
Le Palais Galliera「Tisser, broder, sublimer. Les savoir-faire de la mode」より。左は、1925年頃のイブニングドレス。リュネヴィル刺繍による花の装飾が宝石のように輝く。右は、森英恵による1985–’86年秋冬のアンサンブル。スパンコールやビーズを組み合わせた刺繍が豪華。
刺繍、レース、羽根細工――。華やかな装飾を施したドレスはランウェイやレッドカーペットを彩り、時代を超えて人々を魅了してきました。その舞台裏を支える職人技にスポットライトを当てた展覧会「織る、刺繍する、昇華させる。モードのサヴォアフェール(Tisser, broder, sublimer. Les savoir-faire de la mode)」が、パリのガリエラ宮で開催されています。


クリストバル・バレンシアガによる1947年春夏のイブニングドレスとボレロのアンサンブル。立体的な花刺繍を施した大胆なデザインの作品は、当時の前衛的な美意識と高度な職人技が込められている。


シャネル 2019年春夏オートクチュールコレクションより。カール・ラガーフェルドが手がけた最後のオートクチュールの作品。18世紀の装飾芸術から着想を得ている。3D技術を用いた刺繍はモンテックス、羽根細工はルマリエによるもの。
ADのあとに記事が続きます
ADのあとに記事が続きます
タイトルに使われている「サヴォアフェール(savoir-faire)」は、近年、特に耳にする言葉。フランス語で「savoir」は「知る」、「faire」は「行う、作る」を意味し、英語の「ノウハウ(know-how)」と訳されることもありますが、今回のようなファッションの文脈においては「経験の中で培われた能力や技能」を指します。


左:コム デ ギャルソン 2015年春夏のアンサンブル。異素材を重ねた構築的なシルエットの中に、ロマンティックな表情を見せている。右:ドリス ヴァン ノッテン 2023–’24年秋冬のルック。インド・コルカタの職人により、生地の裏側のような独創的な糸刺繍が施されている。


左:1905〜’15年頃のハンドバッグ。ガラスビーズで可憐な花柄が描かれている。右:1790年頃のポシェット。花とリーフの模様は、シルク糸を用いたチェーンステッチによるもの。


1815年頃、メゾン・プラネスの宮廷衣装用刺繍サンプル。カネティーユ(コイル状金属糸)やスパンコールによるエレガントな花刺繍が、黒いベルベットに生える。1850年頃のミテーヌ(指なし手袋)。


左:ヨウジヤマモト 1997年春夏のアンサンブル。オパール加工を施した花柄のベルベットとモスリンで構成され、質感と色のコントラストが詩的なムードを生み出している。右:1922〜’24年頃のイブニングドレス。精緻な波模様はガラスビーズを用いたリュネヴィル刺繍で作られている。
本展では、普遍的に愛されてきたフラワーモチーフを軸に、サヴォアフェールを装飾技法ごとに紹介。18世紀から現代までの衣服やアクセサリーを通して、その豊かさを紐解きます。


アレッサンドロ・ミケーレによるグッチ 2016年クルーズコレクションのドレス。コットンの機械レースに、ガラスビーズ、ラメ糸、アップリケなどの多様な素材が配置されている。ユニークな虎や蛇のモチーフが印象的。



1815年頃のコットンモスリンのドレス。18世紀末に新古典主義と古代への関心が高まり、より簡素で洗練されたスタイルが登場。白地に白糸で刺繍を施した「ホワイト刺繍」は、19世紀における刺繍入りランジェリーの大流行を予示するものとなった。
二つ目の展示空間「クラフトのギャラリー」では、フランスが誇るメティエダール(伝統技術による熟練した仕事)をアトリエ別に解説。シャネルが傘下に収める刺繍工房のルサージュ(LESAGE)、羽根細工と花細工のルマリエ(LEMARIÉ)、ジュエルボタンのデリュ(DESRUES)など、高度な職人技術に特化したコーナーが並び、普段はなかなか目にすることのないデザイン画や仕事道具も公開されています。


「デリュ」によるジュエルボタンのデザイン画と様々な時代のボタン類(1900〜’90年頃)。ファッションにおける装飾パーツとしてのボタンの重要性が示されている。

ユベール・ド・ジバンシィによる1988年春夏オートクチュールのウェディングドレス。花細工のルマリエによるスズランの造花で全面が覆い尽くされ、ドレス自体が花束のような雰囲気になっている。


クリストバル・バレンシアガによる1968年春夏オートクチュールのイブニングドレス。テキスタイルデザイナーのアレクサンドル・サッシュが手がけたダイナミックなバラの絵がプリントのモチーフに。
オートクチュールのドレスはもちろん、コム デ ギャルソン、ヨウジヤマモト、ドリス ヴァン ノッテンといった人気ブランドの作品も豊富に展示され、見応えもたっぷり。装飾芸術の視点からファッションを捉えることで、その魅力の奥深さに気づかされます。


左:カール・ラガーフェルドによるシャネル 2026年春夏オートクチュールのアンサンブル。刺繍工房のユレルとプリーツ工房のロニオンが製作。その横にはユレルの刺繍サンプル(1910〜’22年頃)が展示される。右:ルサージュが手がけたブエ姉妹のドレス(1925〜’26年頃)。18世紀のパニエや第二帝政期のクリノリンを想起させる作品。

展覧会の様子。左手前は、コム デ ギャルソン 2016–17年秋冬のドレス。18世紀のムードとパンクの精神を重ね合わせたようなアバンギャルドな一着で、本展を象徴する存在となっている。
● Tisser, broder, sublimer. Les savoir-faire de la mode
「織る、刺繍する、昇華させる。モードのサヴォアフェール」展
2026年10月18日まで。
Le Palais Galliera
10 av. Pierre 1er de Serbie 75116 Paris
オフィシャルサイト
Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris