
2026年秋冬コレクションのルック撮影を翌日に控えたORIMIのアトリエ。デザイナーの折見健太さんと、ストックホルムを拠点とするスタイリストであり、アワー レガシー(OUR LEGACY)との仕事でも知られるレオン・パクティン(Leung Pak Ting)さんが、組まれたばかりのルックの写真を前に穏やかな雰囲気で仕事をしている。
パクティンさんがORIMIのスタイリングを手がけるのは2026年春夏に続き二度目だが、二人は単なるデザイナーとスタイリストである前に、信頼し合う友人関係だ。若い世代に熱く支持されるブランド、ORIMIの感性を形作る二人に、新作や現在地、そして見据える先を語ってもらった。
photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / interview & text : SO-EN

ORIMI ’26FWルックより
About ORIMI
2020年、東京・原宿の人気セレクトショップ「THE ELEPHANT」を運営する折見健太がスタート。既存の構造や意味を解体し、新しい身体性とバランスを再構築することで、現代の衣服のあり方を問い直す。’24年、2025年春夏でブランド初のランウェイショーを開催。’25年9月には、Rakuten Fashion Week Tokyo公式スケジュールで2026年春夏コレクションをランウェイ形式にて発表。
この記事の内容:
折見健太とレオン・パクティンの出会い
ORIMI 2026年秋冬コレクションとルックのポイント
あらゆるものが流動的な世界で、誰に向けて服を作る?
ファッションでつながるコミュニティは国を超える
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8年前に始まった物語
――2026年春夏のショーに続き、今回の’26年秋冬で二度目のタッグですね。そもそもお二人の出会いはいつでしたか。
レオン・パクティン(以下、パクティン):実は、私たちが初めて会ったのは8年も前のことです。最初はInstagramでつながり、お互いがパリにいるタイミングで会うことになりました。当時、折見さんはセレクトショップ「THE ELEPHANT」をオープンする準備をしていて、私にモデルを依頼してくれたんです。最初は彼がスタイリストで、私がモデルでした。スタイリスト役が今とは逆ですね(笑)。
その後も、彼が東京でお店を始めてからは私が撮影とスタイリングを担当したり、ORIMIの最初のショーではバックステージフォトグラファーとして参加したりと、さまざまな役割で関わってきました。そんな蓄積があり、昨シーズン本格的にスタイリングを手がけるよりもずっと前から、私は彼と彼のブランドを深く理解していたのです。
折見健太(以下、折見):パクティンは、僕がやりたいことを伝えると、それをぐっと良い方向に伸ばしてくれます。自分が作った服のイメージをさらに拡張してくれる存在です。
パクティン:ORIMIの服のほとんどは私自身が着たいと思うものばかり。そして自分のスタイルととても似ているので、スタイリングが難しいと感じたことは一度もありません。まるで自分のワードローブの中から服を選ぶように、とても自然な感覚で取り組めます。そして何より、彼との関係を大切に思っています。ボスやクライアントとしてではなく、友人として大切な相手とともに働けること。こうした温かなつながりは、非常に稀で貴重なものです。
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ある一人のミュージシャンのワードローブから発想して
――素敵な関係性です。新作となる’26年秋冬コレクションのテーマについてお聞かせください。
折見:今回は、一人のワードローブを意識して洋服を作りました。ショーとルック、どちらで発表するかによって考え方を変えていて、今回のようにルックでの発表になるシーズンは、「現実」や「日常」といったものを見せやすいと考えています。そこで架空の一人のワードローブを作り上げるように、ジャージーのようなリラックスしたものから、クラシックなスーツ、コートまでが揃っている状態を意識しました。そのため、ショーのようにたくさんのモデルを起用するのではなく、1 〜 2 名という限られた人数で見せることを想定しました。




ORIMI ’26FWルックより
――その一人の人物像について、具体的なイメージはありましたか?
折見:アメリカのミュージシャン、パティ・スミスの写真は今シーズンの制作初期からアトリエに貼っていました。僕が敬愛するミュージシャンの一人です。彼女はテーラードジャケットや白シャツ、ネクタイといった限られたアイテムで構成される特有のスタイルが印象的で、そのイメージから、今回のコレクションはアイテムの種類を増やさず、24ルックの中でさまざまな着こなしを見せることにしました。彼女の服の着方や、クラシックなジャケットをまとったミュージシャンらしいカルチャーのニュアンスをイメージしながら制作しました。
Patti Smith – Gloria (Official Audio)
パクティン:日常をテーマにすると聞いたとき、一人の人間は常にカジュアルなわけでも、ドレスアップしているわけでもない、さまざまな側面を持っていると考えました。だから、肌を大胆に見せるセクシーなスタイリングもあれば、シャツやコートを2枚重ねるようなダブルレイヤー、トリプルレイヤーのスタイリングも提案しました。レイヤードと素肌、ワイドとタイニーといった、大きなコントラストをつくりたかったのです。

