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湯川ひなさん演じる主人公の小池清美。彼女の部屋はかわいいだけでなく、作品に関するヒントとなるアイテムがそこここにセットされているそう。要チェック!


2019年9月号の連載「GIRL これからの、女の子」に登場し、『装苑』でも注目していた俳優の湯川ひなさんが、初の連続ドラマ主演に大抜擢! 今をときめく映像作家の長久允監督と数度目のタッグとなる今作、WOWOWオリジナルドラマ「FM999 999WOMEN’S SONGS 」で、主演を務める心境や独特な作品世界について、湯川さんにお話を伺いました。

その前に、「FM999 999WOMEN’S SONGS 」の作品世界を少しだけご紹介。


16歳の誕生日を迎えた主人公の小池清美は、思春期特有のカオスな心情の中でつい「女ってなに?」という一言が口を突いて出てしまう。その言葉をきっかけに、頭の中で「FM999」という謎のラジオ番組を受信した清美。戸惑う清美をよそにDJが次々と多様な女たちを紹介すると、彼女たちはおもむろに歌い始めるのだった……。


プロモーション映像(30秒)


このあらすじを読んで、「ああ、そういうドラマね」とすんなり設定を把握できる人は少ないかもしれない。それくらい独創的な世界観を持つ今作には、ストーリーの面白さに加えもう一つ驚きのポイントがある。

物語には1話につき3名のゲストが登場し、全10話で計28名のジャンルレスなアーティストが集結したのだが、宮沢りえさん、菅原小春さん、八代亜紀さん、ゆりやんレトリィバァさん、そして装苑モデルのモトーラ世理奈さんなど、思わずうなってしまうほどの豪華な面々にびっくり! さらにはそれぞれが「一番目の女」や「そこだけ雨が降る女」、「女に恋した女」など、様々な女性像を歌うことで表現しているというのだから、これはもう実際に映像を見る以外にこの物語を体感するすべはない! という、想像するだけでもわくわくするような作品になっている。

はたしてこれらゲストのホスト的役割をも果たした主演の湯川ひなさんは、今作についてどのようなことを考え、主演を務めたのだろうか。


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今回が連続ドラマの初主演となる湯川ひなさん。
スタイリスト:岡本さなみ/ヘアメイク:山下亜由美 ワンピースritsuko karita 、リングcarata


ーー作品への出演が決まり、主⼈公の清美を演じてみて感じたことは?

今回はオーディションで選んでいただいたのですが、今までオーディションに受かるという経験がほぼなかったので、とても嬉しかったです。長久允監督の作品は好きですし、何度か携わっているので、きっと今回も面白い作品に関われるんだなというわくわく感がありました。

このドラマはとても独特な世界感なのですが、私が演じる清美には、見てくださる方にもきっと感情移入できる部分があると思います。私も演じていて、清美がとにかく一人で頑張っているところーーそれにはいろいろな理由があるのですがーー私自身も、人はいつも一人なんだって考えてしまうところもあって、そういう面に共感していました。皆の中にもそういった清美的部分があると思っていて、そんな清美が女性たちと出会ってどう感じていくのかというところも、想像しながら見ていただけたら嬉しいです。

長久監督とは何度も仕事をしているので、演じ方などについてそこまで話し合わなくてもいいかなと思っていたのですが、最後の大事なシーンを撮る時に、ちょっと自分としてはこの表現は違ったんじゃないかと思うことがあったりして、そこで一度、長久監督と腹を割って話すじゃないけれど、そういう機会を作っていただきました。清美はそんなに強くなくていいよね、っていうことをお互いに確認しあった時があって、そういった過程も今作では印象的でした。

清美を演じる上では、自分自身の俳優の経験値的に感情のベクトルをすぐに変えていったり、抑揚をつけるという事がなかなかできなかったので、そこはちょっと難しいなと思った点です。ポイントポイントでそういった場面があって、今まで演じてきた役とは違う、初めての表現に挑戦できたと感じています。



