「パーソンズ・パリ(PARSONS PARIS)」が、年次ファッションデザイン展を開催。卒業制作に加え、企業とのコラボレーションプロジェクトの成果を発表しました。
メインで展示されるのは、BFAファッションデザイン(BFA Fashion Design)の学生17人と、MFAファッションデザイン&アーツ(MFA Fashion Design & the Arts)の学生18人の作品。それぞれの集大成ともいえる個人コレクションです。
「パーソンズ・パリ(PARSONS PARIS)」は、2020年秋より新たにクリエイティブディレクターのトーマス・ライティネン(Tuomas Laitinen)先生を迎えて、指導方法を刷新。その後、日本人の大森美希先生も加わり、業界における評価を格段に高めるなど、両コースを盛り立てています。

展示会場でのライティネン先生(左)と大森先生。お二人とも、さすがのエッジーな着こなし!
アイデアを削ぎ落とすことが大切
「みんなアイデアはすごくいいんですよ。でも最初のインスピレーションをどうプロダクトに落とし込むか、という作業がなかなかできないんですよね」そう話すのは大森先生。
「決められないというか、うまく編集できない。自分が一度出した案は、すべて取り込みたくなってしまうので、削るのがつらいんですよね。だから、その作業をサポートするのがとても重要で、それはその人自身を否定するのではなく、コンセプトを強調するためにアイデアを削ぎ落とさせなければならない。それができないと、色々なものを盛り込みすぎて、輪郭がわからない曖昧なコレクションになってしまいます。そのあたりを重点的に指導してきたので、学生一人ひとりが何を表現したいのか、はっきりと伝わる内容になっていると思います」

「ウィメンズウェアをしたいという学生でも、見ていてメンズのほうが向いていると思ったら、それを勧めることもあります。ダイバーシティの時代だから両方でもいいですしね。プリントが得意な学生にはそれを伝えるなど、学生それぞれに向き不向きを分かってもらうように努めています」

「そして、やっぱり着られる服でないといけないですよね。ラグジュアリーを目指すというのがベースにありますが、アーキタイプや定番の服をきちんと理解することが大切なんです。例えば、トレンチの定番だったらバーバリー、デニムジャケットだったらリーバイスなど、そういう定番を見に行くように言うと『コピーはしたくない、独自のものを作りたい』と返ってきます。でも、それを知っていないと、自分の発想をどんな風に服に落とし込んでいったらいいのか、わからなくなるんですよね。そのあたりを徹底的に教えています」
実際に、学生たちのスタンドをまわると、明確なコンセプトを打ち出すコレクションが多数。ユニークなアイデアに満ちた彼らの力作をぜひご覧ください!



MFAコースのアラス・ヤグーブ・ナクチャヴァン・タペ(Araz Yaghoub Nakhjavan Tapeh)さんは、現代社会における少女時代の喪失を題材に、失われつつあるティーンカルチャーや大人になることへの憧れを表現。女性を象徴するストッキングを全面に使用し、染色の研究に加え、つま先部分はレースのように、ウエストバンドは裾の重りになるなど、素材の特性を最大限に活かしている。現代的な定番アイテムをベースにしながらも、ティーンエイジャーの繊細さと儚さが漂う作品である。
Photo.©Chris Vidal Tenomaa (fashion), ©Emil Hernon (Research Images)



BFAコースのジアユー・ジン(Jiayu Jin)さんは、彫刻家のバーバラ・ヘップワースとヘンリー・ムーアの作品に着想を得て「Wearable Sculptures(着る彫刻)」を制作。彼らの彫刻が持つ抽象的かつオーガニックなフォルム、自然や人体をモチーフにした造形に惹かれ、シルエットやディテールに落とし込んでいる。両者の個人的な服装も参照され、ヘップワースの機能的な服、ムーアのクラシックなスーツスタイルも投影。ユニセックスで高品質、シンプルでクリーンなデザインが存在感を放っていた。
Photo.©Chris Vidal Tenomaa (fashion), ©Emil Hernon (Research Images)



BFAコースのヴィクトワール・デュヴェルディエ(Victoire Duverdier)さんは、1950年代から’60年代にかけてのジバンシィと、消防士、漁師、ダイバーといった様々な職業のユニフォームから着想を得ている。リボンなどのフェミニンなディテールとマスキュリンな制服の要素をミックスすることで、ウィメンズの典型的なスタイルを崩し、新しいものへと昇華。発泡素材やフェイクレザーなど、テクニカルなマテリアルを多用したボリューミーなシルエットも特徴的。
Photo.©Chris Vidal Tenomaa (fashion), ©Emil Hernon (Research Images)
ANN DEMEULEMEESTER x MFA Fashion Design & the Arts
また、MFAコースの1年生はステファノ・ガリーチ(Stefano Gallici)率いるアン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)とのコラボレーションを実施。アントワープのアーカイブ訪問などのプログラムに参加し、学生一人ひとりが同ブランドをリサーチし、作品制作を行う課題に取り組みました。



ローガン・モンロー・ゴフ(Logan Monroe Goff)さんはアン ドゥムルメステールとのコラボ企画で、ミリタリーとロックを融合させた2ルックを制作。ずっしりとしたコートは1940年代のスウェーデン軍バイカーユニフォームからインスパイアされ、伝説のバンド「バースデイ・パーティ」も着想源となった。フォーマルなタキシードのシルエットに、同ブランドの反骨精神を込めたエッジーなスタイルが印象的。スタッズ付きのシルクスカーフがアクセントに効いている。
Photo.©Jin Tang (fashion), ©Logan Monroe Goff (Research Images)

アン ドゥムルメステールとのコラボ企画のコーナーでは、リサーチブックの展示も。
KIKO KOSTADINOV x BFA FASHION DESIGN JUNIOR
BFAファッションデザイン・ジュニア(3年生)の学生たちはキコ・コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)とコラボレーション。同ブランドのアーカイブから提供された生地を使い、各自のリサーチに基づいて、カプセルコレクションを制作することを課されました。

キコ・コスタディノフとのコラボ企画の展示より。
Photography for Exhibition:Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris