映画『スパゲティコード・ラブ』特集1:俳優・三浦透子インタビュー
「好きになった記憶を大切に」

『ドライブ・マイ・カー』(2021年、濱口竜介監督)で文字通り、世界に知られる存在になった若き演技派・三浦透子。彼女の次なる公開作は、現代の東京を舞台にした13人の群像劇『スパゲティコード・ラブ』(11月26日(金)公開)。

フードデリバリー店員やカメラマン、広告クリエイターといった若者たちが、もがきながら東京で生きていく姿がスタイリッシュな映像とリアルな心情描写でスクリーンに焼き付けられていく。映像クリエイター、丸山健志の初長編映画となり、三浦のほか倉悠貴、清水尋也、八木莉可子、土村芳、ゆりやんレトリイバァといった多彩なキャストが名を連ねた。

三浦が本作で演じたのは、シンガーソングライターを志すも、その夢を諦めてしまった女性・桜庭心。自分自身が映り込んでいると錯覚するほどに、若者たちの苦悩やヒリヒリした焦燥をビビッドに収めた本作で、「役ととことん向き合う」俳優・三浦は、どのように人物像を構築していったのか。彼女の言葉から、その足跡をたどる。

photographs : Jun Tsuchiya(B.P.B.) / styling : Mie bon Minagawa / hair & make up : Yuko Aika (W) / interview & text : SYO

『スパゲティコード・ラブ』
舞台は現代の東京。フードデリバリー配達員の羽田天、シンガーソングライターの桜庭心、ノマド生活を標榜する大森慎吾、気鋭の広告クリエイター黒須凛……。現在と過去の恋人同士、仕事仲間、客と従業員など、13人の若者の人生が交差してつながっていく。やがてそれぞれの物語は思いも寄らないエンディングへ。丸山健志監督、倉悠貴、三浦透子、清水尋也ほか出演。
11月26日(金)より、東京・渋谷の「ホワイトシネクイント」ほかにて全国公開。ハピネットファントム・スタジオ配給。©『スパゲティコード・ラブ』製作委員会

WEB:https://happinet-phantom.com/spaghetticodelove/
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Instagram @spaghetticodelove

https://youtu.be/NjnOzQgwUkY

作り込んだファッションや画のビビッドな部分と、リアルな人間の肌感を残すバランス感覚が、すごく面白かったです。

――『スパゲティコード・ラブ』は、東京で生きる若者たちの日常が、次第につながっていく物語です。完成版をご覧になって、いかがでしたか?

 脚本でも、ある人物を描いたシーンの終わりが次の人物のシーンに少しずつつながっていくものになっていたので、本を読んだ時点で「そのさまを画で見せていくんだろうな」という予想はできたのですが、実際に完成した映像を観たときには、非常に気持ちよさを感じました。

 衣装やメイク、映像自体の色味など、細部に至るまでこだわりの強い作品であるということも、そう感じた大きな理由です。中でも映像は、「人の肌の生っぽさ」を残しているように思いました。綺麗すぎない肌やてかり、髪の乱れといったような部分を補正せずにちゃんと見せるからこそ、東京に暮らしている若者たちのリアルが見えてくる。作り込んだファッションや画のビビッドな部分と、リアルな人間の肌感を残すバランス感覚が、すごく面白かったです。

映画『スパゲティコード・ラブ』より。三浦透子さんは、シンガーソングライターになる夢を持つ、桜庭心を演じた。

――丸山監督は「リアリティ」をひとつのテーマに掲げられていたと話されていました。まさに、いまのお話に通じますね。

 現場でも、作り込んだ画を撮るのかリアルを見せるのか、演出の段階で非常に明確でしたね。私と清水尋也さんの回想シーンでは、心ちゃん(三浦透子)が楽しかった時期の感情が衣装にも反映されていて、彼女の頭の中で作られたイメージの中に入るような撮り方でした。対して、現在パートに移り、“人”を撮るとなると、一気に切り替えて生々しさを大事にしていました。そのときは声のトーンも含めて、「お芝居っぽい作ったものではなく、そのままでいいです」というオーダーでした。

――今回は歌唱シーンもあり、そういった意味でも三浦さんにリンクするのかなとも感じたのですが、いかがでしょう?

 私は、心ちゃんのように歌手を目指して自分で作詞作曲して路上ライブをして……という活動をしてきたわけではなく、結果的に歌が仕事になったという特殊なプロセスを歩んで来ているので、またちょっと違うんですよね。「表現の仕事を目指している」という意味では、悩みも含めて心ちゃんに共感できるところがあったと思います。

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