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映画「ハリー・ポッター」シリーズ衣装デザイナー取材、スタジオツアー東京特別企画「炎のゴブレット」衣装の舞台裏

2025.06.12

映画「ハリー・ポッター」シリーズ第4作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005年、監督:マイク・ニューウェル)公開20周年を記念し、ワーナー ブラザース スタジオツアー東京では、期間限定の特別企画「炎のゴブレット」を開催中。開業以来初めて、ひとつの作品をテーマに全館規模で展開している。

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大広間に足を踏み入れると、青白く光る年齢線と青い炎が揺らめく演出の中、あの「ゴブレット」が来場者をお出迎え。やがて炎は青から赤へと色を変え、三大魔法学校対抗試合の選手の名前が記された紙片が舞い上がる映画のワンシーンが目の前で再現され、ファンにはたまらない空間が広がっている。
このように本展は、映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の世界に没入できる、貴重な機会となっている。

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さらに、初公開となる小道具や衣装、クリーチャーも展示。三大魔法学校対抗試合の舞台に足を踏み入れ、魔法と冒険が闇の勢力との戦いへと変わるターニングポイントを味わうことできる。

特に注目したいのが、衣装の展示。今回の特別企画では、実際に撮影で使用されたオリジナル衣装が展示されている。装苑オンラインでは、映画撮影時に衣装担当として携わり、本企画にクリエイティブ・コンサルタントとしても参加しているローラン・ガンシーさんに特別インタビューを実施。

映画「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(2005 年)
ヨーロッパの三大魔法学校(ホグワーツ魔法魔術学校、ボーバトン魔法アカデミー、ダームストラング専門学校)が一堂に会し、勇気・知性・魔法を競い合う伝説の三大魔法学校対抗試合が、100年ぶりに開催されることに。各校の代表者を選ぶのは、〈炎のゴブレット〉と呼ばれる魔法のゴブレット。その過酷さから、出場資格は17歳以上と決められているが、なぜか 14歳のハリーが選ばれ、はからずも3つの危険な課題に挑むことに。果たして彼の運命とは?ハリーの成長と試練、友人との確執や別れ、そして闇の帝王ヴォルデモートの復活。壮大な戦いが幕をあける。

お話を伺ったのは
ローラン・ガンシーさん
2002 年、数学、物理学、天文学の分野から、グローバルな映画界に転身したコスチューム・デザイナー。 映画「ハリー・ポッター」シリーズ、『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの 12 か月』、『007 スカイフォール』などの話題作に携わった。2012 年には、起業家としてのビジョンを実現するため、ファッションとコスチュームデザインに特化した会社ロロ・クリエイティブを設立。また、映画「ハリー・ポッター」シリーズで培った経験を活かし、 ロンドンと東京のワーナー ブラザース スタジオ ツアーのクリエイティブ・コンサ ルタントとして、企画展示や新規プロジェクトに貢献し、スタジオツアー東京のコスチューム・キュレーションの開発でも中心的な役割を果たしている。

テクニカル素材を通して、ドラゴンと戦う強さを表現

ローラン・ガンシー(以下、ローラン):第一の課題は、選手たちが黄金の卵を手に入れるために危険なドラゴンと戦う、緊迫感あふれるシーンです。激しいアクションに対応する必要があり、スタント作業や火の特殊効果にも耐えられるよう、強化リップストップナイロンと厚手のコットン混紡の織生地を用いています。この生地はよく光を拾うので、映像として見た時に衣装が荒々しい印象となり、戦闘的な雰囲気に映るんです。

ローランフラー・デラクールの衣装が分かりやすい例で、レザーアーマーと呼ばれる甲冑のようなトップに使用しています。このように、戦闘をイメージさせるアイテムに意識的に取り入れることで、各学校の代表者たちがドラゴンと戦う強さを持っていることを表現しました。また、ハリーやセドリック・ディゴリーは軽やかなズボンとすっきりとした外套を組み合わせ、動きや鋭さを感じさせるシルエットに仕上げています。このアスレチックな装いにより、「ハリー・ポッター」シリーズの日常的な学園生活ではなくて、身体を使う危険な試練に挑もうとしていることを、見る人により分かりやすく伝えられたと思います。

