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上白石萌歌の
ぐるぐるまわる、ときめきめぐり
Vol.13「ヤンヤン(YanYan)」デザイナー フィリス・チャン&スージー・チュン

左 フィリス・チャン 右 スージー・チュン

上白石萌歌さんが、ジャンルを問わず今気になる人を訪ねてお話を伺う連載。2024年の第一回目は、香港発のブランド「ヤンヤン」のデザイナー、フィリス・チャンさんとスージー・チュンさんのお二人です。「ヤンヤン」は広東語で“人人”“みんな”という意味。生産過程で余った高級ヤーンを使用した個性豊かなニットが、日本でも大人気です。普段から「ヤンヤン」のニットを愛用し、着ると元気が出るという上白石さん。伺いたいことが山ほどあるようです。

2人の出会いは?

上白石萌歌(以下 上白石)「ヤンヤン」の服は、衣装でもプライベートでも着させていただいて、大好きなんです。遊び心が満載で、いつも唯一無二だなって思っています。「ヤンヤン」の服が撮影現場で用意されていると、すぐ目に留まって選んじゃうんです。それぐらい魅力があると思っています。

フィリス・チャン(以下 フィリス)スージー・チュン(以下 スージー) 嬉しい!本当にありがとう!

上白石 ニットは袖を通したときに、ちくちくして着心地の良くないものがあったりしますが、「ヤンヤン」のニットは見た目も可愛いいし着心地も最高です。私にとって理想のニットだなと思っているのですが、そもそもお二人がニットブランドを始めようと思ったきっかけは何だったのですか?

フィリス スージーとはハイスクールの時からの友人なんです。私は卒業後、ニューヨークのブランドでニットデザインを、スージーは香港で刺繍やグラフィックをやっていました。ニューヨークと香港で離れていたのですが、昔から“ずっとなにか一緒にやりたいね”と話していて、ついに実現したんです。お互い得意とすることを活かしてブランドをスタートさせました。

上白石 ハイスクールの時からファッションの話をしていたのですか?

スージー いつも2人でショッピングをしていて、ファッション以外にも可愛いアクセサリーとかおもちゃみたいなものを見つけて集めていました。今もいっしょに住んでいるので、部屋にはたくさん可愛いものがコレクションされています。

上白石 とても仲がいいんですね!

フィリス 知り合って、25年ぐらいの仲になります。

2人でのクリエーション

上白石 一つのブランドを2人で手掛けていらっしゃいますが、服を制作するうえでそれぞれ役割分担があるのですか?

フィリス 私たち仲はいいけれど、得意なことや興味のあることが違っているから、自然と役割分担が出来ています。私はニットのデザインをしていたので編み方とかパターンとかデザインなどを。スージーはカラーリングやクラフト的なことを。2人で補いながら作っているという感じです。スペシャリティがそれぞれあるので、それを活かしながら。

上白石 自然と理解しあえて、クリエーションしているのが素敵ですね。

余剰の糸から個性が生まれて

フィリス すでに知っている方も多いと思いますが、「ヤンヤン」はサスティナブルであることを念頭においたブランドです。例えばとてもいい素材のいろんな糸がたくさんあっても、それぞれがほんの少量ずつだと一着の服はできません。ですがパーツに使ったり、アクセントの刺繍に使ったり。そうすることによって、個性的なアイテムが出来上がります。デザイン画を描いて、色を決めて。とても楽しい作業です。

上白石 服を作るときは、ボディを使って作るイメージがあるのですが、どんな方法で作られるのですか?

フィリス 実は、「ヤンヤン」の服はスージーがフィッティングモデルとなって作られているんです。ニットは着心地も大事だけれど、シルエットも大切なのでそれをスージーに着てもらいながら完成させます。

スージー 私たちは、着心地をとても重要視しているのですが、ボディを使っているとアームホールがちょっとタイトだったり、微妙に動きづらい細かい部分などがわからなかったりするのです。

フィリス 実際に人間が着てみないとわからないことがたくさんあるので、そこも考慮したうえでスージーがフィッティングモデルになっています。でもこのボディは、“こうしたほうがいいんじゃない”といろいろとおしゃべりが多いの(笑)。結果的に服を作るうえではとても効果的なのですが。

上白石 見た時の感動と袖を通した時の感動が一緒なのは、そういうことからなんですね。なかなかニットってそこが両立しないことがあるので、そのような制作途中のお話を聞くとさらに感動します。ニットの概念が変わります。そういうことを踏まえつつ、一つのプロダクトを制作するときに、気をつけていることや大切にしていることがあったら教えてください。

スージー まず着心地がいいこと。そして他にはないスペシャルであること。タイムレスであること。1シーズン着て終わりではなくて、何年も着られるというように。あとは、他の服とコーディネートしやすいこと。お金を払って買っていただくので、そこはとても大事にしています。

フィリス 多くの中から服を選ぶことや服を身に着けることは、結構エモーショナルで、自分の感情にフィットしてくるものですよね。もちろん着心地がいいことは大事なのですが、やっぱり元気になったり気持ちが上がったりすることも大切です。その時の自分の気持ちに寄り添う、そして気持ちをあげてくれるもの作りも必要だと考えています。

唯一無二のニットからあふれるパワー

上白石 服は、着ている人が言葉を発することをしなくても、その人の名刺のような役割を持つものだと思っているんです。その服でその時の自分を表現するように。「ヤンヤン」の服は、着ると明るくて、エネルギッシュな自分になれる。きれいな色がたくさん使われているので気分も上がります。そんな自分で新しく誰かに会いたい、会って楽しく話をしたいって思わせてくれるんです。

スージー それってとても素晴らしい!私たちの理想です。

上白石 数あるブランドの中で、私は「ヤンヤン」はオンリーワンのブランドだと思っています。人にとって個性はとても大切なものだと思うのですが、なかなか自分の個性を見いだせない人もいると思うんです。服をデザインするうえで、どうやって個性を確立させて、さらにお二人のクリエーションも反映させているのでしょうか?

