• HOME
  • STUDY
  • ファッションメディアに聞く、SNSの活用術とマー...

ファッションメディアに聞く、SNSの活用術とマーケティングトレンド
文化服装学院の学生に向けた、Metaの次世代クリエイター支援プログラム vol.5

2024.12.03

FacebookやInstagram、Threadsなどのプラットフォームを運営するMetaが文化服装学院とタッグを組み、次世代のクリエイター育成を目的にした特別ゼミを全6回で開講。
5回目のテーマは「ファッションメディアから見た、SNSの活用術とマーケティングトレンド」。ファッションを中心に様々なジャンルの情報を発信するウェブメディア「FASHIONSNAP」でディレクターを務める芳之内史也さんをゲスト講師にお迎えし、ファッションメディアにおけるSNSの活用方法、最新のマーケティングトレンドなど、メディアの視点からファッションに関するお話をうかがいます!

photographs : Norifumi Fukuda (B.P.B.)

\1から学ぶ/
▶︎第1回「ファッション業界とInstagramの関係」はこちら◀︎

【第5回】
ファッションメディアから見た、

SNSの活用術とマーケティングトレンド

芳之内史也
1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、ファッションメディア「ChangeFashion」を経て、FASHIONSNAPに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2024年まで「ASIA FASHION COLLECTION」の審査員を務める。

FASHIONSNAP
WEB:https://www.fashionsnap.com/
Instagram:@fashionsnapcom

全6回の講座を進行するのは、Metaのグローバル パートナーシップ チームの皆さんと、文化服装学院の卒業生でもある、フリーランスエディターの岡島みのりさん。

ストリートスナップサイトとしてスタートしたFASHIONSNAP。2007年からニュース情報の配信を開始し、現在はファッションに関わるヒト・モノ・コトを網羅するメディアとして日々情報発信を行っている。

ファッションメディアに携わる人々は何を考え、どういった仕事をしているの?

芳之内史也(以下、芳之内)FASHIONSNAPは「THINK FASHION」というキーワードを掲げ、常に次世代のファッションコンテンツを生み出していきたいと考えています。 基本的に無料で見ることができますが、一方で収益を得る必要があります。どのようにしてお金を稼いでいるのかというと、ファッションブランドや企業から広告をいただいたり、コンテンツを一緒に作って発信するという方法です。

利益をあげながら、僕たちのミッションである「次世代のファッションを生み出す」を実現するには、多くの方に制作したコンテンツを “ちゃんと” 見てもらう必要があります。

大平かりん(以下、大平):“ちゃんと”というのは、マス層だけではなく業界の方やファッションに関わっている方が見る媒体ということですね。

芳之内「多くの人に届ける」だけではなく、「本当に届けたい人に届ける」ということが重要です。そのためには、ターゲット層に響くコンテンツの制作が不可欠。僕らにとってのコンテンツは記事、SNSでの動画や、ストリートスナップなど。サイト上に用語集・辞書なども作っています。

岡島みのり(以下、岡島)用語集・辞書、すごく助かりますよね。学生の皆さんも資料を作る時に検索して利用できますよ。

編集者の1日はどんなスケジュール?

芳之内正直、寝ていないですが…。僕の場合、大体23時から2時くらいまでは呑んでいます(笑)。この(写真上)スケジュールは他のスタッフのライフスタイルを平均しました。
まず、仕事が始まるのは朝10時。ファッション業界は10時スタートが多いのではないでしょうか。展示会は大体11時から。そこからいくつか展示会を回って、会社に戻ります。その後は、記事を書いたり動画編集したり、広告を作ったり…といった作業時間に当てています。そして19時頃から、ブランドのイベントやパーティーに参加して、動画撮影などを行い発信します。その後、帰宅。

大平このお仕事は人と会うのが好きな方でなければ、務まらなさそうですね!あと、サイトやSNSの数値分析も重要ですね。これは紙の世界(雑誌や書籍など)にはないと思います。

岡島紙の媒体だと、数値が見えづらいですよね。誰が読んでいるかなどは視覚化しにくいので。

大平WEBは全ての記事に、PV数や数字が出てしまいますからね。

芳之内「Chartbeat(チャートビート)」というWEB分析ツールがあります。記事がどこまで読まれているのかを計測できるツールです。例えば、記事中の写真が微妙だったらそこで離脱されていることが分かったり。分析しながらより良いコンテンツ作りに励んでいます。

