があります。2019年の建て替え時には、この劇場をどのように作るかという構想から設計がスタートしたと聞いています。ファッション、アート&カルチャー、エンターテインメント、フード、テクノロジーという5つの要素を融合させ、リニューアルが行われました。ギャラリーは地下1階から8階まで点在し、企画展も頻繁に変わります。それぞれの企画展に異なる層のお客さまが訪れるため、チャネルも多岐にわたっています。
僕は、このような様々なことが起こる渋谷PARCOの情報を集めて、多くの方にお知らせする仕事を担当しています。
大平かりん(以下、大平):2024年の渋谷PARCOは、どのような特徴を持っていますか?
村山:コロナが落ち着き、肌感ですが館内にいるお客さまの半分以上が海外の方。売り上げも約4割ぐらいが海外のお客さまなので、パルコの中はほぼ海外と言っていいかもしれない(笑)。いろいろな言語が飛び交っているような感じですね。
大平:そんな中で、どのようにInstagramを運用されていますか?特に力を入れているのは、クリエイターさんとの取り組みですよね。
村山:この動画(上)では、ラランドのサーヤさんに「アンダーカバーノイズラボ(UNDERCOVER NOISE LAB) 」の店舗に行っていただきました。サーヤさんからは「やっと渋谷PARCOからファッションの企画の連絡が来た」と喜んでいただいて(笑)。動画構成もループしやすい作りになっていることに加え、ご本人が拡散してくださったこともあり、再生数にも繋がりました。
村山:水原希子さんには何度かご登場いただいていますが、この動画(上)はご本人がディレクターを務めているブランド「KIIKS」のポップアップの開催に合わせて公開しました。 ポップアップだけの紹介ではなく、渋谷PARCO内の気に入ったものをチョイスしていただくような映像と、ご本人が選んだ商品をクローズアップできるような内容。「おすすめ商品」といった直球すぎる内容ではなく、雰囲気のある映像に仕上がっています。
ですが、気になった先に詳しい情報がないと「いい雰囲気の動画だったね」で終わってしまうので、商品の紹介や希子さんの言葉を読めるようなランディングページを用意して、深く情報を知りたい方に飛んできていただくということを初めてトライしました。
大平:Kazaneさん、Kazuhoさんとのコラボ動画もありますよね。
村山:パシフィコ横浜で開催されたヴィンテージイベント「 VCM VINTAGE MARKET」には2日間で約10万人の来場があるほど、規模がどんどん大きくなっているのですが、渋谷PARCOの中にも、VCMの拠点があるということをどうしたらその10万人にお知らせできるだろうかと考えていました。2拠点をどのようにうまく繋げられるかという内容をKazaneさんに相談させていただいて。そしてトランジションで、渋谷PARCOに戻ってくるような映像を制作しました。
大平:Kazaneさん、このような企画に参加してみていかがでしたか?
Kazane:めちゃくちゃ楽しかったですね。撮影場所が2か所あると、やれることも増えますし、トランジションを考えるのも楽しかったです。ただ、その会場とお店の雰囲気が違う場合があるので、まとめ方が難しいなと編集しながら感じていました。
大平:続いて、Kazuhoさんとの動画ですね。
村山:昨年、渋谷PARCOが50周年でした。このタイミングに合わせて、バーバリー(Burberry)のお洋服を着ていただきながら、 Kazuhoさんとダンサーのミユさん、キョウカさんに数珠繋ぎでダンスをしていただいた動画です。ダンス3部作として、パフォーマーの方とファッションが連動したようなコンテンツを初めて企画させていただきました。
大平:Kazuhoさん、参加してみていかがでしたか?
Kazuho:楽しかったです。バーバリーさんのお店に呼んでいただいて、衣装を選ぶ段階から参加することができたので、「これ着てください、これ持ってください」といったような全て決められた中でのパフォーマンスではなかったことが、すごく楽しかったです。
大平:村山さんが今後やってみたいことを教えてください。
村山:今回、KazaneさんとKazuhoさんのパフォーマー2人とご一緒して1番良かったことをチームで振り返った時に、非言語で伝わるダンス×ファッションというのが1番良かったねという感想になりました。
動画(上)はアメフトのワイドレシーバーというパスを取るポジションの方の動画なんですが、このようなスーパープレーってシンプルに「わーすごい!」と感じられると思うので、パルコの公園通りのところでやっても絵になるんじゃないかなと思います。スーパープレー×ファッションは個人的にやってみたい。
大平:ありがとうございます。すごい発想ですね!
