
スマホを置いて、本を開く時間は、どこかの誰かの考えや世界に触れながら、
自分自身の感性とも向き合える豊かなひととき。
今回は、ファッションやアート、カルチャーを愛する装苑読者におすすめしたい、
東京の個性あふれるブックショップをご紹介。
店主やスタッフの方に、とっておきの3冊をセレクトしていただきました。
本との出合いは、新しい価値観や創作のヒントをもたらしてくれるはず。
世界を広げてくれる一冊を探しに、街の本屋へ出かけてみませんか?
photographs :Jun Tsuchiya (B.P.B.)
/ text : SO-EN
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リラックスしてアートの世界に浸る。
漂流物を意味する「フロットサム」を店名に冠した、ビジュアルアートブック専門書店「flotsam books(フロットサムブックス)」は、オーナーの小林孝行さんの気さくな人柄がそのまま反映されたような、肩ひじを張らずアートの世界に没頭できる場所だ。

代田橋駅から徒歩10分ほど歩いた、昭和の風情漂う和泉明店街 沖縄タウンのはずれにひっそりと佇む店舗は、かつて床屋だった場所を改装したもの。その面影を残す大きなガラス扉と、店先でくるくると回る可愛らしいサインポールが来た人をあたたかく迎えてくれる。

お店に入ってすぐの中央の平台には新しく入荷した本が置かれている
オンラインでの販売を経て、実店舗がオープンしたのは2020年。「当時、好きな本は国内で手に入らず海外から直接購入していました。そうした体験も重なって、自分の好きな本を販売したいと思うようになったんです」と、オーナーの小林さんは語る。
ラインナップの中心を洋書のビジュアルアートブックにした理由は、「写真集などのビジュアルで伝わる本は、見る人の国籍に関係なく同じ感覚でその魅力を共有することができるから」だという。



店内の本の約7割を小林さんが厳選した、気鋭アーティストの作品集やファッションブック、ZINEなどの新刊が占める。売れ筋や市場の動向に沿った本よりも、小林さんが本当にお客さんにおすすめしたいと思ったものだけが店頭に並ぶのだ。
「新刊の魅力は評価がまだ定まっていないところ。誰も見たことないようなものを、お客さんに紹介できることが面白いです」と小林さん。


左 新刊・古書がともに入り混じる本棚には、細江英公や深瀬昌久など、著名な写真家たちの作品集もラインナップされている。右 ファッションコーナーを彩るのは、ミリタリー古着ファン必見の『NAVY GEAR』などの新刊から、フランスの伝説的雑誌『purple』の前身となる『purple prose』といった滅多に出会えない希少なヴィンテージ誌の姿も
一方で、残りの3割を占める古書は、お客さんからの買い取りが中心だ。あえてコントロールの及ばない本が流れ込んでくることで、自身の好みにとらわれない「いいバランスがお店の中で生まれている」と言う。


左 写真コーナーに面出しされていたのは、フランス人の現代アーティスト、ソフィ・カルの作品集。「ソフィ・カルの本は装丁などのデザインもかっこいいんです」と小林さん。右 ZINEは、レコードの掘り出しものを探すような感覚で手に取れるのが楽しいポイント。エネルギッシュで個性的な作品がたくさん
アートブックの敷居を下げ、1人でも気軽に入れる店にしたいという想いから、あえて「ゆるい雰囲気」を意識した店づくりを行っているそう。8畳ほどの店内に置かれた棚は、ファッション、アート、写真、ZINEというあえてざっくりとしたカテゴリーで分けられており、宝探し感覚で本を探すことができる。


展示の際は、壁の棚を移動して作品が飾られる。
壁には、過去に展示したアーティストの作品や、記念に書かれた文字やグラフィックが
不定期で開催される若手アーティストの展示やコラボレーション、移動型のZINE販売イベント「flotsam ZINES tour」といったクリエイターとの繋がりから生まれる企画も見逃せない。


2005年に編集者の佐藤俊さんによって東京で設立されたクリエイティブ・レーベル兼プラットフォームの「loosejoint」による企画、”LOOSE JOINTS FIELD NOTES”の第一弾として制作されたTシャツが現在公式オンラインショップにて販売中。デザインは山田悠太朗さんが手がけた。 ¥13,200
お店との親和性やスペース上の都合で取り扱うことができなかった持ち込みのZINEを、他の形で出すことはできないかと思ったことがきっかけで始まったという「flotsam ZINES tour」。「まだ活躍する前のクリエイターであっても、多くの熱量が集まればすごく面白いものになると思ったんですよね。だからまずは『売りたい』と思っている人をたくさん募り、それをしっかり届ける場所を作れば、自ずと人も集まってくるんじゃないかと考えたのがきっかけです」と小林さん。イベントは今年5年目を迎え、年々巡回地や参加作家の規模が拡大している。
好奇心を刺激するクリエイティブな空間で、肩の力を抜いてアートの世界に没頭してみてはいかが?
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—— 装苑読者におすすめの3冊 ——

OWNER
小林 孝行さん
おしゃれでアーティスティックな
あなたへ
オーナーの小林さんが『装苑』を読むあなたにおすすめの3冊をピックアップ。

『the construction』M!DOR!
¥5,500 888ブックス刊
文化女子大学(現・文化学園大学)出身のコラージュ作家、M!DOR! さんによる初の作品集。ロシア・アヴァンギャルド的な要素を原点に、多国籍・多年代の素材を組み合わせて独自の世界観を生み出すM!DOR!さんのこれまでの作品から、モダンなテイストの作品を中心にセレクトされた一冊。

『Nusa』山本昌男
¥9,900 iikki books
写真家・山本昌男さんと作曲家・音楽家の内田輝さんによる三部作からなる共同プロジェクトの最終章。光をテーマとした『Sasanami』、闇へと移行した『Kurayami』を経て、本作ではその二つが持つ両義性へと回帰する。北海道を舞台に、氷と周囲の風景が写真と音声で記録された。
日本ではまだあまり知られていないかもしれませんが、海外では高い評価を受けている写真家です。とても素晴らしい作品です

『Impossible Island』HENRY ROY
¥11,000 Loose Joints / the Art Gallery of Western Australia
フランス系ハイチ人アーティスト Henry Roy(アンリ・ロア)の写真集。写真、テキスト、映像を通じて、ロアの独自の世界観に触れることができる。
アンリ・ロアは元々、『Purple』をはじめ様々なファッション雑誌ファッション誌を中心に活躍していた写真家。とてもかっこいい写真を撮るので、装苑の読者の方におすすめです
INFORMATION
flotsam books(フロットサムブックス)
場所:東京都杉並区和泉1-10-7
営業時間:14:00〜20:00
休業日:水曜日
Instagram:@flotsambooks
WEB:https://flotsambooks.com/