• HOME
  • STUDY
  • タイ王室がまとうオートクチュール。シリキット...

タイ王室がまとうオートクチュール。シリキット王妃が築いた文化外交

2026.08.07

パリの装飾芸術美術館(Musée des Arts décoratifs)で、1960年代から現代までのタイ王室における衣装の変遷を紹介する展覧会を開催している。タイトルは「威厳あるモード。タイ王室におけるオートクチュールと伝統(La Mode en Majesté. Haute couture et tradition à la cour de Thaïlande)」。

ADのあとに記事が続きます

ADのあとに記事が続きます

これは、1686年に始まったフランスとタイ(当時のシャム王国)の最初の外交交流から340年、さらに1856年に締結された友好・通商条約に基づく近代外交関係の樹立170周年を記念して企画されたもの。核となるのは、ラーマ9世国王とともに世界各国を歴訪したシリキット王妃の外交ファッションだ。

展示される衣装の多くは、フランスのクチュリエであるピエール・バルマン(Pierre Balmain)とパリの名高い刺繍工房「ルサージュ(LESAGE)」が手がけたフォーマルウェアで、タイ王室の宮廷衣装がどのように発展し、自国の文化や美意識をいかに世界へ発信してきたのかを読み解く内容となっている。

王妃は、1960年の欧米公式訪問を前に、タイの伝統衣装を国際舞台にふさわしい装いへと昇華させるため、パリのクチュリエであるピエール・バルマンにワードローブの制作を依頼した。バルマンは、西洋服の裁断を基本とするのではなく、「布を身体に巻き付ける」「ドレープを生かす」というタイの衣装を綿密に研究。タイシルクやブロケード、イカットなどを用いながら、その美意識を尊重したオートクチュールを生み出した。こうして、タイ王室の新たなエレガンスは、民族的なアイデンティティと現代性を兼ね備えたスタイルとして世界に示されたのである。

会場には、シリキット王妃が着用した衣装を中心に、バルマンによるデザイン画や「ルサージュ」の刺繍サンプルなど、約200点を展示。王室コレクションに所蔵される工芸品、織物、写真といったヨーロッパで目にする機会の少ない作品や資料も見ることができる。

終盤では、ピエール・バルマンの死後、メゾン「バルマン(BALMAIN)」を引き継いだエリック・モーテンセン(Erik Mortensen)の作品も紹介され、シリキット王妃の衣装制作が継承されていく過程を解説。また、王妃の孫のシリワンナワリー王女が手がけるブランド「シリワンナワリー(SIRIVANNAVARI)」をはじめ、「アサヴァ(ASAVA)」や「ウィシャラウィッシュ(WISHARAWISH)」など、現代のタイデザイナーの作品も並ぶ。

シリキット王妃が築いた美の理念は、現代のクリエーションへと確かに受け継がれ、新たな表現へと発展していることを実感させる締めくくりとなっていた。

● La Mode en Majesté. Haute couture et tradition à la cour de Thaïlande
「威厳あるモード。タイ王室におけるオートクチュールと伝統」展

2026年11月1日(日曜)まで。

Musée des Arts Décoratifs
107, rue de Rivoli 75001 Paris, France
公式サイト

Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris

RELATED POST

「ポール・ポワレ、ファッションは祝祭」展、120年前にファッションビジネスを先取りし...
アンディ・ウォーホル、アメリカンドリームを体現したポップアートの巨匠
パーソンズ・パリの卒展で、大森美希先生に聞く「削ぎ落とすことが大切」
オリエント急行に想いを馳せて。「1925-2025。アール・デコの100年」展、開幕!
フランスで、僕たちはこう生きる!ファッションとテキスタイル分野の若手支援プログラ...
パリコレとは!?取材歴26年の編集者によるパリコレ徹底解説
知っておきたい!2025年のファッショントピックス From Paris
知っておきたい!ブンカとモードの100年史〜100年間のファッションの歴史〜
ルーヴルにモード旋風!芸術の殿堂に入ったファッション
プティ・パレでウォルトの大回顧展スタート!
文化学園出身の100人のクリエイターをご紹介!
田山淳朗 装苑賞に挑んだデザイナーたち Vol.4