今後の可能性や、やってみたいことは?
小串:最後に、KazaneさんとKazuhoさんが文化服装学院の皆さんとやってみたいことや、個人的に挑戦したいことなどを教えてください。
Kazane:とりあえず学生の皆さんには、1回リフティング練習をしてもらって(笑)。
講座の前半に見させていただいた学生の動画の中にも洋服の制作風景がありましたが、もっといいカメラで日常から逸脱した映像を撮ることなどができれば、すごく面白いと思いますし、クリエイティブには限界がないのでどこまででも表現できそうです。個人的にやりたいことはたくさんありますが、僕はボール×ファッション×音楽を軸にしているのでこれらをもっとうまく融合させて、最終的には「フリースタイルフットボールってめっちゃかっこいいね、こんなことやっている人がいるんだね」ということが、少しでも広まってくれると嬉しいです。
Kazuho:僕は逆にダンスじゃなくてファッション。ファッションの動画を皆さんと一緒に撮ることができたらすごく嬉しいなと思ってます。
あとは、僕は18歳の頃にダンスを始めて、そこからずっと野望を抱いて、今まで来ているので、皆さんの中にもイッセイミヤケやヨウジヤマモト、コム デ ギャルソンを超えたいといった、熱い野望を持ってる方たちとお会いしたいと思っています。
学生が制作したリールの講評
第2回の講座を経て、学生の夏休みの宿題となっていた「リール制作」の講評も行われました。学生のInstgramアカウントに投稿されたリールの中から、前回のゲスト講師アダストリア株式会社のHinechiさんとバヤコさんが選んだ5つの賞をご紹介!
メイキング賞 @aoba.jp
Hinechiさん・バヤコさん:「めちゃくちゃ良い」の一言です。細かいところまでこだわって動画を作っていることがわかります。 あえて音楽を入れずに、裁断をする音やペンを走らせる生の音を使用していることが良いですし、画角も見ていて飽きない。カット割りにしているところも◎。制作している作品の完成形を冒頭で見せつつ、その流れで制作過程を見せられると、よりキャッチーになりそう。ハッシュタグをつければ、再生数ももっと増えそうです!
次世代クリエイター賞 @nodoka.0613
Hinechiさん・バヤコさん:元々の動画作り、写真の撮り方、撮られ方の完成度が高いですね。自分の見せ方までわかっています。 雰囲気がおしゃれだから、文字を入れても世界観が崩れていないことが強み。これからはぜひ文章にもチャレンジしてみてください。キャプションも150字程度、自分の思ったことを書いてみましょう!
服飾学生賞 @m_baa
Hinechiさん・バヤコさん: ファッション×自分の基本軸に沿ったリールになっていて良いです。全体的に世界観が完成されているし、表現の仕方もはまってる。自分をメインで投稿してるからこそ、顔まで入れて撮影すると、さらに個性が伝わるようになりますよ。
また、アカウントに初めて訪れたユーザーにもわかるように、キャプションが150字程度あると良いですね。日記のようなテキストでOK!1週間のコーディネートのことなどを書いてみましょう。
被写体賞 @lera_1012
Hinechiさん・バヤコさん:動画のクオリティが高い。 モデル、ファッションといったご自身の活動に沿って、景色だけではなく本人が映っている構成にしているのが◎。Vlogを作るときは自分が映っているカット6、風景や景色4になるように6対4の割合を意識して作るとさらに良くなります!
ヒネ&バヤ注目賞 @saki_yanagiya
Hinechiさん・バヤコさん: 動画を見ただけで撮り方、撮られ方に慣れているのが伝わってきます。 日常の中で動画を撮っているのもわかるし、Vlogでの自身の映り込み方も100点。撮るのが上手いからこそ、フィードでも自分を1枚目に載せる投稿を多くしてほしい。もっと見たいです。今後に期待したい!
講座に参加する学生の皆さん
次回は「ファッションブランドとInstagram」について学びます。お楽しみに!