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2007年に台湾で大ブームを巻き起こした青春映画の金字塔を原案とし、現代的な解釈を加えて新たな息吹をもたらした映画『シークレット・メロディ』(公開中)。恋の輝きを、エモーショナルかつ驚きのある展開で描き出す本作は、K-POPグループ、EXOのD.O.として活躍し、近年では俳優としても頭角を現すド・ギョンスを主役に迎え、幅広い役柄を演じきる多彩な表現力によって韓国国内を中心に高く評価される俳優のウォン・ジナがヒロインを演じている。
「装苑ONLINE」では、ウォン・ジナにインタビューを敢行。現代的なヒロイン像を作るプロセスに加え、日本の韓国カルチャーブームについても尋ねた。
【インタビュー内容に映画の核心に触れる箇所がございます。ネタバレを気にされる方はご注意ください。】
Interview & text : SO-EN
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映画『シークレット・メロディ』より、ウォン・ジナさん演じるジョンア(左)と、ド・ギョンスさん演じるユジュン(右)。
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心の奥底から出てくるような率直な言葉や、飾り気のない言葉で恋愛の感情を表現しようとしました。
──まずは制作の裏側についてお伺いできたらと思います。ユジュン(ド・ギョンス)とジョンア(ウォン・ジナ)の自然で親密な空気感が強く印象に残っていますが、ユジュンとの温かな場面を作るため、撮影までに話し合ったり、準備したことを教えてください。
ウォン・ジナ(以下、ジナ):『シークレット・メロディ』は多くの人に愛されている青春映画を原案としている作品なので、台本を受け取った際、どの部分で2007年版と差別化するのが良いかを話し合いました。それと同時に、今の観客に共感してもらえるような作品にするにはどうしたらいいだろうという点についても、悩みながら一緒に作っていましたね。もちろんピアノのレッスンにも多くの時間をかけています。
──物語に現代性を与えたり、今の観客に届けるため、ジナさんはじめ制作に携わった皆さんが大切にされていた点はどの部分でしたか?
ジナ:大きなところでは言葉遣いです。原案となった映画はもう20年近く前に作られていて、今の20代の方達の感性とは違う部分が多々あると感じました。
最もそれを感じたのが言葉遣いで、台本を読んだ時にも、今ならこういう言い方をしないのではないか、今の若い人が聞いたらセリフが必要以上に重く響いてしまうのではないかといった視点で、もともとあった言葉を思い切ってあっさりした表現に変えた部分があります。心の奥底から出てくるような率直な言葉や、飾り気のない言葉で恋愛の感情を表現しようとしました。
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映画『シークレット・メロディ』より
──ジナさんご自身が非常に能動的に作品作りに関わられていた様子を感じますが、いつもそのように、制作陣や共演者と話し合いながら共に作品を構築していくスタイルをとられているのでしょうか?
ジナ:作品によって方法は少しずつ異なりますが、韓国の場合、監督をはじめとする制作スタッフの皆さんと俳優が相談し合ったり、互いに意見を出し合うことがよくあります。作るプロセスは開かれたオープンな状態であることがほとんどです。
特に本作に関しては同世代の人たちが集まっていたので、気軽にコミュニケーションをとっていました。ソ・ユミン監督は俳優の意見をフラットに受け入れてくださる方で、私たちの考えに耳を傾けてくれたり、その都度、意見を出してくださったりして、とても自由な雰囲気の中で作品作りが進んでいました。
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映画『シークレット・メロディ』より
この映画では、ユジュンをジョンアが守ろうとしています。
──ジナさんが演じられていたジョンアの女性像にも現代性を感じました。現代的な女性像にするという点において、ジナさんが表現のポイントにされていたことはありますか?
ジナ:この映画のジョンアは、謎多き人物ですよね。秘密をたくさん抱えたキャラクターだなと思いながら演じていたのですが、そういうキャラクターは、ともすると観客に嫌われてしまうのではないかという懸念がありました。真実を隠しているので、なおさらジョンアという女性がどう受け止められるのか心配だったのです。
そこで、なぜ彼女が真実を隠しているのか、その理由を自分なりに考えてみました。出た結論は、彼女が自分自身や自分の欲のために真実を隠しているのではなく、人を傷つけたくないから秘密を持っているのだということ。彼女は独りよがりなのではなく、あくまでも他者のことを考えた上でそうしているのだろう、と位置付けたのです。現代的な女性像を作りたいというよりも、率直に演じたかった。
ただ、以前なら、男性が女性を守ろうとすることが多かったと思いますが、この映画では、ユジュンをジョンアが守ろうとしています。ジョンアは、彼の生活に危険が迫るのを防ぎたかったし、危険な状況から守ってあげたいと思っていた。そういうところに気を配りながら演じていました。
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映画『シークレット・メロディ』より
──今のお話を伺って、ジョンアが素敵に見えていた理由に腹落ちしました。もう一つとても面白かったのは、ジョンアが現れた瞬間です。ジョンアは他の女の子とは明らかに違うファッションで、私は初め「この子はすごくお嬢様なのかな?」とか「世間から隔絶された場所にいたのかな?」などと想像が膨らみました。物語が進むうちに「そういうことだったのか」と納得したのですが、ジナさんは、ジョンアの衣装をどのように捉えていましたか?
