前田敦子×根本宗子 似た者同士の二人がおしゃべり!
映画『もっと超越した所へ。』や恋愛観について

自分じゃない人を知りたいという気持ちが好きだから、恋愛を楽しいと思えるところがあります。――根本宗子

若くて元気なときに恋愛するのもいいのでは?――前田敦子

――10代・20代の若者の間では「恋愛って疲れる」という声も多く聞きますが、おふたりはどう捉えていますか?

根本たしかに疲れますが、生きていくうえで“無駄”って楽しくないですか? 無駄を省いて仕事だけしている状態になると退屈ですよね。10代・20代の今の時期に恋愛をすること、その無駄こそが楽しいんじゃないかな?と思います。恋愛って、家族以外の人と一番密にコミュニケーションをとるところじゃないですか。友だち以上にさらけ出せる相手だし、向こうにとってもそうだからケンカをしてしまったり色々ないざこざが生まれるときもある。でもそれを経て、自分と他者との距離感が決まっていく気がします。
 私自身、恋愛自体が好きというより、自分じゃない人を知りたいという気持ちが好きだから、恋愛を楽しいと思えるところがあります。「似てる」と思って付き合いだしても全く違うところもあって、そういった部分を理解しようとするのが面白い。今回、映画用に台本を書き直して「あの頃は元気だったな」と思いました。

前田わかります。元気がないと恋愛できないですよね。私はいま親になって息子がいるので愛情が分散されて、そういった意味では落ち着いちゃっているから、若くて元気なときに恋愛するのもいいのでは?と思います。とか言って、いざ恋愛が始まったら突っ走っちゃうかもしれませんが(笑)。
 若いときの元気は若いときにしかないし、ここでパワフルに解放できなかったら、年齢が上がったときにそのやり方がわかんなくなっちゃう気がします。その先の人生の楽しみ方が変わるというか。

根本若いときだから許されるっていうのもありますしね。

前田そう思います。若いときにとことん落ち込んで乗り越えられた経験って気持ちがいいし、それって恋愛じゃないとできない。「死んじゃうかもしれない。息ができない」というくらい落ち込むけど、それを越えて「あっもう大丈夫だ私」と思えたときに成長を実感できる。

根本人の家の前で一回ぐらい大泣きとかした方がいいですよね(笑)。

前田そう、パニックになった方がいい(笑)。ピンポンしてもなんで出ないの⁉みたいに(笑)。ここまで狂ったことができちゃうの⁉って自分に驚くと思います。そこが劇場みたいになっちゃったりして。

根本開演しちゃう(笑)。そういう自分を見せられる相手がいることで安心感も生まれますよね。甘えすぎて狂ってしまってはいけないけど、ある程度気を許せる相手がいないとひとりで溜め込んでしまってしんどいでしょうし。

前田「私、この人のこと好きかも!」と思える瞬間って楽しいですよね。

根本この映画を観て、恋愛を疑似体験するのもいいのかも。例えば観終えた後に、自分がどんなことを一緒に見た人に話すのかでも、恋愛したときの自分がわかる気がする。

前田自分が玄関の前で泣く女か、裸足で走る女かの自己診断のために使う……それ面白いですね(笑)。自分の本質を見つけられる映画なんじゃないでしょうか。

根本実際、もっとヤバい人と付き合ってる人っていっぱいいると思います。映画って役者さんの愛嬌もあるし、みんなで笑える方向に作っていきますが、現実の場合はマジで笑えない。自分を見つめ直すきっかけになればと思います。

前田いまの若い世代が観たらどう思うんでしょうね。気になる。

根本私はこれまで「若者のリアルを切り取る」ってさんざん言われてきましたが、どんどん若くなくなってきていまの20代のリアルはもう切り取れない。その辺りを、山岸監督がすごくうまく料理してくださったと感じています。広く多くの方に観ていただくうえで非常にありがたかったです。

Atsusko Maeda ● 1991年生まれ、千葉県出身。AKB48のメンバーとして活躍し、2012年に卒業。市川準監督作品『あしたの私のつくり方』(’07年)で映画デビュー。’11年、映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(監督:田中誠)で初主演。近年の主な出演作に、『町田くんの世界』(監督:石井裕也)、『旅のおわり世界のはじまり』(監督:黒沢清)、『葬式の名人』(監督:樋口尚文)、『くれなずめ』(監督:松居大悟)、『DIVOC-12「睡眠倶楽部のすすめ」』(監督:加藤拓人)、舞台「NODA・MAP第24回公演『フェイクスピア』」、ミュージカル「夜の女たち」など。WOWOWにて放送・配信された「アクターズ・ショート・フィルム2」で短編映画『理解される体力』(脚本:根本宗子)の監督を務めた。

Shuko Nemoto ● 1989年生まれ、東京都出身。劇作家、演出家。19歳で劇団、月刊「根本宗子」を旗揚げ。以降、劇団公演全作の作・演出を手がけるほか、プロデュース公演の作・演出も担当。近年は、様々なアーティストとのタッグで完全オリジナルの音楽劇を多く手がける。2022年6月からは、俳優の安川まりとのタッグで新作を育てる上演方法による公演「新しい試み」をスタート。’23年1月より、新作舞台『宝飾時計』が上演される。’21年発表のSNSミュージカルドラマ『20歳の花』で、「第25回 文化庁メディア芸術祭」エンターテインメント部門 新人賞を受賞。

前田さん着用:ジャケットロンパース¥56,100、ハイウエストパンツ¥38,500、ベルト¥25,300 すべてFUMIE  TANAKA(4K TEL:03-5464-6061)/ ピアス¥19,800 NOMG / リング¥5,300 UWAKRIM(エスタードジャパン TEL:03-5413-4807) / その他スタイリスト私物

『もっと超越した所へ。』
WEB : https://happinet-phantom.com/mottochouetsu/
Instagram:@ mottochouetsumv
Twitter:@ mottochouetsumv


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