ORIMI ’26FWルックより
協働によって拡張するクリエイション
――お二人の共通言語は音楽とカルチャー、そしてファッションで、先シーズンのスタイリングを作り上げる際も、膨大な資料のやりとりをされていたのが印象的でした。今回はどのようにイメージを共有されたのでしょうか?
折見:今回もWhatsAppでたくさんやりとりをしました。まず僕がやりたい大まかなコンセプトを文章で送り、キーワードとして「クラシック」「エレガント」「メランコリー」といった言葉も伝えました。洋服の企画書や構成のリファレンスもあわせて送ると、彼からたくさんのリファレンスが返ってきて、そこからイメージのキャッチボールを重ねていきます。パクティンに日本に来てもらう前にある程度の方向性を固めておき、来日してからさらにイメージを伸ばしてもらったり、変更したりしながら制作を進めました。
――折見さんからコンセプトを受け取って、最初にどんなイメージが浮かびましたか?
パクティン:ORIMIというブランドには、どんなテーマであっても揺るがないコアなDNAがあると思っています。一つは、折見さんが1990年代後半〜2000年代初頭の日本のファッションシーンを熟知していること。そしてもう一つは、彼がロックンロールミュージックを深く愛していることです。スタイリングをするとき、私は常にこの二つの要素を心に留めています。
今シーズンはそれに加えて、彼が「日常的なワードローブ」や「よりウェアラブルなもの」を重視している点が非常に興味深いと感じました。ORIMIの春夏と秋冬は常につながっていると考えているので、前回の’26年春夏コレクションとの関連性も意識しました。前回登場した、肌を見せるセクシーなルックにはスウェットパンツを合わせるなどして、よりカジュアルでデイリーな要素を加えています。
――ORIMIの人気アイテムであり、定番のデニムラップパンツが今季もラインナップしていますね。
折見:このアイテムは、もともとスタイリストとのセッションの中で生まれたものなんです。初期の頃にスタイリングをお願いしていた初沢大地さんのアイデアから生まれ、それをさらにパクティンが今シーズンの形に発展させてくれました。特にこのビッグデニムに関しては、スタイリストのアイデアを製品化する流れがありますね。

ORIMI ’26FWルックより
――パクティンさんが特に今回のスタイリングで大事にされたことは何ですか?
パクティン:今シーズンは力強いシルエットのキーピースが豊富で、それぞれに異なる生地やカラーが用意されていました。そこで私は、同じアイテムを使いながらも、まったく異なるスタイルを表現しようと試みました。
例えば、今シーズンの重要なアイテムであるコート(写真下)。ブラックのこのコートにワイドパンツを合わせればフォーマルでドレッシーな印象になりますが、色違いのほうにはスキニーパンツを合わせて、よりセクシーでロックンロール、そしてメランコリックな雰囲気を演出しました。このように、同じ型のアイテムでも、着方やシルエットを変えればまったく違う物語を紡ぎ出すことができるのです。



ORIMI ’26FWルックより
――お気に入りのキーピースはなんですか?
パクティン:ネクタイが一体化したこのシャツ(写真下)は、非常にスマートなデザインだと思います。
折見:これは前回のショーで発表した、洋服が少しずれているような彫刻的なアプローチとリンクしていますね。

あらゆるものが流動的な世界で、誰に向けて服を作る?
――ルック撮影において、特に一人の人物像を語るような今回のストーリーの場合、モデルへの視点も重要になるかと思います。モデルはどのように選びましたか?
折見:僕が事務所のリストを見てピンときたモデルを選び、パクティンにも見せたところ、偶然にも彼が過去に仕事をしたことがあるモデルばかりでした。最終的にお互いが気に入った2人に絞りました。
パクティン:キャスティングの際に彼が言っていたキーワードの一つが、「国籍が定義できないモデル」でした。アメリカ人なのかアジア系なのか、いずれとも違う国の人なのか、あるいはミックスなのかが、一見して分からないこと。あらゆるものが流動的になっている現代において、それはとても良いアイデアだと思いました。ブランドの幅を広げる意味でも有効かもしれません。
折見:前回はあえてアジア系のモデルに絞ったキャスティングにしていましたが、次のシーズン(’27年春夏)で行う予定のショーでは、もっともっとモデルの属性をミックスしていくことも想定して、今回はあまり着る人の国籍を限定しないようにしたかったんです。
――多様性という意味で、着る人の年齢や性別についてはどうお考えですか。
パクティン:先シーズンのショーでマチュアな女性モデルを起用したように、年齢、サイズ、セクシュアリティ、そのすべてをインクルードしたいと考えています。特定の顧客層だけにフォーカスしているわけではないので、将来的にはさらに多様なモデルによってORIMIの魅力を伝えていきたいですね。
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ファッションでつながるコミュニティは国を超える
――ORIMIの現在のファンは10代後半〜20代の若い男性が中心ですよね。展示会ではその方々の静かな熱狂が印象的でした。
パクティン:彼にはとても強力なファンベースがありますね。特にファッションを愛する日本のティーンエイジャーは、彼と彼のブランドに憧れを抱いているように感じます。前回のショーの後にはアフターパーティーを開催しましたが、ファッションだけでなく、音楽やサブカルチャーが人々を繋ぐ重要な要素であることを示す良い機会になりました。若い世代がパーティーに集い、音楽を楽しんでいる姿を見て、ORIMIがコミュニティを形成していることを実感しました。
――折見さんは、東京からファッションを発信する意義をどのように感じられていますか?
折見:ヨーロッパに行くたびに、東京が持つチャンスやポテンシャルを強く感じます。日本の偉大なデザイナーたちがストリートからパリのランウェイへと上がっていったように、自分もこの東京のストリートが持つポテンシャルを世界に見せていきたい。特に、僕が心を奪われた原宿のファッションを、世界に伝えていきたいという気持ちがあります。
パクティン:それこそ、2000年代の原宿が持っていたファッションのエネルギーとコミュニティを取り戻すようなエナジーがORIMIにはあると思います!
また、いまヨーロッパのファッション好きの人々の間には、まだ見ぬ日本ブランドに出会いたいという欲求があり、そういう人にORIMIを紹介すると、とても喜んでもらえます。嬉しいことに、先シーズンは海外のバイヤーから多くのよい反応を得られました。
ORIMIはもっと世界に広がっていく可能性があると思っているので、いつか彼が日本以外の場所、例えばパリやロンドンでショーをすることも願っています。より多くの人々にブランドを知ってもらうために、望まれる限り長期的に彼をサポートしていきたいです。
折見:本当に、もっと大きなステージ、より高いレベルのステージで挑戦できたら楽しいだろうなと思う。一番はパリで発表をしたいですね。ショーに限らず、ユニークなプレゼンテーションという形でも。
ORIMI ’26FW ITEMS PICK UP


左 スプレーペイントで大胆にチェック柄を描き、職人による手の込んだダメージ加工を前後に施したショート丈フーディ。
右 今シーズンから初めて取り組む和歌山の工場の裏起毛地を使用。折見さんが理想とする、品がある厚手のカットソー地に出会えたことで生まれたフード付きトップ。同素材でパンツやクルーネックトップも。

ORIMI ’26FWルックより


左 今季を象徴するのが、小さな革ベルトのディテール。ウールのコートにも見られたベルトをテーラードジャケットのフロントにあしらい、新鮮なデザインポイントとした。
右 チェスターコートとショールカラーのコートをレイヤードしているようなデザイン。このアイテムからパクティンさんが着想し、シャツやニットのダブルレイヤードのルックが生まれた。

ORIMI ’26FWルックより
Kenta Orimi
1989年生まれ。2019年、東京・原宿にセレクトショップ「THE ELEPHANT」をオープンし、’20年にファッションブランド、オリミ(ORIMI)をスタート。’24年、’25年春夏にブランド初のランウェイショーを開催。’26年春夏には、Rakuten Fashion Week Tokyo公式スケジュールでショーを発表した。
Instagram @orimi.official
Leung Pak Ting
香港出身。香港のポストパンクバンド、Ex-Punishmentのメンバーであり、ミュージシャン、モデル、フォトグラファー、スタイリストと幅広く活動。アワー レガシーやケンゾーで仕事を行い、’26年春夏にオリミが開催したランウェイショーでスタイリストとして携わった。
Instagram @leungpakting








