Mei Semones(メイ・シモネス)
【CHATTING MUSIC おしゃべりしたい音楽のこと vol.22】

米国ミシガン州アナーバー出身で、日本人の母を持つシンガーソングライター、Mei Semones(芽依シモネス)。

2025年のFUJI ROCK FESTIVALにて、初出演のレッドマーキーステージに5000人の聴衆を集めた彼女が、英語、日本語を併用した歌詞とジャズとボサノヴァにインスパイアされたインディJ-POPサウンドに彩られた初のフルアルバム『ANIMARU』について語ってくれた。

photographs: Jun Tsuchiya(B.P.B.) / interview & text: Yu Onoda

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(日本人である)母が紅白歌合戦やミュージックステーションをよく見ていたので、小さい頃は時々J-POPを聞いたりはしていたんですけど、私の音楽がいわゆるJ-POPに似ているかというとそう思っていなくて。ただ、アメリカだとJ-POPと呼べば、日本語の歌詞が入っている音楽だと分かってくれるから

4歳からクラシカルピアノのレッスンを取っていて、11歳でギターにスイッチして、ロックっぽい音楽を弾くようになったり、ロックバンドに入ったりして。高校の時もロックバンドで活動しつつ、ジャズのプログラムでジャズギターを勉強するようになりました

ボサノバもジャズと同じ時期、高校のジャズプログラムでジョアン・ジルベルトやアントニオ・カルロス・ジョビンなどのボサノバのスタンダードを弾き始めて、すごく気に入りました。ポルトガル語も綺麗な言語で歌ってみたいと思い、それが自分の音楽にも入ってきました

私は全然スコアとか作っていなくて、全部携帯でボイスメモをするだけで、それをバンドに送って、みんなで一緒に演奏する感じです。かなり自然な感じで出てきていると思います。曲のストラクチャーを考えすぎると自然さがなくなってしまうと思うので、自分が気持ちいいと感じるようにやっています

例えば、アルバム1曲目「Dumb Feeling」はギターリックで始まるんですけど、そのリックはジャズサックス奏者のチャーリー・パーカーのフレーズとジャズスタンダードの「Polka Dots And Moonbeams」のメロディを一緒にして作ったもの。それから「ザリガニ」はサックス奏者のジョン・コルトレーンのソロから移し換えたフレーズを長く引き延ばして作ったもの。「Norwegian Shag」もジャズスタンダードのコードを三つ使って、それを拡張して作った曲だったりします

私は生まれたときから日本語と英語の両方を話しているので、自分の音楽にも両方を使った方が自分らしいと思ったからです。英語だけだとちょっと違うし、日本語だけでもちょっと違うので、両方使った方が自然な感じがします

子供の頃、1年に1回くらい日本に来て、おばあちゃんの家に行って、日本の友達と遊んだり、日本の学校に行ってたりしたんですけど、例えば、アメリカには“おはぎ”や“上履き”はないし、日本語じゃなきゃ書けないことが結構あるなって。あと、歌詞に関して、私は日本語でも英語でもストレートに歌詞を書くようにしていて。英語はもっと難しく書こうと思ったらできるんですけど、難しく書くのが好きじゃなくて、私の歌詞は全部ストレートだし、シンプルだなと思います

私はアメリカで育ったので日本語が完璧ではなく、もし日本語がもっと上手だったらメロディと言葉の合わせ方をもっと気にすると思いますが、日本語が完璧ではないからあまり気にしていません。何となくハマればそれでいいという感じで、あまり意識していないというか、それが逆に面白いのかもしれないですね

私は両方の言語がわかるので、日本語がわからない人がどう聞こえているかはよくわかりませんが、音楽が一番大事なので言葉の意味がわからなくても気持ちは伝わっていると思います。言葉の意味がわからなくても聞いていて楽しいとか嬉しいという気持ちがあるのではないかと思います

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あまり深く考えていません。本当にシンプルに自分が好きな曲を作りたいだけで、楽しければそれでいい、自分が弾いて楽しければそれでOKという考えです。“Be honest with yourself”というのかな、自分と向き合って、正直でいることが一番大事で、そうすれば、みんな分かってくれるんじゃないかなって

ライブではいろんなファンと話したりしますが、プライベートでは一人でいることが多いです。家でギター練習をしたり、作曲したり、YouTubeを見たり。音楽以外の趣味としては、時々漫画を読んだり村上春樹の本を読んだりしています。ニューヨークでは普通はいろんなクラブや賑やかな場所に行く人が多いと思いますが、私はずっと家にいる感じの人です。でも、例えば、ニューヨークに住んでいて、楽しいことを考えながら書いた「Dumb Feeling」は電車が出てきたりもするし、「Rat With Wings」はニューヨークに住んでいると頻繁に遭遇するネズミが出てきたりとか(笑)、目の前の日常を曲にしていますね

母がアートを作ってくれると私の個性がちゃんと出てくる感じがします。ビジュアルからの影響はあまり受けていないと思いますが(笑)、母は私のことをよく知っているし、それが作品に表れていると思っています

自分が好きな音楽を作り続けたいです。ジャンルのことはあまり考えないようにして、本当に自分が好きな音楽を作れば面白い音楽ができると思います。でもスタイルはきっとだんだん変わっていくんじゃないかな。これからもたくさん練習して、いろんなソロやスタンダードを勉強したいので、それによって、影響を受けて変わっていくと思います

芽生シモネス
米国ミシガン州アナーバー出身。日本人の母を持ち、4歳でピアノを始め、11歳でエレクトリック・ギターに転向。バークリー音楽大学でジャズを中心にギター演奏を学んだ。数枚のシングルとEPをリリースし、2022年にニューヨークへ拠点を移す。‘24年春にリリースしたEP『Kabutomushi』で、Rolling Stoneの「Artist You Need to Know」やPasteの「Best of What’s Next」に選ばれる。今年5月には初のフルアルバム『Animaru』をリリースし、この夏には苗場FUJI ROCK FESTIVAL’25に出演し話題に。来たる、’26年1月に大阪、名古屋、東京でのライブも決定した。これからが楽しみなシンガーソングライターの一人。
2026年1月には全国6都市を巡る『JAPAN TOUR 2026』を開催予定で、2月1日の東京での追加公演(9月13日に一般発売開始)も決定!さらにMEN I TRUSTのサポートとして彼らと共に大阪、名古屋、東京を巡るツアー「EQUUS JAPAN TOUR」も開催する。

公式サイト:https://www.meisemones.com/
ジャパン・オフィシャル・サイト:https://bignothing.net/meisemones.html
Instgaram @mei_semones
TikTok @meisemones
YouTube @meisemones


Mei Semones
『ANIMARU』

CD ¥2,750 BIG NOTHING / ULTRA VIBE

「後先考えず、また考えすぎないこと。私が望む生き方は、自分にとって大切なことをすること。そして、誰もがそう生きるべきだと思う」と語るメイシモネスが、自身の直感に深い信頼を寄せてつくりあげた作品。これまで以上に冒険的で、傷つきやすく、自信に満ちたサウンドが詰まっている。芽衣と5人編成のバンドメンバーとで、2024年の夏にネチカット州の農場にあるスタジオでレコーディングしたという、彼女らしい“自然体”から生まれた10曲を収録。


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