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フランスで、僕たちはこう生きる!
ファッションとテキスタイル分野の若手支援プログラム

2026.04.20

パリの5つパリの5つの教育機関が連携し、若手クリエイターの研究を後押しするプログラムが誕生しました。

フランスの世界的競争力の強化を目的とした国家プロジェクト「France 2030」では、国内製造業の弱体化からの脱却と、国内生産の復活が掲げられています。

その一環として、2025年にファッションとテキスタイル分野で若手を支援するプログラム「Le Tremplin Mode et Textile」が発足。ファッション、工芸、デザインの専門教育拠点である「Campus Mode, Métiers d’Art et Design」が中心となり、次世代のクリエイターを支援する取り組みが進められています。

初年度には、提携する5つの教育機関で学んだ7名のクリエイターが選出されました。彼らの問題意識から生まれた、それぞれのプロジェクトを紹介します。

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ジュリアン・テュルジー(Julian Turgy)/ ENSAD-PSL校
フランスでは羊が広く飼育され、食用として流通している一方で、その羊毛は十分に活用されず、廃棄されています。背景にあるのは合成繊維の登場や、飼育される羊の品種の変化による加工体制の衰退です。
ジュリアンのプロジェクトは、牧羊の現場で、独自に開発した小型機械とデジタル技術を用い、羊毛からフェルト生地へ加工できる仕組みをつくるというもの。羊の毛色の違いから模様を作ることもでき、工程の簡略化によりエネルギー消費を抑えることが可能となります。生産者同士の交流も促し、誰もが参加できる地域経済の再生を目指しています。

マチュー・ゴーティエ(Matthieu Gautier)/ IFM校
3D技術と手仕事を組み合わせ、彫刻のような服やジュエリー、ウェアラブル・スカルプチャー(身につけられる彫刻)を手がけるマチュー。自然やSFから着想を得た作品を発表しているほか、ジュエリーデザイナーとしても活動しています。
今年はAlUla Design Awardのファッションデザイン部門でグランプリを受賞。考古学遺産であるサウジアラビアのヘグラの砂岩に刻まれた墓所を、リングとイヤーカフのジュエリーに再解釈して、高い評価を得ました。

ルイーズ・クルコル(Louise Courcol/ ENSAD-PSL
「クローゼットの奥に残された、着られなくなった衣服は小さな失敗の痕跡でもあります」とルイーズ。彼女のプロジェクトは、そうした失敗から新たな可能性を見出す試みです。
シルクスクリーンインクでプリントしたウールを洗濯すると、インク部分のみが縮まない性質に着目。裁断や縫製に頼ることなく、平面の生地から凹凸や立体的なフォルムを生み出す技術を研究しています。
ダブルディグリー制度を利用し、文化学園大学大学院でも学んだ彼女は、再び日本へ行き、シルクの素材形成について学ぶことも目指しています。

ジュリー・モリューゼ(Julie Moriuser/ ENAMOMA-PSL校、Duperré
ジュリーのプロジェクトは、自身が集めた古着の生地を、多数の針で繊維同士を結合させるニードルパンチ技術によって、新たな布へと再生させること。本来は繊維を絡ませて素材を形成するための技術を古着の生地に応用することで、色や柄、質感を残したまま、強度を備えた新素材が生み出されます。現在は羊毛用の小型機械を使用していますが、負荷によって針が折れやすいという課題があり、機械の改良と産業化に取り組んでいます。

ジャンヌ・ロシュデュー(Jeanne Rochedieu)/ Duperré校
テキスタイルを用いて室内環境を整えるクライマティック・デザイン(暖房に頼らず、布によって断熱・保温を行うシステム)に取り組むジャンヌは、絨毯やこたつなどの保温機能に着目。
彼女が制作する取り外し可能な中綿入りニットパネルは、装飾性と機能性を兼ね備え、わずかな厚みでも室温を2〜3度高める効果が期待されます。さらに、日本滞在で学んだ和紙から糸を作る技術も取り入れ、素材の可能性を広げています。廃棄されがちな未加工の羊毛も活用し、低コストで導入可能な作品を提案します。

マクシム・ザイツェフ(Maksim Zaitsev)/ ENAMOMA-PSL校
マクシムの試みは、デニム廃材や地元の粗い羊毛といった見過ごされがちな素材を再利用し、その価値を引き出すこと。羊毛生産者から回収した、通常は断熱材などに用いられる素材を活用し、針で繊維を絡ませて固めるニードルフェルトの技法で、縫い目のないオブジェを制作しています。
また、ジェンダーの境界にとらわれない自由な身体表現の可能性も提示しています。

ロラ・ルー(Lola Loup)/ Duperré校
ロラは、魚屋やスーパーなどで捨てられる魚の皮を回収。それらに塩や卵などを用いて、腐敗しない加工を施し、新たな素材として再生させています。
魚の皮は革のように均一になめすのではなく、傷やシミといった「生きた痕跡」をあえて残し、照明などのオブジェへと展開。北極圏の伝統的な尿などを用いる技法に着想を得つつ、パリでも可能な方法で制作しています。

コロナ禍初期、フランスは深刻なマスク不足に直面し、海外依存の脆さが浮き彫りになりました。羊を日常的に消費する国でありながら、その毛が廃棄されている現実もあります。

手間を省き、安さに依存し、外部に頼ることに慣れてしまえば、国としての自立や国力の強化は遠のいていきます。

若い彼らのプロジェクトは、過剰生産や廃棄といった課題から目を背けることなく、新旧の技術を掛け合わせながら、環境負荷を抑えた方法を模索するもの。自らの手で、国の中から力を引き上げていこうとする、小さくも確かな挑戦です。


Campus Mode, Métiers d’Art et Design オフィシャルサイト
パリ5つの教育機関École des Arts Décoratifs、Institut Français de la Mode (IFM)、École nationale de Mode et Matière (Enamoma)、École Nationale Supérieure de Création Industrielle (ENSCI – Les Ateliers)
École Duperré。

Text&Photographs :濱 千恵子(Chieko HAMA)

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