過ぎゆく時間に抗っている感覚が強くあって、それがたまらなかったです――杉咲花

――衣装についても伺えればと思いますが、どのように決めていったのでしょう。たとえば杉咲さんっぽさをどれくらい入れたのかなどバランスやコンセプトについて教えて下さい。

松居：僕の組の撮影が最後だったので、もうできることの手かずがなくて……。

杉咲：そんなことないですよ！（笑）

松居：衣装合わせでも「それは他のエピソードでやってます」と言われちゃったりして、差異を付けるのが大変でした。第1話が赤い衣装になったのも、そうした理由からです（笑）。

杉咲：そんな消去法みたいに言わないでください（笑）。第1話は古着っぽいテイストでしたよね。

松居：そうそう。高円寺・下北沢っぽい服にしようとは話しましたね。

杉咲：回によっては、スタイリストさんが私が普段着ているブランドの洋服を用意してくださったり、リメイクのワンピースを作ってくださったりもしたのですが、全てのイメージを自分に寄せていったわけではなく、普段とは違ったテイストの衣装もありました。

第1話「丸いもの」より

――改めて、杉咲さんは松居組に参加していかがでしたか？

杉咲：過ぎゆく時間に抗っている感覚が強くあって、それがたまらなかったです。松居さんの作品では、特別なことが起こりますよね。『くれなずめ』でもまさにそんなシーンがあったと思うのですが、そういった特別なことが「時間への抵抗」であると私は感じていて、松居組に参加させてもらっている実感につながっていました。

　第1話の撮影時、楽しげに演奏をするシーンになるのかなと思っていた場面で、本番直前に少しの間、松居さんと目が合ったんです。クランクアップ間近だったこともあり、その視線から、松居さんの「ここに閉じ込めるんだ」という熱を感じてぐっと来てしまいました。そしてそのシーンでは、私自身も大好きな曲を目の前で萌歌ちゃんが歌っていたこともあり、なんだかとても感動してしまって、泣きそうになりながら演じていました。刹那的な時間の特別さを感じて幸せでしたし、終わってほしくないと思いました。クランクアップした瞬間だけ松居さんが「うおいっ！」と今までで一番大きな声を出していて「あぁ終わるんだな」と余計に寂しさに包まれました。

　あと、撮影初日が終わった後に松居さんに「撮影楽しかったです」と伝えたら「明日はもっと楽しく」と言ってくださったのも嬉しかったです。自分の中で「コインランドリーのシーンが上手くいかなかったらどうしよう」と不安だったのですが、松居さんが愛のあるまなざしで切り取って下さっているからそれがユーモアになっていて、温かさを感じました。

松居：そんなこと言ってた？恥ずかしいです……。

杉咲：（笑）。

――杉咲さんが話された「時間に抗う感じ」、非常によくわかります。

松居：映像を演出するなかで「時間」というものがすごく面白いんです。実時間の5秒を30分くらいで描くこともできれば、10年の歳月をパッと飛ばすこともできる。だからこそ、「1日」を描くというルールがあるなかで、どこをどう引き延ばすかが「撮休」シリーズを撮る楽しみ方なのかな？と思っていました。ただ、三宅さんの作品を観たら5年前の回想シーンが入ってて……（笑）。

杉咲：（笑）。

松居：さっきの階層の話ではないですが、見ているところが各クリエイターで全く違うんです。そうか、もっと自由で良かったんだと気づけました（笑）。

杉咲さん着用：ジャケット￥44,000、パンツ￥25,000　CONTEMPO（YAECA HOME STORE） / サンダル￥52,800（FOOTWORKS）/ Tシャツ、ソックス　私物

Hana Sugisaki ● 主な出演作に、映画『湯を沸かすほどの熱い愛』、ドラマ「花のち晴れ～花男Next Season～」、NHK連続テレビ小説「おちょやん」でのヒロイン、竹井千代役など。2022年は、NHKドラマ「プリズム」や、劇場アニメ『ぼくらのよあけ』（声の出演）に出演。待機作に、映画『大名倒産』（6月23日公開予定）。

Daigo Matsui ● 2012年、『アフロ田中』で長編映画監督デビュー。主な監督作に『自分の事ばかりで情けなくなるよ』（’13年）、『私たちのハァハァ』（’15年）、『アズミ・ハルコは行方不明』（’16年）、『アイスと雨音』（’18年）、『くれなずめ』『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』（ともに’21年）、『ちょっと思い出しただけ』『手』（ともに’22年）。

「杉咲花の撮休」
WEB :  https://www.wowow.co.jp/drama/original/satsukyu4/

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