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横浜流星インタビュー 
真摯に歩んで辿りついた11年目の境地

 俳優は、特殊な職業だ。スクリーンや画面の中では常に他者を演じ、人気俳優ともなればあずかり知らぬところでパブリックイメージが確立されていくもの。ただ、こと横浜流星においては、1本のブレない線を貫こうとしているように映る。本人の諸所での発言や、藤井道人や李相日といった監督たちのコメント、或いは自身が取材時などに受けた印象――様々な情報を総合すると、風雨にさらされながらも自らが信じた道を頑なに突き進む表現者の姿が立ち上がってくるのだ。

 装苑では、発売中の2022年11月号と「装苑オンライン」の2形態で横浜流星にインタビュー。最新主演映画『線は、僕を描く』(10月21日公開)を軸に、彼が思う「オリジナリティ」について語ってもらった。

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / styling : Shogo Ito (sitor) / hair & make up : Taichi Nagase (VANITES) / interview & text : SYO

映画『線は、僕を描く』
大学生の青山霜介(横浜流星)は、アルバイト先の絵画展設営現場で、ある水墨画に惹きつけられる。その場所で巨匠・篠田湖山(三浦友和)に声をかけられて水墨画を学ぶことになり、湖山の弟子であり孫の水墨画家、篠田千瑛(清原果耶)にも出会う。類まれな才能を持ちながらスランプ状態の千瑛は、霜介の存在に刺激を受け始める。霜介もまた初めての水墨画に戸惑いつつ、その世界に魅了されていくが、彼にはある悲しい過去があった。青春を水墨画に捧げる若者たちを瑞々しく描く。

小泉徳宏監督、横浜流星、清原果耶ほか出演。10月21日(金)より全国公開予定。東宝配給。 ©砥上裕將/講談社 ©2022映画『線は、僕を描く』製作委員会 

――『アキラとあきら』の際にもお話しされていましたが、作品によって横浜さんが大切にされるナチュラル寄りな演技と、求められる芝居のタイプがズレることはあるかと思います。どのようにすり合わせを行っているのでしょうか?

 そこはずっと悩んでいるところです。やればやるほどわからなくなるし、正解がないものでもありますし。『線は、僕を描く』でも、最初に小泉徳宏監督に「すごくいいんだけど、ちょっと単館っぽい」と言われて、それってどういうことなんだろうと考え込んでしまいました。ただ単に大きく表現するのも違うし、どういう風にやればいいんだろう……って。

――おっしゃる通り、メジャー大作=わかりやすくするという単純な話でもないですもんね……。
因数分解するのが大変そうです。

 そうですね。僕は霜介(そうすけ)を陰に暗く捉えすぎてしまっているところがあったので、もう少し普通の青年なんだよなと考えるようにしました。過去の事件は霜介の心に影を落としているけど、結構時間が経っているし、その間に人間も変わっていく。霜介の内面の人間性をブラッシュアップして、落ち着かせていきました。

映画『線は、僕を描く』より

瞬間、瞬間に生じる自分の感情の部分を大事にしています。

――作品の中でも触れられますが、表現におけるオリジナリティについてぜひお話を聞かせてください。演出家や監督からのリクエストがあり、それに己の表現で応えていく部分も多いかと思いますが、横浜さんは今現在オリジナリティをどう捉えていますか?

 芝居におけるオリジナリティって、すごく難しいもの。僕は、あえて「こうしよう」を作らないようにしているかもしれません。自分と監督や共演者では全く違うから決めすぎず、瞬間、瞬間に生じる自分の感情の部分を大事にしています。作品や役においては、行動よりも感情を大切にしています。

――横浜さんは幼少期より空手を経験されていますが、武芸や書道などは上世代から教えられ学び、自身のオリジナリティを確立していくものかなと思います。

 確かに空手をやっているときは、それが当たり前のように思っていました。だからこそ、芝居においても「学ばせていただきます」という精神で、全部取り入れたうえで自分が必要とするものを抽出できたらと思ってやってきました。

 少し前までは、とにかく監督を信じて取り組む、という感じで。監督から言われた「これをやってほしい」にちょっと違和感があっても、まずはその通りに信じて演じる。それを重ね、経験を積んで少しずつ自分の中でわかってきたこともあるので、取り組み方のスタンスも変わってきています。

――その「変化」は、もう少し“我”を出すというか、自分の意見を主張するようになった、というものでしょうか。

 僕はどの現場でも監督や座組を信じてやっていますが、演じる役を一番愛しているのはやっぱり自分でありたい。役の一番の理解者も僕ですし、そうでなければならないと思っています。