ーー今回、豪華な歌い手ゲスト陣が続々と登場しますが、キーとなる歌についてや共演した感想を教えてください。

毎回、ゲストと会話するシーンがあるのですが、その場面の時、清美の視点がカメラになっているので私は画面には映らないんです。でもお芝居を同時にするので全員とご一緒させていただきました。人生の先輩方とたくさんお会いして、その方々が表現に対してどのように向き合っているのかも、肌で感じることができました。

このドラマの鍵となる歌については、台本で歌詞だけ読んでいた時とは印象が違って、長久監督の中のイメージが形になっているんだと思うのですが、曲になってみるとこういうメロディになるんだっていう驚きがありました。このドラマには音楽がすごく関わってくるので、音楽を楽しむことや、音楽が生まれた理由って何だったんだろうって考えてしまうような、音楽が持つ根源的な楽しさを見つけることができると思います。

また、どの方も素晴らしかったのですが、中でも八代亜紀さんの歌には特にパワーをいただきました。テレビで見ていてもお分かりだと思うのですが、すごいチャーミングな方なのに、歌で人を元気にしたりパワーを与えるお仕事をしてきた方なので、歌の表現力がとても素晴らしかったです。


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第1話を彩るゲストの方達と。左から、主演の湯川ひなさん、「一番目の女」の宮沢りえさん、「毛皮のコート着る女」のメイリンさん、「そこだけ雨が降る女」の菅原小春さん。各界から一流のアーティストが集結! 彼女たちの歌声にも興味津々。



ーーこの物語は、前述のゲストの方々が脳内ラジオで歌うという清美の妄想を軸に展開していきますが、妄想の主体は清美にあると思いますか?

そうですね、一応、清美の脳内で起きているという設定なのですが、清美もゲストの女性たちから何かしら影響を受けていくという流れになっているので、そういう面では清美だけが作品の主体ではないのかなと思います。

様々な女性たちが、清美の「女ってなに?」という言葉をきっかけに登場し、彼女たちの現状や経験などを歌で綴っています。だけれどもそれ自体に「女ってなに?」の答えがあるというよりは、どこかこう、ずっと混とんとしていた物事にいったん区切りをつけるような、すとんと腑に落ちるような感覚に、最後はなるのかなと思いました。どんな考えを持っていても、選択をしていたとしても、とりあえず肯定する。どんな生き方であっても肯定するっていうことを、長久監督が伝えているような気がしました。

私自身も日常で「女ってなに?」って疑問に思う瞬間はあります。でも、この作品が放送されることで、現実はそう簡単には変わらないけれど、どこか逃げ場だったり、ちょっと楽になるような、”手すり”みたいな存在になれる気がしています。私としては、清美にこそこの作品を見てほしいなって思うくらいです。



ーー今回、連続ドラマの初主演という事ですが、作品で学んだことやこれまでの演技の経験が活かされた場面はありましたか?

連続ドラマ自体が初めてだったので、まずはどのようにドラマを組み立てていくのかを俳優として学びました。また、映像作品では映像上で物語をつなげる必要があるので、たまに人の動きとして不自然に見えることがあるんです。例えば舞台では相手がいて対面して演技ができるところを、相手がいない状態で演技をする場面もあるので、目線だとか、清美がそこに存在しているという事自体が不自然でなくなるような表現ができればいいなと、今までの経験を踏まえて演じていました。

演じること、芸術に携わることは、何をしてもーー人を傷つけることはしてはいけないですがーーいろんなことを発言してもいいと思うし、もっと自由になって欲しいと思っているので、自分もこれから作品に関わる時は、ちょっとした意思表示であったり、社会に対してこのように思っているから自分はこうする、という事を踏まえた上での表現者でありたいなって、思いました。



ーー長久監督作品で特徴的な衣装や美術についてはどう思いましたか?

