長屋晴子(緑黄色社会)
【おしゃべりしたい音楽のこと CHATTING MUSIC Vol.05】

現在発売中の『装苑』5月号企画「7人の女の子が着る、春夏7つのキーワード。」
にご登場いただきました長屋晴子さん。
「もっと大胆な柄」をキーワードに、デザイン性が高くて強い個性を
感じさせる柄が魅力の3ポーズを美しく着こなして表現していただきました。
装苑ONLINEでは、そんな長屋さんに、緑黄色社会の新曲『陽はまた昇るから』や
音楽のことをおしゃべりしていただきました!

緑黄色社会が5thシングル『陽はまた昇るから』を4月20日にリリースする。表題曲は、4月公開の『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の主題歌。子どもにも楽しめる明るさやわかりやすさの中に、大人にも染み入るエモーションが秘められた、国民的アニメにピッタリな楽曲だ。今年は、バンド結成10周年を迎える節目でもある。飛躍に向かって走り続けるバンドを代表して、長屋晴子(Vo/G)に話を聞いた。

interview&text: Miho Takahashi

――緑黄色社会は、1月にアルバム『Actor』をリリースして、4月にシングル『陽はまた昇るから』をリリースするということで。お忙しいですよね。

ハイペースだと思われますよね(笑)。でも緑黄色社会は、メンバー全員が作詞作曲するので、意外とそんなに忙しくはなかったりします。きっと、ひとりが作詞作曲をやっていたら、すごい大変だと思うんですけど。

――今回の「陽はまた昇るから」を、長屋さんご自身は、どんな楽曲だと思っていらっしゃいますか?

『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』の主題歌ということで書き下ろさせていただきました。『クレヨンしんちゃん』の映画って、幅広い年齢の方が観るじゃないですか。子どもはもちろん、子どもと一緒に親も観るし。そういうところで、より広く届けられる楽曲になったと思っています。あとは今まで、自分たち目線で楽曲を書くことが多かったんですけど、初めてしゃがみ込んで子どもたちの目線に合わせながら書けましたね。

――今までも緑黄色社会は、幅広い楽曲を生み出してきたと思うんですが、子どもにも向けた楽曲、子ども向けの作品のタイアップって、手掛けたことはあったんでしょうか。

それがなくって。結果として、子どもにも聴いてもらえる楽曲になったものはあったんですけど。楽曲を作る時から、子どもが聴いてくれるところまで想像したのは初めてですね。

――そこに難しさを感じたのか、逆に意外と向いていると感じたのか、いかがでしたか?

「陽はまた昇るから」の作曲は穴見(真吾・B)で、作詞は小林(壱誓・G)なんですが、子ども相手だとしても、伝えていることは私たちが納得していることだし、大人も子どもも関係なく、人間に届けると思っているので。だから、大きく変えた点としては口調とかですかね。伝え方が違うだけというか。

――歌に関しては、モードチェンジはしましたか?

私は基本的に、リファレンスによってこういうふうに歌おうっていうのはあまり考えていなくって。曲とか歌詞に引っ張られながら、知らない間に自分が変わっていることが多いんですよ。今回で言うと、わかりやすい言葉遣いや優しい口調なので、歌のおねえさんみたいな気持ちで歌っていましたね(笑)。

――もともと長屋さんは明るい声質だから、歌のおねえさんが似合いますよね。

ほんとですか?よかったです。

――ハンドクラップやコーラスもふんだんに取り入れられているし、《チクタク》《ラララ》みたいに、小さな子どもでも口ずさめる言葉がちりばめられていて、わかりやすいっていう意味でのポップソングだと思いました。

そうですね。歌詞のわかりやすさもありつつ、理解しなくても聴いた感じだけでワクワクできることって、すごく大事だと思っていて。なんかワクワクする、その“なんか”を大事にしました。コーラスだったり、手拍子だったり。やっぱり、『クレヨンしんちゃん』って、特に映画は冒険するお話が多いので、冒険心を表現する楽曲にしたかったんですよね。

――まさにイントロ、歌い出しから陽が昇る感じがしますもんね。

あれは、作曲者の真吾と、アレンジャーの川口(圭太)さんのアイディアですけど、まさにがまた昇っていく感じがしますよね。デモの段階では、歌詞が載っていなかったんですよ。でも、仮タイトルがすでに『はまた昇る』だったんです。それもあって、ああいうアレンジになっていったというか。音で内容を表現した感じがしますね。