 たとえば先ほどお話しした、霜介を演じる際の演技の大小もそうです。小泉監督は音をすごく大事にされる方で、声のボリュームや高さを気にされていて。演出に合わせて霜介の声を高くしたり大きくしたりしましたが、「普通に過ごしていたらそうしないよな」と思う僕もいるんです。霜介が日常にいたら……という“リアル”と、ご覧になる皆さんにわかってもらうための“エンタメ”のバランスをとれるように、監督と話し合って探していきました。

 監督の意見が強すぎたり、逆に俳優部が強く言ってそれがOKされちゃうのは現場のあり方としてあまりよくないと思うんです。お互いの譲れないところをちゃんと話し合ってぶつかって、最終的にちょうどいい落としどころにたどり着くことがものづくりには必要だと思うので、すごく大事な時間でした。

共演者と芝居をしていくなかで予測していなかった初めての感情に出合える瞬間がある。

――作品を良いものにするため、変に遠慮することなく監督たちともまっすぐにぶつかっていく。

 そうなれたのは、つい最近だと思います。求められているものを無我夢中にやって、少しずつ自分のやりたいものもできるようになって作品の幅が広がって――。いまは、もっともっと芝居を学びたい気持ちが強い。最近やっと一つ上のステップに行けた感覚があります。

 僕はいつも自分とは別の人を演じていますが、とはいえ役の器は自分ですし“横浜流星”は意識のどこかにいるもの。それが、監督の演出を受けて、共演者と芝居をしていくなかで予測していなかった初めての感情に出合える瞬間がある。そんなとき『その人物になれたんだ』と感じられて、すごく幸せだなと感じます。ただ、まだなかなかそこまでの領域に達せていない。だから、もっともっと深く追求していきたいです。

――先ほどの武芸の話ではないですが、師匠がいないからこそ、自分で探していかなければならない部分も多いですよね、きっと。

 もちろん現場で監督や俳優の先輩方から学ばせていただくことは本当にたくさんありますが、師匠的な存在かと言われるとまた別です。これまでずっと一緒にやってきている藤井(道人)監督(『青の帰り道』『新聞記者』ほか)も、恩師というより仲間という感覚です。

 導いてくれる人がいないぶん自分で探すしかないから、インプットは大事にしています。映画をたくさん観たり人となるべく交流したり……そういうものがないと自分のキャパはどんどん狭くなってしまう。特にいま、コロナ禍ということもあって体験をする機会が減ってしまっているので、よりインプットの重要性を感じます。

――日々ご多忙かと思いますが、その中で意識的に容量を広げようとされているのですね。

 ただ、インプットしよう!と思いすぎると義務的になってしまうので、バランスは気を付けています。僕は役者仲間よりは高校の同級生といることが多く、みんなそれぞれ職業も性格も違うので話を聞くだけでも色々と得るものがあるんです。高校の仲間と会う時間はリフレッシュにもなるし、仕事としてもインプットできる時間なのですごく大切にしています。

――確かに、往々にして役者が演じる役は役者以外ですから、フィールドワークにもなりますね。映画のインプットについてですが、先日お話を伺った際は、藤井監督からオススメリストを共有されたと話されていました。

 はい。いま観ているものも藤井さんにオススメされた作品なのですが、配信ドラマ 『ザ・ボーイズ』です。最初は「藤井さんがヒーローものを観るの⁉」と意外だったのですが「ダマされたと思って観て」と言われて観たら、こういう切り口かと(笑)。

――腐敗したヒーローを倒そうとする一般人たちの話ですからね(笑)。

 まんまとハマってしまい、インプットというより楽しく娯楽として鑑賞しています。あとインプットでいうと、小説を大量に買いました。『海神(わだつみ)』(著:染井為人)や、友だちに薦められた『慟哭』(著:貫井徳郎)――あと、李相日監督(『流浪の月』)から薦められた三島由紀夫シリーズです。

――なかなかにハード系なラインナップですね(笑)。

 そうですね(笑)。いまはこれらが手元にあるので、時間が空いたときに全部読もうと思っています。

Ryusei Yokohama ● 1996年生まれ、神奈川県出身。2011年俳優デビュー。2022年は、本作『線は、僕を描く』のほか、主演作『嘘喰い』、『流浪の月』、W主演作『アキラとあきら』が公開となり、TBS×ハリウッド共同制作日曜劇場ドラマ「DCU」に出演、Netflixシリーズ「新聞記者」が配信。待機作に映画『ヴィレッジ』(2023年公開予定)など。また、2023年2月には舞台『巌流島』が上演。

『線は、僕を描く』
WEB : https://senboku-movie.jp/
Instagram :@ senboku_movie
Twitter : @senboku_movie

横浜さん着用:レザージャケット¥456,500、Tシャツ¥42,900、パンツ¥86,900 マルニ (マルニ ジャパン クライアントサービス)


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