『装苑』2026年9月号より掲載

デザイン、音楽、アート、テクノロジー、あらゆる分野の壁が融解しつつある現代において、時代のゲームチェンジャーとなるのは、軽快に「越境」を繰り返すクリエイターたち。異なる視点を掛け合わせることで生まれる、新しいクリエイティブの可能性とは?
TaiTan
photographs : josui yasuda(B.P.B.)
interview & text : Mizuki Kanno
ジャンルを越境するクリエイターたち🔻
ラッパー、ポッドキャスター、クリエイティブディレクター。複数の肩書を軽やかに行き来するTaiTanの表現の源流は、すべて「言葉」にある。原点は2020年、コロナ禍で全予定が白紙になった末に選んだ、ポッドキャストという武器。
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「つまらなさ」をハックし、
言葉の加工で遊び場を作る
言葉の加工で遊び場を作る

「僕の活動は複数あるけれど、どれも言葉の加工を変えて出力しているにすぎません。映像を作れるわけでも、デザインを組めるわけでもない自分が、唯一生成できるのは言葉だけ。例えばラップならそのフォーマットに合わせて言葉を書き出すし、ポッドキャストなら相方の玉置(周啓)くんに合わせて言葉のタネを仕込んでいく。企画業も根本はプレゼンテーションなので、『これやったら面白くないですか?』という提案を、どの角度、どのタイミングで投げるか。だけど、それを出力する僕の脳みそは一つなので、根底にある軸は変わりません」

ポッドキャスト番組「奇奇怪怪」のパーソナリティ二人をモチーフにした"ぬい"。「可愛いものが好きなんですよ」と話すTaiTanさん。
TaiTan×玉置周啓のフリースタイル
トーク番組「奇奇怪怪」
彼の言葉を駆動させるのは、世の中の慣習に対するニヒルな視線だ。
「子どもの頃から超ひねくれ者。自分にフィットしない違和感に蓋をしない『つまらなさに対して敏感であること』を大事にしています。ただ、水を差すだけだと単なる皮肉屋で終わってしまうので、『僕だったらこうしたい』という代替案を提示するようにしています」
彼の発想の根源には、全員を巻き込めるプレイグラウンド(遊び場)を作りたいという目的がある。その象徴が、ラジオ番組「脳盗」から派生したイベント「盗」だ。
「ラジオでは『キーワードをつぶやいてくれたら5名さまにまんじゅうあげます』みたいなプレゼントキャンペーンが、いまだに根強いカルチャーとしてあって。でも、自分はそんなポストをしたいと思わないし、それが誰かに刺さるとも思えない。どうせならリスナーが能動的に参加したいと思わせる仕組みにしたい。だから、『あげるよ』を『盗んでいいよ』と言い換えてみたんです。それをコンセプトにショップを作ってみたら、初年度から4時間待ちの行列になった。スイッチを1個変えるだけで世界はパッと変わる。そのポイントを常に探しています。でも勝算がないと絶対にやらないんで、勝率が51対49と上回るまで動かない。僕の感覚では、ビジネスあってこそのクリエイティブなので、チーム編成やお金の調達を含め、自由に何かを生み出せる環境づくりこそ大切なんです」

体験型イベント「盗-TOH-」。音を立てなければ、会場内に置かれた商品をなんでも盗めるというイベントで、音の感知には、ラジオ局で使われずに眠っていた高感度マイクを再利用した。
軽快な行動力と冷静なロジックを併せ持ち、彼は複数性の中で仕掛け続ける。
「人間は常に複数の人格を生きているから、単一の何かであることなんてあり得ない。世間は『何者かになりたい』という共感概念が強すぎるから切迫感が生まれちゃうと思うんですけど、まあ気にしなくていいんじゃない? やりたいことを、とことんやればいいだけだと思います」

コンビニ型ポップアップショップ「PINPIN MART」は、「奇奇怪怪」の5周年を記念して期間限定でオープン。
オリジナルのポテトチップスやアパレル、フィギュアにガチャガチャまで幅広くラインナップ。

A24の映画『スマッシング・マシーン』とコラボレーションしたプロテインバー。
TaiTan(タイタン)
1993年生まれ。ヒップホップユニットDos Monosのラッパー、クリエイティブディレクター。新しくできたポッドキャストスタジオ「TANAMAX」には、言葉を生業とする人々が集い、棚卸しのための言葉で満たされる場所にしたいという思いが込められている。