フィリス デザインするときは、自分のパーソナルのことを考えていて、どういうことをしたら自分たちのアイデンティティを深めて、うまく表現できるかということを二人で一緒に考えています。

スージー あとは経験かな。ファッション界で仕事をして得るものはたくさんあります。もちろんそこからクリエーションに生かせるのもあるし、普通に毎日の生活の中でヒントになることもたくさんあります。

上白石 「ヤンヤン」には新しさもありますが、伝統的なチャイナドレスのような漢服のようなものからインスピレーションをうけていている服もあります。温故知新のイメージなのですが、そういうことも大切にしているのですね。

自分たちのルーツを素敵な解釈で

スージー 幼少期は香港から離れたところに住んでいたので、そこから見た伝統あるものがとても新鮮に見えました。日本人がみんな着物をデザインするのではないのと同じで、中国だからといってみんなが中国服をデザインするわけではありません。でもバックグランドとして、自分たちのルーツを知ることはとても興味深いし、素敵に取り入れることが出来たら素晴らしいと思っています。今は香港を拠点にしていますが、チャイナドレスのデザインをアレンジして服を作るのは、とても自然な流れだと思っています。小さい頃に家で目にした可愛い絵やパーツを、これからも効果的に取り入れていきたいです。

上白石 伝統を外側から見つめているから、魅力的で洗練されたデザインになるんですね。

フィリス 一度香港を出ているから、俯瞰して見ることもできるし、逆にそういうものがとても愛おしく感じます。

気がつけばサスティナブル

上白石 サスティナブルを謳うブランドという印象がありますが、品質の良い残糸を使ったり、ロット数を少なくしてすべて売り切るということを意識したきっかけは何だったのですか?

フィリス サスティナブルとひとことでいっても、物事とか原料に意識が向きがちですが、実際は持続可能なことに対しての時間だったり、アイディアとかクリエイティブなことがあって、まずそこに目を向けたかったんです。例えば時間に関していうと、シーズンごとに時間をかけて大量生産をするのをやめました。長くシーズンレスで好んでもらえるものを作りたかったんです。服を作る過程で関わる人達のたいせつな時間をちゃんと意味のあるものにしたかった。いろんな人の手が関わってできる1着をきちんと届けたい。そういう意味でのサスティナブルなんです。素材についても、制限のある中でクリエーションをすることはチャレンジでしたが、今はとても楽しい作業です。

上白石 サスティナブルって堅苦しく考えがちだけど、「ヤンヤン」のお二人の話を聞いていると、無意識にやってきたことが、結果的にそういう取り組みだったということが、すごく素敵です。これからもっと環境問題が深刻になっていく中で、お二人のやっていることはいろんな循環を守るためのことなので、私たちも「ヤンヤン」の服を着ることで、自然とサスティナブルについて考えるきっかけになったらいいと思います。

フィリス 自分たちがデビューした時はサスティナブルを意識するブランドはなかったけれど、今ほとんどのブランドが取り組んでいます。この流れはとてもいいことだから、世界的にもっと浸透したらみんなの意識も変わりますね。

上白石 服が完成するまでにいろいろと背景はありますが、とにかく「ヤンヤン」の服はかわいいから、難しいことを意識しなくてもそれが結果的にサスティナブルに繋がるということなので、私は着続けます!

フィリス ありがとうございます!これからも皆さんに愛されるような服作りを続けていきたいです。

――撮影を終えて――

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup : Tomomi Shibusawa(beauty direction)
styling:hao

インタビューカット
カーディガン ¥52,800、ノースリーブトップ ¥52,800、パンツ ¥63,800  すべてYanYan(LYDIA)
TEL:03-3797-3200

ファッションシュート
キャミソール ¥55,825、カーディガン ¥77,757、スカート ¥59,813、ニットキャップ ¥15,950、チョーカー ¥12,688、レッグウォーマー ¥31,900 すべてYanYan(LYDIA)

シューズ ¥14,900 チャールズ&キース(チャールズ&キース ジャパン)
WEB:https://charleskeith.jp/

Kamishiraishi Moka
2000年2月28日生まれ。鹿児島県出身。2011年第7回「東宝シンデレラ」オーディショングランプリ受賞し、デビュー。2019年、映画『羊と鋼の森』で第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。adieu名義で音楽活動を行う。数多くのドラマ、映画に出演する傍ら、「The Covers」(NHKBSプレミアム)のMCも務める。2024年3月、東京から開幕する舞台「リア王」にコーディリア役で出演。▶︎https://stage.parco.jp/program/kinglear

YanYan
2019年に誕生した香港発のニットウェアブランド。デザイナーは「ラグ & ボーン」でディレクターを務めたPhyllis Chan(フィリス・チャン)と、テキスタイルデザイナーのSuzzie Chung(スージー・チュン)のデュオ。「Proudly knitted in China」をコンセプトに、デッドストックや生産過程で余った高級ヤーンを使って、唯一無二のプレイフルなアイテムを製作している。トレンドに左右されず、商品廃棄などの無駄を抑えるビジネスモデルを目指す。
WEB:https://yanyanknits.com/

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