『装苑』2026年9月号より掲載

デザイン、音楽、アート、テクノロジー、あらゆる分野の壁が融解しつつある現代において、時代のゲームチェンジャーとなるのは、軽快に「越境」を繰り返すクリエイターたち。異なる視点を掛け合わせることで生まれる、新しいクリエイティブの可能性とは?
YUKI
photographs : josui yasuda(B.P.B.)
interview & text : Mizuki Kanno
ジャンルを越境するクリエイターたち🔻
モデルとして活動を送る一方、独学で習得した3DCGを武器に、XGやNumber_iをはじめとする多彩なアーティストのMVやVJを手がけるその経歴は、極めて異色だ。18歳まで高校野球に没頭し、会社員を経てモデル、そしてヴィンテージショップの経営へ。「自分の人生はまさに紆余曲折(笑)。それが今、一つにつながった」と語る彼が、3DCGを学び始めた背景には、アートへの憧れと地元への強い思いがあった。
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異色のキャリアを背景に、
デジタルと生身を行き来する
デジタルと生身を行き来する

「もともと小さい頃からものづくりや絵を描くことが好きで、コロナ禍でスケッチを色々描き始めたのが始まりです。空山基さんやジェフ・クーンズさん、GUCCIMAZEさんたちの作品にとても影響を受けて、自分も挑戦してみようと思ったんです。もう一つは、ヴィンテージショップを始めた最初の目的でもあった地元・秋田への恩返し。東京で仕入れをしながら、地元でポップアップやイベントをやって街を活性化させたくて、そのフライヤーやグッズを作るために、独学で(3DCGソフトの)Blenderを学びました。今日着ているTシャツのモチーフが、初めて作ったロゴなんです」


上 「Watson ONE MAN LIVE “TOKUSHIMA” at アスティとくしま」で使用されたVJ映像。ラッパー、Watsonのキャラクターが札束を積んだ車に乗り、徳島県のシンボルである大鳴門橋を疾走する姿をモチーフに制作。 下 VJ映像の制作風景。3DCG作成ソフトウェア「Blender」を使い、シーンオブジェクトの造形からアニメーション、ライティング、カメラワークに至るまで丁寧に作り込む。
そんな彼の作品のベースには、幼少期からたしなんできた「書道」の時間も流れている。
「落ち着きのない子どもだったんで、親に書道を始めさせられて。しばらく離れていたんですけど、これもコロナ禍のタイミングで再開しました。書道と3DCGの掛け合わせも、自分の作品の個性だと思います」

Issei Uno Fifth「CHA CHA 愛 feat. LEX, JP THE WAVY」のリリックビデオ。3匹のオリジナルキャラクターが宇宙や異世界を旅するストーリーを軸に、ポップでカラフルな世界観で表現した。
表現の「内側」と「外側」を一人で往復する独自のスタイルは、「撮られる側」と「作る側」の両方の視点を得ることにつながり、彼の身体観に進化をもたらした。
「CGをやり始めたことで、モデルとしてカメラの前に立つ際もライティングなどを気にするようになりました。カメラ位置や光の当たり方、その時の感情など、目に見えない部分まで考えるようになったんです。逆に自分で編集する側になると、『昔の自分は何も考えずに動いちゃっていたな、編集する人はすごく大変だっただろうな』ってヒヤヒヤしたり(笑)。確実に作用し合っています」

(上)44 LABEL GROUP 2022-’23年秋冬コレクション。ミラノ・ファッションウィークにて。
(下)Within Destruction「CYBERGIRL」のMVでは、デジタル世界に生きる少女に思いを寄せる青年役を演じた。このほか、俳優としてアーティストのMVにも多数出演している。

ラッパー、WatsonのワンマンライブでのVJ制作を経て、3DCGアーティストとして生きていく決意が固まったというYUKIが、見据えているのはさらにその先だ。
「今はデジタル上でしか作品が残っていないので、時間とともに忘れ去られてしまうかもしれないという寂しさがあります。なので3Dプリンターを使って、手に触れたり体験ができるフィジカルなものを作っていきたい。書道と3DCGを掛け合わせたジュエリーを作ったり、自分が作ったキャラクターを立体化していきたいと考えています」
ユウキ
1998年生まれ、秋田県出身。3DCGアーティスト、映像ディレクター。広告やMVのモデリングからアニメーション、演出までを一貫して手がける。3DCGと身体表現との融合にも取り組み、表現の新たな可能性を探求している。
Instagram: @yuki35__









