『装苑』2026年9月号より掲載

デザイン、音楽、アート、テクノロジー、あらゆる分野の壁が融解しつつある現代において、時代のゲームチェンジャーとなるのは、軽快に「越境」を繰り返すクリエイターたち。異なる視点を掛け合わせることで生まれる、新しいクリエイティブの可能性とは?
森 洸大
photographs : josui yasuda(B.P.B.)
interview & text : Mizuki Kanno
ジャンルを越境するクリエイターたち🔻
視覚を強烈に刺激するアートワークを放ち、異形のマスクをデザインしたかと思えば、大舞台のステージから観客をアジテートする森洸大。マルチに暴れ回る彼の歩みは、実はあまりにも人間味に満ちていた。
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仲間を驚かせたい
という純粋な衝動、
その源にある”愛”と”怒り”
という純粋な衝動、
その源にある”愛”と”怒り”

「高校時代はバスケに熱中したもののプロを目指せるわけでもなく、勉強も苦手。『俺は何ができるんだろう』って悶々としていた時期、ただただ好きだったのがニューメタルバンドやSF映画の化け物じみた造形でした。中でもSlipknotにドハマりして、彼らのマスクを作っているのが日本人のアーティストだと知り、『自分もこういう表現がしたい』とバンタンデザイン研究所の特殊メイク科へ。だけど卒業後は現場に行く勇気もなくて。『何かしてやるぜ』という気持ちだけが空回りする日々を何年も過ごしていました」
不遇の時代を送る中、仲間と開いたグループ展が彼のクリエイションに刺激を与えた。
当時は、周りの写真家や画家の作品は、作家の生の感情が直接乗っているのに、自分の造形作品はレシピどおりに進める『作業』に思えて、ジェラシーのようなものを感じました。もっと『自分がそこに生きていた証し』になるような表現をしてみたい。そこで、ボディマーブリングに行き着きました。


DWSのボディマーブリング。日本の伝統的な染色技法「墨流し」を改良し、ボディペイントとして体験できる「色流し」をフェスやイベントに出店している。
「二度と同じものは作れない、瞬間的な表現に魅力を感じて、母校から誘われたサマーソニックのブースで、同じくバンタンの卒業生の仲間二人とワークショップをやりました。必死に実験を重ねて挑んだ2日間は純粋にめちゃくちゃ楽しかったし、大きな可能性を感じました。『これで飯を食っていこう』と決意して、『DWS(Dirty Workers Studio)』を結成したんです」
その後、PERIMETRONの佐々木集と出会い、人生の歯車はさらに大きく回り出す。
「MILLENNIUM PARADEが始まる時に、デザインだけじゃなくステージにも上がってほしいと(常田)大希から誘われて。最初は裏方でお祭りを手伝うくらいに思っていたら、いきなり『ライブ決まったから歌詞送るわ』って。幼少期に7年間LAに住んでいたから英語はしゃべれたし、大のカラオケ好き、ラップ好きっていうだけで(笑)。昔から、音楽は大好きでバンドを組んでいた時期もありましたが、大舞台でパフォーマンスする日が来るなんて、夢にも思っていませんでした」

FUJI ROCK FESTIVAL ’21。MILLENNIUM PARADEのメンバーとしてWHITE STAGEのヘッドライナーを務め、会場を沸かせた。

POINTLESS JOURNEY×adidas Originals×atmosのトリプルコラボ企画は常田大希さんのための最新ワーク。スニーカーデザイン、キービジュアル、コンセプトムービーを手がけた。
思うようにいかず悩み抜いた日々も、愛すべき人柄と表現への純粋な欲求によって、確固たる今へとつながった。
「目の前の友達をびっくりさせて、一緒に喜び合いたいというのが一番の原動力。でも遠くの社会を見ると、変な奴や、なじめない奴ら、また、そういう人間の表現が報われづらい現実が日に日に強まっていって、そういったことへの『怒り』も同じくらい強い。その二つの感情が、自分のクリエイティブの根底にあります」

スタジオに飾られた敬愛する岡本太郎の言葉。「美しく怒れ」「超楽」は森さんの人生の哲学であり、クリエイションにおける大切なコンセプトになっている。
「今後も変わらずMILLENNIUM PARADEに集中しつつ、ソロプロジェクトの『DONTEQQA』も深めていきたいし、人生を振り返るような自由なグラフィック作品にも向き合ってみたい。音楽、デザイン、映像、マスク造形も含めたクリエイションの『総集編』みたいなものを、いつかやりたいんです。送り出してくれた地元・藤沢の仲間や家族へ自分が唯一できる恩返しは、“ヤバいもの”を生み出し続けて遠くからでも喜ばせること。この先も自分と仲間を信じてとにかく頑張り続けるだけです」


Tempalay「大東京万博」MVのために制作したマスク。
Cota Mori
1990 年生まれ、神奈川県出身。バンタンデザイン研究所を卒業。2015 年にDWSを結成。現在はMILLENNIUM PARADE、PERIMETRONにも所属し、アートディレクター、グラフィック/プロップスデザイナーとして幅広く活動中。
Instagram: @cotamoly









