近年、ますます人気が高まってきている、ロンドンを拠点としたブランドROKH。2023年春夏コレクション発表後に装苑オンラインでも春夏の注目として紹介している。日常、普遍的な要素にエッセンスを加えたスタイルはブランドが得意とするデザインのひとつで、切込みの入ったジャケットやドレス、トレンチコートのディテールをモチーフにしたスカート、コートとドレスのドッキングルックなどが際立っていた。先日、「コンバース×ドーバー ストリート マーケット ギンザ」とのトリプルコラボレーションアイテムのお披露目のために、久しぶりに来日したというデザイナーのロク・ファンさんに今シーズンのクリエイションやコンセプトに関していくつかのコメントをもらった。
ーロクのブランドコンセプトを教えてください
第一に、エレガントであるということが必須条件です。そして、アーティスティックなアプローチやエッジの効いたディテールデザイン、職人技とカッティングがミックスしているコレクションがロクのブランドストーリーとなっています。私たちはエレガントさと同時に現代的なパッションや若々しいエネルギーをデザインに落とし込みたいと思っています。その絶妙なバランスを保つことが、提案する私たちのミッションだと気づきました。
ーデザインのインスピレーションはどこから得ているのですか?
私たちの服は、私が想像する女性たちに着てもらいたいという思いがあり、着る人にとって合理的(目的と合っているという捉え方)にデザインをしているということが前提にあります。そのインスピレーションは日常生活での女性の服装を細かに観察することにあります。リアルなファッションに実験的なエッセンスやディテールを試していくことを考えています。ただ、そうしていくうちに新しい方向性やアイデアが見えてきて、シフト変更をすることもあるんですけどね。現実的で身近なドキュメンタリーの日常からヒントを得ることが、ロクにとっての合理的なファッションを提案できる基盤になっているのです。
ー’23年SSのコレクションテーマは?
春夏のテーマは“The Irrational View(不合理な見方、理不尽な見解)”です。不合理というと、ブランドのコンセプトに対して逆の意味にとられてしまうかもしれませんが、実際の着心地や視覚的な感覚の合理性に対して、シルエットやカッティングなどのプロセスが不合理(面白い作法という考え)であると捉えたタイトルにしているのです。
(左)ファーストルック
ー不合理とは、どのような部分を意識されていることなのですか
毎シーズン、私たちはカッティングの新しい方法を取り入れることを試み、そして再解釈しています。例えば象徴的なトレンチコートやテーラリングを新しいデザインや新しいカットで再構築するなど、既存のものにひねりを加えることが好きなのです。また、素材や色についても、様々な異なるベージュなどを選択して、ワントーンのグラデーションを組み合わせたりします。ベーシックな美しさの中にトリッキーなあしらい、そして新しいテクスチャーを加えているのです。
ファーストルックはそれが集約されている1着だと思います。エレガント&ハードでとても男性的な雰囲気を加味しています。それは美しさの中にも強さをプレゼンテーションしたかったので、とても柔軟で伝統的な方法のテーラリングを構築したのです。ちなみに、このファーストルックのブラとジャケットは離れているわけではなく、ひとつのアイテムになるよう独特なカッティングを採用しています。このように男性的と女性的な部分のコントラストとバランスを保ち、エレガントなフォームを研究したのです。
ー先ほどの答えにありました、ロクさんの想像する女性像とはどのようなイメージですか?
今を生きていて、自立し、強さを持っている女性。さらに感謝する心や芸術的なものに関心を持っているなど、自身の興味にまっすぐ向き合っているような女性が理想です。また、ファッションデザインの遊び心や個性を楽しんでくれて、大胆な服も勇気を持って着用してしまうような勇敢な女性のイメージです。
ー有観客でのランウェイも復活させることができ、改めて感じていることはありますか?
2017年に初めてのプレゼンテーションを行いました。2019年以降、デジタルでの発信が主になっているメゾンも多いと思いますが、ロクのショーはリアルで行うことが重要だと感じました。デジタルでは実際に触れられるほど近くで見ることや、メゾンの世界観を体験することはできません。まだコロナ禍と言われる時期ではありますが、昔からブランドを愛してくれている顧客の方とか、コレクションを発表することで、新たに興味を持ってくれる方々などが増えて、業界はよりアクティブになってきていると感じています。
現在、パリでコレクションを発表していますが、住んでいるのはロンドンです。どちらの都市でも、常にファッションの新しい動き、ムーブメントは誕生し、とてもエネルギーに満ち溢れています。もしかしたら、以前よりもエネルギーが強くなっているかもしれません。私たちもそんな街の日常から、多くのパワーをもらっているのです。
ー日本へは何度か来日されたことはありますか?
仕事で何度か日本へ来ていますが、パンデミック後は今回が初になります。でも、初めて日本に来たのは高校生の時なんです。友達と観光ガイドブックも持たずに歩き回っていたので、すぐ迷子になりました(笑)また、お城のような所に入ったものの、大きい公園のように緑がたくさんあって・・・長い時間うろついてしまい、ゲートが閉まったという思い出もあります。今思うと、明治神宮だったと思います。当時はティーンエイジャーだったので、どんなことも楽しめました。それが大きな思い出ですね。
今回は短い滞在になりますが、この仕事が終わったら、滞在最後日に箱根へ行こうと思います。
ロク・ファン
韓国・ソウル生まれ、アメリカ・オースティン育ち。セントラル・セント・マーチンを卒業後、フィービー・ファイロ率いるセリーヌなどを経て2017年にブランドをスタート。ロンドンを拠点とし、パリでコレクションを発表している。
ROKH
Instagram:@rokhofficial
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