――ヴォーカリストとしても、あそこでガッとギアが入るのかなと思ったのですが。徐々にテンションを上げていくのではなく、歌い出しから上がるタイプの楽曲なのかなって。

あのイントロって、音数は少ないのに明るく聴こえる、不思議なパワーがある気がします。ほんと、スイッチが切り替わる感覚はありますね。

――この楽曲に限らずですけれど、緑黄色社会は歌詞やメロディやアレンジ、どこかひとつを強調するのではなく、すべてをシンクロさせながら世界観を伝えていると思っていて。そこは、日ごろから大切にされているのでしょうか。

やっぱり、どの要素もこだわりたい気持ちはありますね。あと、作る段階が分かれているっていうのは大きいかもしれません。今回の「陽はまた昇るから」に関しては、作曲があって、それを聴いたうえで作詞して、それを聴いたうえでアレンジしていくっていう3段階があったので。ひとつの作業に込める時間も長かったり、想いも強かったりします。

――今回の作曲は穴見さんですけれど、作曲した方がアレンジを固めてくるパターンはありますか?

人によりますかね。真吾は、わりと自分でアレンジもやりますけど、私やpeppe(key)は弾き語りみたいな状態でみんなに投げることもありますし。あとは楽曲にもよるのかな。

――ちなみに、なぜ今回の楽曲は、作曲が穴見さん、作詞が小林さんのタッグになったんですか?

まず、『クレヨンしんちゃん』の映画を担当させてもらえるというお話があって。そこに向けて、全員が曲を書き始めたんですよ。そして、最初に真吾がみんなに曲を投げたのかな。作詞に関しては、壱誓がやるよ、って立候補してくれました。

――穴見さんと小林さんの新しい面が、「陽はまた昇るから」によって引き出されたとは、メンバーとして思っていらっしゃいます?

真吾に関しては、普段からワクワクする曲を作るのが得意なので、新しいというよりは、真吾の曲の特徴がマッチしたと思っています。壱誓の作詞は、『クレヨンしんちゃん』だからこそ出てくるワードや、優しい口調もあるので、引き出されたところは大きいと思いますね。

――今回の新たな挑戦は、これからの緑黄色社会の創作にも生かされていくと思いますか?

そうですね。子どものことも思って楽曲を作るのが初めてだったので。そういう楽曲を作ろうと思うことで、自分の思想が広がったりするんですよ。子どもの頃を思い返すきっかけにもなりましたし。そういう意味では、今後もこういう楽曲を作っていきたいと思っています。

――今までも、緑黄色社会の中に、老若男女に楽曲を聴いてほしい想いはあったんですよね。

そういう打ち合わせみたいなことはしてはいなかったんですけれど、バンドを組んだ頃から、みんな口を揃えて、国民的な存在になりたいって言っていたんです。本当に偶然なんですけど、そういうマインドを持った4人が集まったというか。今も、その目標を掲げながら活動できていて。それこそ『クレヨンしんちゃん』は、国民的な作品じゃないですか。なので、そこに近づけた気がしますし、これからも幅広い層に届ける音楽を作っていきたいです。

――広く、遠くまで届きそうな「陽はまた昇るから」が1曲目で。でも2曲目には、パーソナルに捉えられる「時のいたずら」が入っている。このバランスがいいと思ったんですが、長屋さんが作詞作曲した「時のいたずら」は、どんなきっかけで生まれたのでしょうか。

実はこの楽曲、ちょっとだけ形が違った状態で、2年前からワンコーラス存在していて。それを今のマインドで書き直したんですよ。2年前は、時間というものの有限、いつか終わってしまうんだっていうことを書いていたんですけど。今年、緑黄色社会は結成10周年なんですよ。そういう節目だからこそ、今一度自分たちの音楽を考えたというか。私で言うと、歌う意味を考えて、プラス、時間の有限というところにテーマを変えて書き直したんですね。

――この楽曲、すごく今の緑黄色社会や今の世の中のことを歌っているように感じたので、2年前から存在していたというお話は少し意外でした。

大きくは変わってはいないんですけど、2年前の次のフェーズに行けたという解釈ができるかもしれないですね。2年前は、すべてのものは終わってしまうからこそ愛おしく感じるという、有限だからこその大切さまでを歌っていたんですけれど。今は、いつか私の存在もなくなってしまうし、緑黄色社会の存在もなくなってしまうんだけれど、だからこそ、ずっと歌っていきたいなっていう思想にいけたんですよね。