ローラン:ビクトール・クラムの衣装は、ホグワーツの他の2人の現代的でアスレチックなスタイルとは対照的に、ミリタリー要素を取り入れたデザインになっています。軽量のウールを使って構築的にデザインを組み立て、動きやすさを確保しています。縫製をきれいに仕上げ、きちんとしたシルエットに。品を加えつつ、バーガンディなどのアーシーな色合いが旧世界の軍服のような厳格さも際立たせています。エレガントで威厳のある佇まいでありながら、しっかり機動性も兼ね備えているんですよ。

カルチャーが息づくボーバトン魔法アカデミーとダームストラング専門学校の衣装

ローラン:ボーバトン魔法アカデミーとダームストラング専門学校が大広間へ入場するシーンは、 それぞれの魔法学校の個性、伝統、そして視覚的な美学を象徴するアイコニックな瞬間です。それぞれの学校の特色が全面に出るよう分かりやすい衣装に仕上げました。

ローラン:もちろんです!ボーバトン魔法アカデミーは、フランスの洗練されたエレガントな雰囲気にインスパイアされています。スリムで優美なシルエット、柔らかなテーラリング、バイアスカットや流れるようなラインが特徴的ですね。1930年代のパリ・ファッションを意識していて、身体のラインに沿ったドレスの形、ドレープのある袖、特に、パウダーブルーのシルク生地や裾の広がりはオートクチュールを思わせる仕立てにし、1930年代の雰囲気をより表しています。帽子はフィリップ・トレーシーが制作しています。そのデザインには、アール・デコの影響も感じますね。

ローラン:とにかく“スケール感”が難関ポイントでした。カメラトリックや大柄なスタントマンに対応するため、1つの衣装に対していくつかのバージョンを制作しています。例えば、赤いコートのプリントは、小さいサイズと大きいサイズの2種類を用意して、画(え)に応じてその二つがシームレスに見えるように計算を重ねています。そういう視覚的トリックを考えるのがとても難しかったです。また、彼女は巨人ですが、エレガントなキャラクターです。体に沿うシルエットやドレスのカッティングは、優雅さを表現する大事なポイントになっています。着想源は1930年代のヴィンテージのフランス製イブニングウェア。当時は、やはりとてもエレガントな時代ですからね。彼女がユール・ボールで着用したくすみピンクのドレスには、フランス製のデヴォレ加工の生地や特注染色のシルクを使用していますよ。

ローラン:ダームストラング専門学校は厳格な雰囲気でなくてはなりません。スラブやバルカン地域の軍服や民族衣装にインスパイアされて、構築的なウールコート、ファーのアクセント、レザーブーツ、ハイネックなどを採用しました。さらに、19世紀のハプスブルク帝国やロシアの軍服の要素も取り入れ、ケープの留め具や硬いシルエットに落とし込んでいます。

また、色の使い方も見た人の印象に大きく影響してくるんです。ボーバトン魔法アカデミーは幻想的なブルーが基調であるのに対して、ダームストラング専門学校は深みのある赤やアースカラーを取り入れています。ホグワーツの伝統的な配色とも異なるこれらの色味で、それぞれの学校の個性もしっかり伝わるようにしています。

ローラン:ほんの少しですが、ありました。アルバス・ダンブルドアの衣装は、3作目までは紫やモーヴカラーを使用していましたが、今作から物語のトーンに合わせてほとんどがグレーの衣装になり、色味がやや落ち着いたものになっています。ミネルバ・マクゴナガルには、舞踏会用に上品さを際立たせるダイヤモンドシェイプのグリーンのガウンを制作しました。

ローラン:セブルス・スネイプの衣装はシリーズを通して変わりません。ネイビーとブラックのフロックコートはすでにアイコニックで、演じているアラン・リックマンさん自身もこの衣装がキャラクターの厳格さを完全に表現していると感じていたためです。僕も個人的にこの衣装がとってもお気に入りなんです。

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