清美の衣装はほぼ変わらないのですが、ゲストの方の衣装はこのために製作されたものもあったりして、このドラマの見所の一つです。特に印象に残っているのは「インターネットの女」を演じた青山テルマさんが着ている衣装。ぱっと見は何かわからないのですが、光に反射する衣裳らしくて、全身に光を反射する素材をまとっているのも面白かったですし、「タコを食べる女」を演じた内田慈さんはすごい大きな、身動きがとれなさそうな衣装を着ていました。

あとこれはぜひ見る人にも注目してほしいなって思っているのですが、清美の部屋はすごくかわいいだけじゃなく、部屋の中に、いろんな女性たちを彷彿させるようなモチーフの小道具がいっぱいあって、それがちょこちょこと置いてあるのです。部屋の中で演じている時に、ああ、これを清美が何気なく目にして「タコを食べる女」を妄想したのかな、って勝手に考えていたりしました。一見ごちゃごちゃしているんですけど、その中から作品のヒントを見つけてほしいです。


キャスト紹介


ーー清美は16歳の誕生日を迎え、内面はかなり混とんとした状態にありますが、16歳というのは湯川さんにとっても特別な年齢だったのでしょうか?

うーん、正直戻りたくもないし、表に出したくもないような恥ずかしい状態だった気がします。なんだろう。もうちょっといろいろと上手くやればいいのに、ちょっとしたことでつまずいて焦ってしまって。あとすごいかっこつけていたんです! 今でもかっこつけちゃうんですけど、人にどう見られるかをすごい気にしていたので。

あの頃は自分が子供なのか大人なのかってことも分からなかったし、もやもやした思いを内に秘めながらも、外面はちゃんとしなきゃって思っていて、表に出していることと自分の内側がかみ合っていない感覚はありました。

二十歳になった今、16歳の自分に言えることがあるとしたら「もっと長い目をもって計画しなさい」ってことでしょうか(笑)。目の前のことに囚われすぎていたから、その先の人生のことを考えて行動しなさい、って今なら思います。



ーー最後に、自分が歌う女の立場になったとしたら、なんの女になりたいですか?

そうですねー、じゃあ、「感情が爆発する女」! それこそ自分が格好をつけていたり、いい子にしていようと思ってしまうタイプなので、人の目とか、こうでなきゃいけないという制約を一切気にせずに、感情を爆発させられる女になりたいな。というか、一度、感情を爆発させてやってみたいという、私の願望が含まれているんだと思います。


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Hina Yukawa●2001年生まれ、東京都出身。’14年に「ミサワホーム」のコマーシャルでデビュー後、’15年に映画『あえかなる部屋-内藤礼と、光たち』で女優として本格的にスタートをきる。’16年にショートムービー『そうして私たちはプールに金魚を、』で主演を務め、第33回サンダンス映画祭短編部門に正式招待され、日本作品で初めてのグランプリを受賞。


「FM999 999WOMENʻS SONGS 」

3月26日(金)配信スタート
毎週金曜よる9:30より配信[無料トライアル実施中]【WOWOWオンデマンド】
3月29日(月)放送スタート
毎週月曜よる9:30より放送【WOWOWプライム】(全10話)

脚本・総監督:長久允
演出:中村剛、大熊一弘
音楽:三枝伸太郎
音楽プロデュース:愛印
制作プロダクション:ギークサイト
制作協力:電通
製作著作:WOWOW
特設サイト:www.wowow.co.jp/drama/original/fm999/

出演:湯川ひな 岡部たかし 倉悠貴 TARAKO
【第1話ゲスト】宮沢りえ メイリン 菅原小春【第2話ゲスト】塩塚モエカ 太田莉菜 八代亜紀
【第3話ゲスト】モトーラ世理奈 後藤まりこ ともさかりえ【第4話ゲスト】アオイヤマダ 三浦透子 ゆりやんレトリィバァ