バランスよく物を選ぶ視点とは違って、「これが好き」「あれも好き」という感覚でチョイスしているのかなと感じました。
――その考えをベースに、たとえば衣装やヘアメイク、演出が組み合わさって役が出来上がっていくのですね。
そうですね。心ちゃんの衣装を見て感じたことは、彼女はトータルコーディネートを考えて服を選ぶのではなく、「これに惹かれる」というものを直観的に1個1個集めていったのだろうなということ。バランスよく物を選ぶ視点とは違って、「これが好き」「あれも好き」という感覚でチョイスしているのかなと感じました。しかも、その「好き」の理由も毎回違っていて、たとえば「この色が好き」かもしれないし、「これは着心地がいい」とか、もしかしたら「安くて可愛い」もあるかもしれない。理由はそれぞれ違うかもしれないけど、全部彼女が、その時の感覚に正直に選んだものの集合体。それが人から見て多少ちぐはぐであったとしても、心ちゃんはあまり気にしていないように思います。ちなみに、劇中で履いているドクターマーチンは、私が10年ぐらい履いている私物です(笑)。
監督の目線やスタイリストさんの考えは違うかもしれませんが、私は、衣装からそんなインスピレーションをもらえました。
――衣装には、他の皆さんの役への想いも反映されていますね。そこからまた想像が広がっていく。
はい。衣装合わせって楽しいんですよね。自分から提案することもありますが、おっしゃる通りどういう衣装が選ばれていくかで「この人はこの役をこう思っている」というヒントをたくさんいただけるんです。
また、心ちゃんの部屋の内装も素敵で、そこからも彼女を知ることができました。インテリアとしてまとめようという意志を全く感じないけど、何か統一感がある。一見乱雑に見えても、ここに彼女が住んでいるということが凄く自然に思えたし、生活のしやすさともちょっと違うところにあるのが心地よかったです。曲作りに集中するためにリラックスしないような環境にしているのかな、など色々と考えられました。
――ちなみに今年夏、「カンヌ国際映画祭」に初めて参加されたご経験はいかがでしたか? 何かご自身のスタイルに影響を及ぼしたことはありますか。
映画祭では、映画というものが人々に愛されていて、求められている芸術なんだ、ということを実感できたことが大きかったですね。『ドライブ・マイ・カー』を上映してくださった劇場がとても大きなスクリーンで音響も素晴らしく、そこで映画を観る体験ができたことも、心に残っています。
大きなスクリーンが、派手でスペシャルなシーンがある大作映画のためだけの場所ではなく、静寂を感じるための空間でもある、ということをすごく感じたんです。映画は、映像も音も隅々まで観て、聞き、感じるもの。そして自分は、そういった芸術に携わっているんだと改めて思うことができました。
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Toko Miura ● 2002年、5歳の時に清涼飲料水「なっちゃん」のCMで2代目なっちゃんとしてデビュー。以降、様々な作品でその存在を輝かせている。俳優として数々の作品に出演するのみでなく歌手活動も行い、映画『天気の子』(’19年)の主題歌ボーカリストを務め、2020年に1st mini album「ASTERISK」を発表。近年の主な出演作に、映画『月子』(’17年)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(’18年)、『あの日のオルガン』(’19年)、『ロマンスドール』『おらおらでひとりいぐも』(ともに’20年)、ドラマ「架空OL日記」(’17年)、「宮本から君へ」(’18年)など。今年は舞台『染、色』や映画『ドライブ・マイ・カー』、『彼女が好きなものは』などに出演。今後は、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に出演予定。