
スマホを置いて、本を開く時間は、どこかの誰かの考えや世界に触れながら、
自分自身の感性とも向き合える豊かなひととき。
今回は、ファッションやアート、カルチャーを愛する装苑読者におすすめしたい、
東京の個性あふれるブックショップをご紹介。
店主やスタッフの方に、とっておきの3冊をセレクトしていただきました。
本との出合いは、新しい価値観や創作のヒントをもたらしてくれるはず。
世界を広げてくれる一冊を探しに、街の本屋へ出かけてみませんか?
photographs : Norifumi Fukuda (B.P.B.)
/ text : SO-EN
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アジア・クィア・ZINEが交差する
東中野のカルチャースペース
JR東中野駅のホームから、お店の真っ赤なドアが見えるほど、アクセスのいい場所にある書店「platform3」。西口改札を出てすぐ左手のビルを上がり、4階のドアを開けると、そこにはLGBTQ+やジェンダー、セクシュアリティを巡る「クィア」をテーマにした書籍をはじめ、韓国、台湾、香港、タイなど、一般的な書店ではなかなか出会えないアジア各地の出版物が並ぶ。


ソファや長椅子に座りゆったりと時間を過ごせる店内で、ディープなラインナップを眺めているだけでも好奇心がくすぐられるこの場所は、「ロンリネス・ブックス」と「(TT) press」という2つの出版レーベルによって運営されている。

ロンリネス・ブックスは元々、グラフィックデザイナーの潟見陽(かたみ よう)さんが新宿・大久保の自宅を予約制の本屋として解放したことから始まった。多国籍な街の空気感を反映し、アジア各地のクィア、ジェンダー、フェミニズム、連帯にまつわる本やZINEを集めていた潟見さんは、いつでもアクセス可能な書店として、実店舗を持ちたいと考えていた。
そこへ現れたのが、出版ユニット(TT) pressの丹澤弘行(たんざわ ひろゆき)さんと、ともまつりかさん。二人が制作する「孤独な夜」をテーマにしたインタビューZINE『Sleepless in Tokyo』で潟見さんを取材した縁がきっかけとなり、この書店「platform3」が誕生したという。


アジアの書籍を多様に扱いながらも、特におすすめしたいというタイの魅力について、ともまつさんはこう話す。
「元々タイの音楽シーンに注目していたのですが、コロナ禍でタイドラマの面白さに目覚め、そこから毎年現地へ行くようになりました。カルチャーはもちろん、人々の温かさも魅力的でもっと知りたくなったんです。今ではメンバー全員がタイに魅了されていて、現地のアートブックフェア『printPRINT』にも一緒に参加しました。そこでの出会いから出版につながった本もあります」

また、ラインナップのもう一つの特徴であるZINEについては、「表現の安全圏」としての側面に注目しているという。
「SNSやインターネットは拡散力がある一方で、誰に届くかわからない。その点、ZINEは広がりが小さい分、届けたい人に届けられます。自分のアイデンティティや、これまで表に出してこなかったものを表現するのに、向いているメディアだと思います」と潟見さん。
店に並ぶZINEは、オーナーたちが実際に作り手と顔を合わせ、交流するなかで選んだものも多い。どんな人が、どんな思いでつくったのか。その背景にも思いを馳せながら、普段はなかなか触れることのできない、どこかの誰かの感性や心のひだに触れてみるのもおすすめだ。



また、「platform3」では、映画の上映会やトークイベント、ライブ、個展など、毎週のように催しが開かれている。映画監督を招いて短編作品の上映とトークを行ったり、台湾のボードゲームでみんなで遊んだり。本だけでなく、さまざまな形で人と人が出会い、交流できる場所を目指している。
イベント情報は、グラフィックデザイナーの潟見さんがInstagramで発信中。思わず目を留めてしまう魅力的なビジュアルも楽しみのひとつなので、次はどんなイベントが開かれるのか、ぜひチェックしてみてほしい。



2026年でオープンから2年。店を構えるまで、東中野のことをあまり知らなかったという丹澤さんは、「駅前にはミニシアターがあるし、周辺にはおいしい定食を出す飲食店もあったりして、おもしろい街なんだなということが分かってきました。同じビルの2階には詩に特化した書店ができるなど、これから街を盛り上げようとしている人もたくさんいる。ぜひ一度、東中野という街に遊びに来てほしいです」と話す。
クィアコミュニティのリアルや、アジア各国のカルチャーの息づかいに触れられる「platform3」へ。東中野の街歩きの目的地に訪れてみては?
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—— 装苑読者におすすめの3冊 ——

左から潟見陽さん、丹澤弘行さん、ともまつりかさん
何気ない日常の記録から、
新しい視点を見つけられる本
オーナーの3人が『装苑』を読むあなたにおすすめの3冊をピックアップ。

『Pointillism』KOONG
¥2,800 (TT)press
バンコクのイラストレーター、KOONGさんによるグラフィックノベル集。デーンとクラームという同性カップルの何気ない日常を描いたコミックで、日本語版限定の書き下ろしエピソードも収録。
誰もが共感できるようなユニバーサルな感情を描いているので、ゲイコミックやBLといったジャンルの枠組みにとらわれず、多様な方に手に取ってほしい一冊です(丹澤さん)

『A CURIOUS GUIDE TO THE NEIGHBOURHOOD : SONGKHLA OLD TOWN』
¥5,600
タイ南部・ソンクラー旧市街のタイ語と英語のバイリンガルガイドブック。著者が2年以上かけて行った、8歳から80代まで140人以上のインタビューをまとめた一冊。
実は、ソンクラーは2025年の年末に洪水があった地域で、今はもうなくなってしまった店も載っています。でも、そうしたものを残しておけるのも、本の良さだと思うんです(ともまつさん)

『悲しい話は今はおしまい』
小沼理 ¥1,870 柏書房
文筆家・小沼理さんによる最新エッセイ集。著者が日々の暮らしの中で出会った人々や出来事、社会の様々な動きに対して抱いた思考や感情を、独自の温かな視点で綴っている。
小沼さんはここにもよく来てくださっていて、本の中にはplatform3のエピソードだったり、僕たちと一緒にソウルに行ったときの話も出てくるので、場所とあわせて楽しんでもらえたら嬉しいです」(潟見さん)