――どうしても思ってしまうのは、コロナ禍じゃないですか。《歌を歌えば君が笑う/君が笑えば僕は歌う》という一節が、すごく心に響いて。そういう、シンプルなコミュニケーションが尊いものに感じられた2年間だったと思うんです。長屋さんご自身は、そういう状況を重ね合わせながら歌ったところはありますか。

直接的にコロナのことを思って書いたわけではないんですけれど、やっぱり、この2年間は、歌に対する想いが変動したところはあったので、自然と反映されているとは思います。あと、「時のいたずら」で言っていることって、すごくシンプルじゃないですか。シンプルなものって、ありきたりなものとして届いてしまうかもしれないですよね。特に、今まで私たちはこういう楽曲を作ってこなかったから。でも、10年やってきて、ここでシンプルなものを出すことに意味があるのかなって。初心に帰る、じゃないですけど、アレンジも歌詞もシンプルだからこそ、飾らずに素の自分で伝えるっていうことを大事にしました。

――シンプルなものって、逆に初期は難しくなかったですか?

そうですね。初期は、人と違うことをしたいっていう気持ちもあって。シンプルに歌うこと、自分の素直な気持ちを出すことって、恥ずかしかったんですよ。実際、伝わりにくいような歌詞を書いていたこともありましたし。でも、だからこそ今シンプルな歌詞を歌えるんですよね。そこに恥ずかしい気持ちもなくなって、自信を持って言えるというか。シンプルな言葉って、一歩間違えれば違う角度で届いてしまったりするじゃないですか。心の成長を経て、そういうことを伝えられるマインドになってきたと思います。

――この10年で、変化したところと、変わっていないところ、それぞれ挙げていただくとしたら、どこになるでしょうか。

変化したところでいうと、届けたいメッセージですかね。それまでは、出口が見えなくて葛藤することが多すぎたりして、歌詞でもひたすら悩んでいて。それを、さっき言ったみたいに、ぼかして書いたりしたんですけれど。でもやっぱり、ある程度いろんな経験をしてきて、答えも見つけられるようになってきて。ちゃんと、答えを出せる楽曲も作れるようになってきたのは、大きく変わったところなのかなって。楽曲の説得力みたいなところですかね。同じメッセージを歌っていたとしても、その人の経験が浅かったら、薄っぺらい表現になってしまうこともあると思うんですよ。そういう意味では、今、ちゃんと伝えられるような年齢になってきたので、そんな言葉をこれからも残していきたいと思っています。

――具体的に、どんな答えが見つかったと思いますか。

素直であることって、何においても、すごく大事なんだなって。届けたいメッセージをまっすぐ素直に届けることも大事だし、そもそも音楽を楽しむことも大事だし、メンバーに迷っている気持ちを恥ずかしがらずに打ち明けることも大事だし。人と人との関係性は、人として生まれた以上ついてくるものじゃないですか。すべてがうまくいく秘訣って、素直であることなのかなって思えるようになったっていうか。10年っていう長い月日を経て、そういう境地にまで行けたと思います。そもそも、家族以外と10年いることってすごいと思うんです。まず、そこをみんなでおめでとう!これからもよろしく!ってしたいですね。

――では、変わっていないところを挙げていただくとすると?

基本的には変わらない部分のほうが多いと思います。メンバーの関係性とかも、本当に変わらないというか。高校生のテンション感のまま、音楽を続けられていますし。

――そういう楽しさ、ピュアなところがブレずにやってこれているのは、すごくバンドとして大事な気がしますね。

ほんっとにそう思います。楽しさがなくなってしまったら、音楽を続けられないんじゃないかなって思うし。仮に楽しくない状態で音楽を続けていても、届くものも届かないというか。

――そこが変わらずにいられるのは、なぜなんでしょうね。高校生からの10年、しかもデビューもあってっていうと、環境としては本当に激動だったと思うんですよ。

もちろん、みんな成長はあって。メンタル的にも強くなったり、できることが増えたり。あとは、この10年の間に、拠点が名古屋から東京に変わったり。そういうことはあるんですけど、もともとのメンバーの人間性に助けられているというか。たとえば、上京してきて東京にかぶれてしまう、みたいなタイプがうちのメンバーにはいなかったんですよね。だから、こういう関係性のままでやっていられるのかなって思います。

――長屋さん自身も、東京や、いろんな状況に流されずに、自分を保てるタイプですか?

