
「Balenciaga by Demna」展より。
パリのケリング本社で、デムナ自身がキュレーションを手がけた展覧会「バレンシアガ バイ デムナ(Balenciaga by Demna)」が開催されています。

2016年にケリングとバレンシアガが本社を構えた旧ラエネック病院。この敷地内にあるクロワ・エスト礼拝堂で展覧会を開催している。
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2015年からバレンシアガ(BALENCIAGA)を率いてきたデムナ(Demna)は、今月9日のコレクション発表をもって退任し、グッチへ移籍することが決まっています。そんな節目に、これまでの10年を総括するエキシビションが企画されました。
展示は、過去のショーのインビテーションから始まり、続くのはデムナが抜粋した100点以上のルックやアクセサリー。現代のワードローブを通じたラグジュアリーの再定義など、これまでの重要なコンセプトやテーマに焦点を当て、創造のビジョンの変遷を辿ります。








奇想天外なインビテーションの数々。2022年春はレシート風、2022年秋はビデオカセットがインビテーションになった。2022年冬は使用済みiphone 6を使用。2023年夏は財布のインビテーションで、フェイクのお札やコイン、IDカードなども入っている。2024年秋はメタル製のエナジーバー。2024年冬はeBayの古い小包。金色の針と糸(51st couture)とパタンナーが使うパターンウエイト(53rd couture)はクチュールコレクションから。
中には、約18年前にデムナがバレンシアガのインターンシップに応募し、不採用となった際のメールのコピーもあり、彼のデザイナー人生の歩みを象徴しているかのようです。

バレンシアガがデムナに送ったインターンシップ不採用のメール。
「もしこのとき採用されていたら、今とはまったく違うキャリアを積んでいたと思う」とデムナ。

2016年冬の砂時計シルエットのスーツ。まるで生きているかのような人形は、デムナの常連モデルでアーティストのエリザ・ダグラス(Eliza Douglas)を再現している。
また、アーティストとのコラボレーションも見どころのひとつ。たとえば、2022年夏の「レッドカーペット」のショーでデムナが着用したラストルックは、アメリカ人アーティストのマーク・ジェンキンス(Mark Jenkins)によって実物大の人型彫刻として再構築されました。展示品のうち50点は、デムナ本人による音声ガイド付きなので、各作品の背景や創作意図についてをより深く知ることができます。

手前は、2024年夏のウエディングドレス。ヴィンテージのウエディングドレスをアップサイクルしている。後ろは、2022年夏のショーのラストを飾ったルック。
「そう、これは僕自身。だって、ウェディングドレスで締めくくるなんて、デムナ的には古臭すぎるからね」
クリストバル・バレンシアガの時代のオートクチュールと現代のストリートウェアをつなぐ架け橋となり、一時代を築いたデムナ。そのパワフルな作品群をぜひご覧ください。


2021年秋のポリティカル・キャンペーン風のキャップと2024年冬のガムテープ風バングル。


左は、2022年春のトレンチコート。バッグは、グッチ(GUCCI)のモノグラムをバレンシアガのロゴでアレンジした「ザ ハッカー プロジェクト(The Hacker Project)」より。「グッチのバッグではない」とペイントされている。右は、52nd クチュールコレクションのハンドペイントされたトロンプルイユのファーコート。


2023年夏の革製チップス・バッグと2024年秋のハイヒール形クラッチバッグ。アメリカのアーティスト、アンドリュー・J・グリーン(Andrew J Greene)の日常的なオブジェをステンレスの支柱に載せ回転させる作品シリーズ「Timeless Symbols」に組み込んで展示。


2024年夏のホテルのスリッパ風ミュールと2024年春のタオルスカート。

手前は、2021年秋の騎士風ニーハイブーツ。後ろは、52ndクチュールコレクションのイブニングドレス。ギュピールレース製だが、カチッとした仕上がりになっている。

会場で配られていた図録はファッションマガジン風。
Balenciaga by Demna
40 rue de Sèvres, 75007 PARIS
7月9日まで。
公式サイトから要予約。
Photographs : Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris