「Björkという現象」における
ビョークへのインタビュー全文をここに。

新しいテクノロジーであるAIの要素と人間性を融合して見せたかったのは、白いエロティシズム。

当時、クリス(・カニンガム)はロンドンで一番仲が良い友達で、よく一緒に遊んでたの。リチャード(・D・ジェームス /エイフェックス・ツイン)やレイラ・アラブ(プロデューサー、DJ)ともよくつるんでた。その頃すでに、クリスはすでにエイフェックス・ツインのビデオ「Come to Daddy」 を手掛けていて、あれがもう本当にすごい作品で、衝撃的だった。まさにアイコニックで、強烈で、心に焼きつくような作品だった。

だから私も彼とはいつか何かやりたいとは思っていたんだけど、ぴったりなプロジェクトが見つかるまで、ずっと待っていたの。もっと違う方向性で挑戦したいと思っていたから。

彼がポーティスヘッドと一緒に作ったビデオ 「Only You」 もすごく好きだった。とても感情的で、深みがあって。あれについて話したとき、彼の子ども時代に基づいていると言っていて、私はそこにすごく惹かれた。このビデオでも、もっと感情の深い主人公を描きたいって思っていて。彼って、そういう表現もできる人だから。もちろん、彼がエイフェックス・ツインと作ったビデオのいたずらっ子っぽさとか、トリックスター的な感性も大好きなんだけど。本当に独特で最高だったから。でもここでは、ちょっと違う方向を探していたの。

それで、彼の家に行った時、小さな日本の彫刻、象牙で作られたエロティックな“根付”をいくつか持って行って、彼に話したの「この曲はすごくシンプルだけど、それがすごくいいと思ってる」って。そのシンプルさが、私にとっては“真っ白なパレット”みたいでちょうどよかったし、同時に、この曲は“愛”と“欲望”が交わる場所についての歌でもある。どっちかだけじゃなくて、両方。だけど、それをよくある“ダーク”な表現にはしたくなかった。セックスってよく、ゴシックで黒っぽくて、どこか地下室で起きてるみたいなイメージで描かれることが多いでしょ。私が描きたかったのは、そういうのとは真逆のことで、“天国でのセックス”。

つまり、“白いエロティシズム”だった。たとえば、さっき話した日本の小さな像みたいに、でもそれが愛とかセックスで溶け出してるような、そんな感じにしたかった。それで、クリスが最初に出してきたアイディアを見たとき、最高!って思ったの。でも彼は「いや、まだダメだ。これじゃ満足できない」って言って(笑)。それから何ヶ月も待つことになって、「ねぇクリス、そろそろ……!」ってなってたのよね。そしてようやく彼が「これならいける。自分でも納得してる」持ってきた2つ目のアイディアは、最初のとはまったく違うものだった。そこからあのロボットたちの愛の世界が生まれたの。それが完璧だった。

ロボット同士が触れ合って、混ざり合って、“溶けていく”感じを表現している。しかもそこにエロスも感情も、同時に存在していた。その表現が、あまりに美しかった。エロティックな要素も、すごく巧みに、洗練されたかたちで織り込まれていて。本当に、ひとつ上のレベルに到達していたと思う。

うーん………(しばらく考えて)結局、いつも同じことを言ってるんだけど、特に今はAIとかいろんなことが進んでる時代だからこそ、自分の声を見つけることが本当に大事だと思う。それから自分の視点を持つこと。それを信じて、貫くこと。結局、それが長い目で見て、一番強い武器になる。

マラソンみたいなもので、自分の軸を持って、5年、10年、20年っていう時間をかけて、自分の感覚に忠実に一貫していれば、ちゃんと伝わっていくから。それがやがて作品を通して滲み出てくる。だから“自分の声”を探して、それに誠実でいてほしいなって思う。それが私からのアドバイスかな。

こちらこそ、ありがとう。とても楽しかったわ。バイバイ!

Björk
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