長尾謙杜(なにわ男子)インタビュー
時代劇に、まっすぐな敬意を。
『木挽町のあだ討ち』で受け継いだもの

photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.) / styling : Ai Suganuma(TRON) / hair & makeup : yuka(JOUER)
interview & text : Yushun Orita

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「先輩方が築き上げてきたものを絶やさないよう、大切に受け継いでいきたいんです」

なにわ男子のメンバーとして、グループの衣装プロデュースも手がける長尾謙杜。映画俳優としても頭角を現す彼に“時代劇”について聞いてみると、こんな言葉が返ってきた。語り口調は朗らかで真っすぐ。そこには彼なりの強い覚悟のようなものがあるのを感じる。『室町無頼』で本格時代劇に初挑戦した長尾は、同作に続き、歴史ある東映京都撮影所で『木挽町のあだ討ち』の撮影に参加した。江戸の世が舞台の、ミステリー仕立てでユニークな構成の時代劇だ。再び京都で撮影できることに心を弾ませて臨んだ彼は、時代劇の魅力について次のように語る。

「どこか堅くて、とっつきづらいイメージを抱いている人は少なくないと思います。僕と同じような若い世代の方々にとっては特にそう。でも実際にいろいろと触れてみると、まったくそんなことはないんですよね。ストーリーは多種多様だし、『室町無頼』のような激しいアクションが見どころの作品があれば、お芝居で魅せるタイプの作品もある。こうして俳優として関わることで、さらにその捉え方が変わりつつありますし、時代劇だからといって変に構えることもありません。僕としては何よりもリスペクトの気持ちを大切にしています」

長尾が新たに挑んだ『木挽町のあだ討ち』は、“仇討ち”を物語のひとつの軸として、その裏に隠された“秘密”が次第に明らかになっていく作品だ。台本を初めて手にした彼は、「この“カラクリ”をどうやって映像で表現するんだろう」と非常にワクワクしたのだという。しかも共演するのは柄本佑や渡辺謙といった、日本映画界が誇る演技者たち。この先輩たちの胸を借り、必死になって背中を追っていこうと決意した。そんな長尾は、17歳にして武士の掟である仇討ちの使命を背負うこととなった、若き侍の伊納菊之助を演じている。

「菊之助は真っすぐで一生懸命な性格で、自分の運命に苦悩しながらも少しずつ成長していくキャラクター。彼に対して周りの大人たちが手を差し伸べますが、すごく納得します。実際に僕の身近なところに菊之助がいたら、やっぱり同じように手を差し伸べずにはいられません。僕自身、伊納菊之助という人間のいちファンなんです」

撮影に臨むにあたって変に構えることはなかったというが、現代人とは生活様式が違う時代を表現するには、江戸の世の人々の所作を身につける必要がある。

「立ち方、歩き方、振り向き方など、一つひとつ意識をめぐらせながら稽古を重ねました。“刀を抜く”という行為ひとつにも、そのキャラクターらしさが表れる。それに僕らが手にしているのは真剣ではありません。本物の刀はとても重い。だからどうすればここに真実味を生み出せるのか。そういったことを常に意識しながら撮影に臨まなければなりませんでした」

全編にわたって激しい“殺陣”のシーンがある『室町無頼』とは異なり、今回は作品の核となる仇討ちのシーンの殺陣が大きな見どころ。一口に殺陣といっても、作品上の位置づけが異なるのだ。長尾自身も「まったく違うもの」だと実感したそうだ。今作はどう表現していったのか。

「菊之助には彼の背負っているものがあり、殺陣であってもその繊細な心の動きをどう表すのかが、より重要だと感じました。一方、『室町無頼』で演じた才蔵は、生きるために必死になって闘うキャラクターで、闘志を失ってしまえば命を落とすような世界で生きている人物です。殺陣には過酷な時代性や彼の人間性が表れていて、仇討ちが大きな見せ場となる菊之助とは、刀をふるう意味が違います。戦乱の世を駆ける才蔵の殺陣は生命力にあふれていましたが、菊之助の場合は型の美しさで魅せることに注力していました」

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また、本作の見どころのひとつに、美しい衣装の数々がある。和服、はかま姿はもちろんのこと、発色の鮮やかな赤い振袖も劇中で着こなす。「時代劇の衣装は奥が深い」と語るなにわ男子の“衣装担当”の彼に、その衣装はどう映っていたのだろう。

「衣装に袖を通すと役を演じるうえでのスイッチが入ります。しかも今回はさまざまな衣装を身につけさせていただきました。衣装を着替えるたびに菊之助の立場や心情は変化しますし、演じる僕の心持ちも変化します。令和の今、服は無限に選択肢がありますが、あの当時はかなり限られていた。その制限の中で、個々のキャラクターを表現しているんですよね」

何十年も前に撮られた時代劇の名作が現代でも愛されているように、長尾が参加した作品も、時代を超えるものになるかもしれない。そう伝えると彼は「そうなったら嬉しいですね」と笑顔で反応したうえで、こう続けた。

「すごいんですよ。“名作”と呼ばれる映画を撮っていた人たちって。『本当にそんな撮影の仕方をしてたんですか!?』って、驚くことばかりで。現代なら最新技術で表現できることも、当時はアナログ的に創意工夫して撮っていかなければならなかった。危険なこともあったと思います。いま以上にカメラの操作は大変ですし、フィルムだから簡単に撮り直すこともできない。当時を知る方からお話を聞かせていただいては、『え、ほんまに……?』と心の中でつぶやいていました」

興奮気味に語る長尾の様子からは、時代劇の撮影が、ひいては映画の現場が好きでたまらないのが伝わってくる。2025年は『室町無頼』のほかに、『おいしくて泣くとき』『俺ではない炎上』『恋に至る病』も公開された。彼の思う映画の醍醐味とはなんなのか。

「大勢のスタッフとキャストが一丸となって、一つひとつのシーンを時間をかけて積み上げていく。しかも完成した作品は、僕の想像していたものを遥かに超えてくる。この2年ほどのうちに身をもって映画の楽しさを実感しています。映画の現場でみなさんと過ごす、あのかけがえのない時間が僕は大好き。演じることにはいつだって悩んでばかりですけどね。でもその時間もまた、たまらなく愛おしいんです」


映画『木挽町のあだ討ち』

ある雪の降る夜、芝居小屋のすぐそばで美しい美濃遠山藩士、伊納菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。その事件は多くの人々の目撃により美談として語られることとなる。1年半後、菊之助の縁者と名乗る侍、加瀬総一郎が「仇討ちの顛末を知りたい」と芝居小屋を訪れるが……。菊之助に関わった人々から事件の経緯を聞く中で徐々に明らかになっていく事実。果たして仇討ちの裏に隠されたその「秘密」とは。そこには、想像を超える展開が待ち受けていた――。
源孝志監督・脚本、柄本佑、渡辺謙、長尾謙杜ほか出演。2月27日(金)より全国公開予定。東映配給。
Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

Kento Nagao

2002年生まれ、大阪府出身。’18年、なにわ男子のメンバーに選ばれる。’19年、「俺のスカート、どこ行った?」で連続ドラマ初出演。以降、俳優としての活躍も目覚ましく、’22年に映画初主演作『HOMESTAY(ホームステイ)』が公開。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(’23年)、『室町無頼』『おいしくて泣くとき』『俺ではない炎上』『恋に至る病』(すべて’25年)などに出演。また、グループではライブ衣装をプロデュースするなど、豊かな才能を開花させている。

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