大平メディアに限らず、長く継続しているブランドはやはりこの“分析力”の部分が優秀ですよね。すごく重要だと思います。

メディアにおけるSNSの重要性と活用術

芳之内生活情報を得るために使用しているメディアの利用率を年代別で見ると、10代になればなるほどSNSを利用して情報収集をしています。この年代の方はきっと、紙で新聞を読んでいる方はいないですよね。僕ですら紙の新聞を読まなくなりました。

大平有料で情報を得るということに皆さん慣れていないと思います。SNSも無料、FASHIONSNAPも無料ですから。dマガジンは月に580円払えば、登録されている雑誌は全て読めます。

岡島サブスクをいくつか契約するだけでも慎重になりますよね。

大平プラットフォームの使い分けも考えなければなりません。

芳之内Xのポストに外部URLを入れると、インプレッション数が減るというアルゴリズムがあります。一般的に、SNSはユーザーをプラットフォーム内に長く滞在させることを目指しています。そのため外部サイトへのリンクを含む投稿は、ユーザーがプラットフォーム外に出てしまう可能性が高いため、このようなアルゴリズムによって抑制されているようです。

つまり、X上でより多くのユーザーに届けるためには、外部サイトへのリンクを控えて、X内で完結するようなポストをしなければいけない。いわゆる繊研新聞さんのThreadsのように。(記事から抜粋したテキストで長文投稿を行い、その投稿だけで情報が得れる使い方)

大平:各SNSのプラットフォームの都合によって、ユーザーは左右されてしまいますよね。例えば1つのアカウントだけを信用して使っていても、ある日突然、アカウントを失ってしまう可能性もあります。そこのリスク管理も非常に大切になります。

芳之内最近我々が特に力を入れているのは、Instagramのリールです。先日のオープンハウス(DOVER STREET MARKET GINZAが年2回開催している、顧客に向けたイベント。国内外から注目のデザイナーやアーティストが参加し、インスタレーションなどを行う。)では、S.S daley(エス・エス・デイリー)のデザイナー スティーヴン・ストーキー・デイリーが来日していたので、リール用にインタビューを行いました。

大平:ファッションデザイナーを紹介するときはエンタメ感が出しづらいですよね。かっこよすぎてしまったり。この動画の面白い理由は、SNAPコンテンツのような感じで、「好きなブランドは?」などを軽く聞いているところがいいですよね。このような質問に対応してくれるところも新世代のデザイナーだと思いました。この匙加減も重要ですよね。

芳之内TikTokはどちらかというと、KOL(Key Opinion Leaderの略。影響力のある人物の総称)を意識してしまっていますが。

大平:それぞれのSNSでオーディエンスが異なるということですね。

パリコレにおける、最新マーケティングトレンドは?

パリコレを徹底解説している記事はこちら

芳之内「パリコレ」は、パリでファッションショーを開催すれば「パリコレ」と呼ばれるわけではないんです。正式にはオートクチュール・モード連盟という組織に属し、その公式スケジュールに組み込まれることが必要です。オフスケジュールで行っているブランドはパリコレではない。実はM A S Uはまだ入っていないんです。

大平:公式スケジュールで発表するというのはハードルが高いんですね。

芳之内一度、その連盟に属してしまうと、基本的には継続してショーを行わなければいけません。ブランドの都合で飛び飛びにショーをするという選択肢はありません。このことについて悩んでいるブランドもあります。

大平:メディアから見て、オフスケジュールでショーを行っていることに何か問題はありますか?

芳之内ショーの観客が変わるんです。アナ・ウィンターのような影響力のあるジャーナリストを招待したいのであれば、公式スケジュールに入るしかないですね。

岡島:公式スケジュールに関しては、ファッショウィークの公式サイトでショーのスケジュールが丁寧にまとめられているので、そこでチェックができます。

大平パリコレ取材での小話はありますか?

芳之内今年6月のDRIES VAN NOTEN(ドリス・ヴァン・ノッテン)の最後のショーを見させていただいた時、実はそこにマルタン・マルジェラも来ていたようで。

大平えーすごい!