そうですね。というか、そもそも私はあまり家から出ないので(笑)。まだ東京の地名や駅もわからないぐらいなんですよ。

――音楽が楽しく、やりやすくできるなら、どこでもいいと思っていらっしゃるというか。

まさに、今はどこでも音楽ができると思うんですけど、私たちの場合は、東京のほうが円滑にできるよねっていう意味を込めて上京したので。なんか、東京かっけー!みたいな(笑)、ミーハーな気持ちというよりは、自分たちのスキルアップを求めて上京したんですよね。

――最初に集まった時は、そんな感覚が共通している4人だと見定めていたわけではないと思うのですが、結果的として本当によかったですね。

ほんっとに恵まれましたね。

――その気持ちは、楽曲にも落とし込まれていますよね。いつも音は弾んでいるし、メロディはキラキラしていて。どんなに洗練されても、そこは変わらないという。

そうですね。キラキラした曲にしようとか、意識はしていないんですけど、楽しんでいるからこそ、そうなっていくんだと思います。

――緑黄色社会のファッションも、音楽性と通じている気がするんです。長屋さんは、個性的なものも、まるでスタンダードのように着こなす力がある方だと思っていて。それは、楽曲でも感じることなんですよね。

やっぱり、ファッションと音楽は密接に結びついていると思っていて。スタイリストさんとのやり取りの中で、自分たちが発する言葉やテンション感が、スタイリングに反映されている気はします。ずっと同じスタイリストさんなので、私たちのファッションのらしさみたいなものもできあがってきていて。そういうのも楽しいなって思いますね。

――10年を経たからこその洗練と、10年を経ても変わらないきらめきが、いちばん躍動している姿を見られるのは、やはりライブですよね。ツアーもはじまりますし。

そうですね。今回のツアーが、自分たち史上最大規模なんです。キャパもホールで大きくなりますし、初めて行く場所も多いんです。そういう意味でも、自分たちが掲げていた国民的というところにも近づけている実感がありますし、すごく楽しみです。

――1月アルバム、3月からツアー、4月シングルと、加速している10周年ですが、このまま走り続けるのでしょうか。

がんばります!まだ発表できていないこともありますし、いろいろ楽しみにしていてほしいですね。待っていてください。

合わせてチェック!
長屋さんにご登場いただいている『装苑』5月号の詳しい内容はこちら企画「7人女の子が着る、春夏7つのキーワード。」の撮影裏側のスペシャル動画はこちらをチェック!


緑黄色社会
Vo.長屋晴子、Gt.小林壱誓、Ba.穴見真吾、Key.peppeから成る、愛知県出身の4人組バンド。通称リョクシャカ。2013年に10代のアーティストによるロックフェス『閃光ライオット』準優勝をきっかけに本格的に活動開始。‘18年に1stアルバム『緑黄色社会』をリリースし、以来、映画・ドラマ、アニメなどの主題歌を多数手がけて一躍人気に。’20年の2ndアルバム『SINGALONG』は様々なランキングで一位を獲得し、リード曲「Mela!」は継続的な人気でストリーミング再生数は一億回を超える。バンド結成10周年を迎えた今年は、1月に3rdアルバム『Actor』を、4月20日にはシングル「陽はまた昇るから」とリリース予定。現在は、6月18日(土)まで続く、緑黄色社会史上最大規模の全国ホールツアー「Actor tour 2022」の真っ最中!
公式サイト:https://www.ryokushaka.com/
Instagram:@ryokushaka_official 
Twitter:@ryokushaka    
YouTube:https://www.youtube.com/c/ryokuoushokushakai

緑黄色社会
5th SINGLE「陽はまた昇るから」
¥3,900 Sony Music Labels
「陽はまた昇るから」というタイトルが頷ける、子どもから大人まで、誰をも照らす太陽のような楽曲。わかりやすい言葉や、すぐに口ずさめる言葉をちりばめながらも、洗練されたアレンジに抜かりはない。一方でカップリングは、一人ひとりの心に寄り添い、道しるべとなる星のような、シリアス且つ温かい「時のいたずら」。両極に思えるけれど、どちらにおいても、結成10周年を迎えて更に輝き続ける緑黄色社会を映し出している。
配信リンク:https://erj.lnk.to/hmnks5

おしゃべりしたい音楽のこと CHATTING MUSIC
Vol.01 さとうもか はこちら
Vol.02 Maika Loubté はこちら
Vol.03 水曜日のカンパネラ はこちら
Vol.04 ELAIZA はこちら

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