「Björkという現象」における
ビョークへのインタビュー全文をここに。

『装苑』7月号の表紙を飾っていただき、キャラクター特集の巻頭企画「Björkという現象」で貴重なインタビューをさせていただいたのは、極めて特別であり唯一無二のアーティスト・ビョーク。1993年のデビュー以来、時代の先を疾走してきた彼女は、音楽はもちろん、その音楽をファッションやアートとともに視覚化するミュージックビデオやジャケットのアートワークなどでも常にセンセーショナルな衝撃を放ってきた。ビョークの現時点における集大成であり、5年という月日をかけて世界を巡ってきたツアー「コーニュコピア」で創り出した世界のこと、そこに至る軌跡を、たっぷりと語って頂きました。そこで本誌には掲載できなかったエピソードも含めて、単独インタビューの全文をお届けします。

インタビュー・文=中村明美
interview & text: Akemi Nakamura
photographs: Santiago Felipe @santiagraphy

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私の視点はすべて音楽からはじまる。

こちらこそ。興味を持ってくれてありがとう。

なるほど、ファッションやデザインに興味のある若い世代向けなのね。面白そう!

うん、やっぱり私の視点って、いつも音楽が出発点なの。すべてが音楽から始まってる。この答えは、ちょっと長くなるかもしれないけど、(笑)。たとえば2006年とか2007、8年に『Volta』のツアーをしてた頃、初めてタッチスクリーンをライブに使ったの。iPadが登場するより前の話なんだけど。だから、それをライブパフォーマンスで使うというのは、本当にブレイクスルーだったわけ。

それ以前は、デジタルミュージックをライブでやるには、ラップトップをステージに置いてやるしかなかった。でもそれって、ライブに向いている楽器とは言いにくい。ノリにくいしね。

でも、タッチスクリーンが入ってきたことで可能性が広がって、事前の準備もしやすくなった。しかもエレクトロニクスで即興もしやすくなって、すごく面白いことができるようになって、もっと直感的に、衝動的に動けるようになったの。

だから、私にとっては、より本能的になれるテクノロジーが使える空間の可能性がすごくエキサイティングだった。だって、ライブパフォーマンスでは本能的な決断がとても大事だから。それと同時に、タッチスクリーンを見た時に思ったの。

私は音楽学校で10年間学んだんだけど、その時これが使えたらどんなに良かっただろうって。音楽論をタッチスクリーンで学べたら良かったのに、って。タッチスクリーンがあれば、音楽が3次元で“見える”。音や音の動き、空間の流れ、ペンデュラム(振り子)、重力、カウンターポイント、それからアルペジオ。そういうものを、目で見ながら“形”として、空間の中で動くものとして、勉強できたらって。

つまり、そういう発想から生まれたのが、『Biophilia』(バイオフィリア)。子どもたちが音楽学を学べるようにという目的で作った。10曲あるんだけど、それぞれにアプリがあって、1曲ごとに音楽の要素を教えるという構成。自然の要素と結びつけて、音楽の基礎を教えるっていうプロジェクトだった。

たしか東京でもやったと思うけど、未来館(日本科学未来館のこと)で。子供たちのグループに来てもらって、実際に体験して学んでもらったの。私たちは1ヶ月ほど滞在したの。2016年くらいだったかな。

そこから時間を早送りして(笑)。

それで私は、本当にいろんなことをやっていて、一緒に取り組んでくれる人もたくさんいたし。当時は、アプリ制作を担当してくれたグループが10チームもいて、それぞれが異なるソフトウェアを開発していたから、非常に複雑で大がかりな作業だった。

でももちろん、その後はすべてがだいぶシンプルになってきたし、プロセスも統一されてきたと思う。

私は360度のアプローチで色々と取り組んでいたんだけど、例えば、360度のサウンド設計にも力を入れていたし、サウンドとビジュアルとを空間全体でどう扱うかを考えるようにもなった。当時は、何もかもが本当に複雑だった。でも、テクノロジーの進化って驚くほど早いでしょ。私たちがやろうとしていることに、テクノロジーのほうがどんどん追いついてきて、突然、すごくスムーズに扱えるようになった。莫大なデータ容量を一気にダウンロードできるようになったりして。2年後には、1分で全部ダウンロードできるようになっていた。つまり私たちの作業中に、目の前で技術が進化していったの。

NEXT:テクノロジーとともに探求し続けた360度の表現。

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