芳之内日本人が座っているエリアにその噂が入って、周りもざわざわしていました。マルジェラは身長がかなり高いようなのですが、遠くに身長の高い方が見えて「あれ、マルジェラじゃない?!」となり、カメラでズームして確認しようとしたんですが、別の方でした。その瞬間暗転して、ショーがスタート(笑)。

大平残念!

\合わせて読もう!/

Screenshot

ドリス・ヴァン・ノッテンの幕引きは、さりげなく盛大に。2025年春夏パリ・メンズファッションウィーク

大平パリコレのマーケティングトレンドはどのようになっているのでしょうか。

芳之内そもそもはバイヤーやジャーナリスト向けに行われていたパリコレでしたが、2000年代に入ってから、デジタルやインターネットの普及により、B to BからB to Cへと、ビジネスモデルが大きくシフトしました。そして、誰も覚えていないかもしれませんが「see now buy now」。

大平覚えてますよ!通常、ショーで発表された洋服は、約半年後頃から店頭に並ぶのが一般的ですが、「see now buy now」というのはショーで発表した翌日から、その洋服を買うことができる仕組み。

芳之内Valentino(ヴィレンティノ)などもやっていましたよね。多くのブランドが試していましたがこのビジネスモデルは浸透せず、商品が全然売れなかったようで、一瞬で廃れました。そこで、次なる施策として登場したのが「KOL」を活用したマーケティング。著名人やインフルエンサーなどの影響力を活かして、カスタマーに訴求をしていくことに完全に舵を切りました。中でも最強なのがK-POPアイドル。

岡島:みなさん、フロントロー(ランウェイショーの最前列)にいますよね。

芳之内最近、「グローバルアンバサダー」という言葉を聞くことが多いですよね。このアンバサダーに任命されると、ショーには大体来ます。そこをメディアは取り上げることが多く、SNSでも流行りになっています。

大平学生の皆さんはこのような流行りを感じていますか?

学生:めちゃくちゃ感じています。Xでショーの感想や服を見たくて検索するのですが、来場されている著名人の内容ばかりが出てきてしまって、求めていることが何も出てこないんです。

大平わかります。このような状況は皆さん、どう思われていますか?

学生:本音を言うと…本当にやめてほしい。と思っています。

芳之内そうですよね。ですが、現段階でKOLの施策を行っているブランドの多くは、集客のため、コレクションレポートよりもKOLへの取材を重視する傾向にあります。

岡島:こういったショーやセレブリティを撮影したら、メディアの皆さんは即座にSNSへアップしなければいけないと思いますが、大変ですよね。どのような流れで速報的な公開が実現しているのでしょうか?

芳之内パリコレの場合、その場で撮影・編集して公開をするというのは不可能です。ですので、東京にて別のスタッフが深夜に待機をしています。そのスタッフに素材を送って、編集してもらってアップまでをお願いをしています。大きい媒体はどこもこのように分業していると思います。

大平SNSエディターという新しい職業も生まれていますよね。

芳之内現在は文字ではなく、動画の時代。広告も動画クリエイティブが主流になりつつあります。その動画をInstgramやTikTokといった、SNSのプラットフォームを活用して発信することが効果的。SNS投稿だけを重視するPRの方も増えてきていると感じています。とは言っても、バズらせるだけではダメ。エンゲージメントなどの指標を意識してこれからの未来のコンテンツを作っていく必要性があると思います。

次回は最終回!「最先端のVR技術や3D技術で創造するファッションの未来」について学びます。お楽しみに。

RELATED POST

M A S U デザイナー 後藤愼平に聞く、Instagram(インスタグラム)の活用術!文化服装...
Instagram(インスタグラム)のフォロワーを増やしたい人必見!リールとアルゴリズムの...
パリコレとは!?取材歴26年の編集者によるパリコレ徹底解説
ファッション業界で発信力のあるクリエイターになるには?文化服装学院の学生に向けた...
今、Instagram(インスタグラム)で求められる、新しいファッションコンテンツって?文...
ドリス・ヴァン・ノッテンの幕引きは、さりげなく盛大に。2025年春夏パリ・メンズファ...