
「Du Cœur À La Main: Dolce & Gabbana」展より。アルタ モーダ 2013年春夏 ミラノ コレクションのパニエドレス。黄金のマクラメ編みレースがゴージャス。伝統的なフィグリー技法で作られた王冠が神々しい。この傑作は、ドゥオモ(ミラノ大聖堂)の頂上に鎮座するマドンナを想起させるもの。この展覧会のシンボル的存在でもある。

展覧会の入り口。来場者を迎えるのはパリを象徴するエッフェル塔のドレス。
ミラノで成功を収めたドルチェ&ガッバーナ初の大展覧会「From the Heart to the Hands: Dolce & Gabbana(フロム ザ ハート トゥ ザ ハンズ:ドルチェ&ガッバーナ)」がパリにやってきました。フランス版のタイトルは「Du Cœur À La Main」。直訳すると“心から手へ”となり、心から生まれた情熱や想いが、手仕事によって形になるという意味が込められています。まさに、このメゾンを象徴する”Fatto a Mano(ハンドメイド)”にオマージュを捧げた展覧会なのです。


「ハンドメイド(Handmade)」の部屋。刺繍の技術を駆使し、イタリアの風景が情緒豊かに表現されている。

ビジュアル・アートや骨董品の展示も多数。この部屋の壁を飾るのはアメリカ人画家、アン・ドゥオン(Anh Duong)の絵画。上の絵には、作業をするドルチェ(ハサミを持った人)とガッバーナ(横たわる人)の姿も描かれている。
会場となったのは、4年の修復工事を経て、昨年再オープンしたグラン・パレ(Grand Palais)。もともとは1900年のパリ万博のために建設された歴史的建造物で、これまでオリンピック競技や巨匠たちのアート展など、数々の大イベントが行われてきました。


「建築と絵画(Architectural and Pictural)」の部屋。写真上左:アルタ モーダとアルタ サルトリアの2019年春夏 ミラノ ルネサンス コレクションより。モチーフはボッティチェリの『受胎告知』。下:同シーズンのアルタ モーダのドレス。ラファエロの『牧草の聖母』がクロスステッチで描かれている。
ドルチェ&ガッバーナの創業者でデザイナーのドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)とステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)が、多くのインスピレーションを得ているは自国イタリアの伝統文化や芸術。今回の展覧会では、そんな彼らが心と手を尽くすエクスクルージブなコレクションライン“アルタ モーダ(女性向けの高級仕立て服)”と“アルタ サルトリア(男性向けの高級仕立て服)”から200点を超えるシルエットが選出されました。いずれもイタリアの職人技を盛り込んだ貴重なオリジナルピース。豪華なハイジュエリーコレクション“アルタ ジョイエッレリア”やクラフト感あふれるアクセサリーも必見です。

卓越した職人技を見せるアルタ ジョイエッレリア。イタリアの歴史を物語るモチーフが使われることが多い。
1,200平米におよぶ展示場は、建築と絵画、ビザンチンのモザイク、シチリアの伝統、ガラス工芸など、ドルチェ&ガッバーナの世界を掘り下げる11のテーマ別にストーリーを展開。メゾンの心臓であるミラノのアトリエをはじめ、映画『山猫』の舞踏会シーン、華麗なオペラ座の再現もあり、二人の創造の源を探求する旅へと導きます。


写真上:「神性の夢(Dream of Divinity)」の部屋は、シチリア島の「神殿の谷」に由来。ドルチェはシチリアのパレルモ出身で、この地域の歴史も重要な着想源となっている。下:ビザンチン美術のモザイク画をテーマにした「神々しいモザイク(Divine Mosaics)」の部屋。


「シチリアの伝統(Sicilian Traditions)」の部屋。写真上:シチリアを讃えるこの空間では、カラフルな絵柄のタイルが来場者を圧倒。下:ユニークなマヨリカ焼きのヒールもお見逃しなく!
宗教的、哲学的、文化的な要素が絡み合い、独創性豊かな彼らの視点を通して語られる芸術。ファッションのみならずイタリアの“本物”を見せてくれる壮大な展覧会です。


「ホワイト・バロック(White Baroque)」の部屋。パレルモ出身の彫刻家セルポッタの作品に触発された創作。光と影、白と黒のコントラストが美しい。

「献身(Devotion)」の部屋。神秘的なインスタレーションの中央に置かれたドレスは、17世紀のバロック芸術からインスパイアされた装飾が施されている。


「アトリエ、装飾品、ボリューム (Ateliers, Ornaments, and Volumes)」の部屋。メゾンの聖域ともいえるここは、革新と伝統が融合する場所。熟練した職人たちによってドレスに命が吹き込まれる。

「山猫(The Leopard)」の部屋。ヴィスコンティの映画『山猫』(1963年)へのオマージュ。主役のドレスは、アルタ モーダ 2017-’18年秋冬 パレルモ コレクションより。


「ミラノの中心で / オペラ(In the Heart of Milan / Opera)」の部屋。著名なオペラを題材にした壮麗な作品群は、まさに圧巻。黒のローブデコルテを彩る無数のコサージュは、90歳を超える職人が手がけているのだそう。


「ガラス細工の芸術と技術(The Art and Craft of Glassworking)」の部屋は、息をのむ迫力。写真上:ヴェネチアの名高いガラス職人、バルビーニ家の宝物の鏡も展示。下:カラフルな花のドレスはクリスタル刺繍。ワイングラスを模したヒールが独創的。アルタ モーダ 2021-’22年秋冬 ヴェネチア サン・マルコ コレクションより。

キュレーターは、美術とファッションの歴史家、フロランス・ミュラー(Florence Müller)さん。
「魔法と幻想、伝説と現実が交錯するドメニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナの世界へ足を踏み入れて」

会場のグランパレ。
Du Cœur À La Main: Dolce & Gabbana
2025年3月31日(月)まで。
Grand Palais, 7 avenue Winston Churchill, 75008 Paris France
Photographs : Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris