ドレスを美しく飾った19世紀の三角ショール。ナポレオン3世時代には、女性のワードローブになくてはならないものだった。
壁に展示されるのは縦横2mの特大ショール(ナポレオン3世時代)。クリノリンドレスの上に合わせていたもので、織り上げるのに20人で1年かかるそう。博物館のコレクションの中でも貴重なピース。
ナポレオン3世時代のドレスの再現。背景の肖像画は同時代のプリンセスたち。
レースのアンブレラや扇子、女性用ネクタイなど、19世紀の優雅なアクセサリーも展示。
ボビンレースの織り機「カロー(carreau)」。織り機の上に型紙をピンで固定し、ボビンに巻いた糸をピンのまわりで交差させながら様々な模様を描いていく。
図案家によるモチーフのデッサン。
レースの型紙。ボビンレースはこのようなバンド状で織られるため、大きなピースを作る場合はレースを繋ぎ合わせる。それらはポワン・ド・ラクロ(point de raccroc)という技法で縫われ、繋ぎ目は全く見えない。ちなみに一番左の型紙では380個ものボビンが必要。想像しただけで気が遠くなる作業だ。
メカニックレースのショール。白のレースは主に若い娘やウェディング用で “白いシャンティイ”と呼ばれる。第二帝政(ナポレオン3世時代)スタイルのドレスに合わせて。
人気を博したシャンティイレースは、バイユーなどの他の都市でも“シャンティイ”の名前で作られるようになります。19世紀の後半には、機械織りが手作業に取って代わり、シャンティイにおけるレースメーカーは姿を消しました。ですが、機械化により、今でもその伝統を受け継ぐシャンティイレースがフランス北部で生産され、現代のクリエイターたちを刺激し続けているのです。
シャンティイレースを使った1930年代と’40年代のドレス。
ユベール・ド・ジバンシィから贈られたシャンティイレースのマスク。オードリー・ヘプバーン主演の映画『おしゃれ泥棒』(1966年)のためにジバンシィが制作したマスクと同様のもの。
館内にはシャンティイレースを用いた現代のクリエイションを紹介するスペースもある。写真は、絵画のようなドレスを制作するシルヴィー・ファコン(Sylvie Facon)のエキジビション『Du tissu et des rêves』(2021年)。
記事の後半では、世界遺産のシャンティイ城、フランス最古の競馬場でも知られるシャンティイの魅力をお伝えしています。こちらも合わせてチェックしてみて!
Musée de la Dentelle de Chantilly
シャンティイレース博物館
住所:34, rue d’Aumale, 60500 Chantilly, France
TEL:03 44 60 92 36
開館時間:14時〜18時(金曜、土曜、日曜のみ)
定休日:月曜〜木曜
一般料金:5ユーロ
公式サイト:https://www.chantilly-dentelle.com/
Photographs:濱 千恵子 Chieko Hama
Text:B.P.B. Paris