ジナ:今言っていただいたことを聞いて、私たちの意図が伝わったんだ!と思うことができて、とても嬉しかったです。 初めて登場したジョンアを観客が見た時、「あれ?この子は過去から来たのでは?」と思わないようにしたかったんです。なので、時代感はありつつも、今でもありえるファッションで登場しよう、と衣装にはとても気を配っていました。
ジョンアは音大生なので、クラシカルなファッションでピアノの前に座っても違和感がないはず。その点も念頭に入れながら、慎重に衣装を選んでいました。決して華やかな衣装ではないにもかかわらず、何度も衣装合わせをしたんです。それでも現場で、色や雰囲気が合っていないなと思ったら果敢に衣装を変えていました。衣装にはかなりこだわったので、そのように見ていただけて感謝しています。
──衣装が語る部分が多い映画でしたよね。大きな質問になってしまいますが、ジナさんは映画衣装をどのような存在として捉えていますか?
ジナ:衣装とヘア&メイクは、人物を作る最も大切な要素だと捉えています。例えば映画の冒頭、セリフがなく、ただ座っているシーンがあるとしますよね。そういう場面でも、着ている服とヘア&メイクでその人を説明することができるわけです。とても助けられていると思いますし、いい作品を作ろうとしたら、適切な衣装とヘア&メイクはなくてはならないものです。これらによって演技はより輝くと思っています。
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映画『シークレット・メロディ』より
──画作りに関してはいかがでしょうか。練習室の光の設計をはじめ、印象的な画がたくさんあり、各セクションの方々の緻密な仕事を感じました。
ジナ:映画の撮影現場には俳優とカメラマンだけがいるわけではなく、非常に多くの方々がいらっしゃいます。私が誰かを演じている時、言葉や表情、動きで表現しきれない部分は、照明や美術などが代わりに表現してくれます。そうした多彩な技術者の方々の力があってこそ、美しいシーンは出来上がります。
この作品についても同じで、各部門のプロフェッショナルの皆さんが世界観を作っていました。多くの方々が試行錯誤や苦労をしながら1本を作り上げるのが映画というもの。カメラの向こうでは多くの方々が努力を傾けてくださっているということをお伝えしたいです。
日本と韓国、それぞれが持っている文化を共有し、自分たちの文化にどう合わせるかを考えて個性を見つけることができたら。
──ぜひそのこともお伝えしたいと思います。今作の大切な要素に音楽がありますが、ジナさんご自身は音楽をどのように楽しんでいらっしゃいますか?
ジナ:私は日常の中にも音楽が必要だと感じていて、運転をしている時に聴く音楽、雨の日に聴く音楽、読書をする時にはクラシックを流す……といったように、場面によって聴く音楽を変えています。音楽はとても身近で、すぐそばにある存在。私は音楽の造詣が深いわけではありませんが、いつも一緒にいてくれるものだと思っています。
──最近聴かれた音楽をうかがってもいいですか?
ジナ:最近は、「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」で流れているHUNTR/Xの曲をよく聴いています!
──素敵ですね!最後に一つ質問させてください。今、日本ではK-POP然り、ファッションや映画、コスメ、フードなど、韓国で生まれた様々なものが人気を集めています。ジナさんが今、日本の若い人たちに注目してほしい韓国のトピックはありますか?
ジナ:私は流行にあまり敏感ではなくて、自分自身が流行っている物事についてもっと勉強しなければと思っているんです。
一つ、個人的な考えとしては、そうした文化というものは一方的に流れたり消費したりするのではなく、共有することが大切だと思っています。どちらか片方の文化を一方的に真似するのではなく、日本と韓国、それぞれが持っている異なる文化を共有し、自分たちの文化にどう合わせるかを考えて個性を見つけることができたら、と。
たくさんのことを感じ、考えながら自分が惹かれたものを取り入れて消費していくのが理想的だと思っています。そして、たくさんある韓国の文化の中でも、日本の皆様には、ぜひドラマと映画をたくさん味わっていただけたら嬉しいです!
Won Jin Ah
1991年生まれ、韓国・天安市出身。ドラマ「ただ愛する仲」「ライフ」「僕を溶かしてくれ」「先輩、その口紅塗らないで」「地獄が呼んでいる」「ユニコーン」などで、等身大のラブストーリーから追い詰められた母親まで幅広い役を演じきり定評を得る。近年はパク・ヘス主演の演劇『ファウスト』でヒロインのグレートヒェン役を演じ、その可憐な姿で存在感を見せた。映画は『キャッチボール』『中古、ポール』『今日の映画』『バイバイバイ』『退魔:巫女の洞窟』『奴隷の島、消えた人々』『密偵』『鋼鉄の雨』『プレゼント』『金の亡者たち』『英雄都市』『声/姿なき犯罪者』『ハッピーニューイヤー』など主役級ではなかったものの多数出演。本作は王道の「ラブストーリーのヒロイン」という初の大役を演じた。最新作はドラマ「アイショッピング」。
『シークレット・メロディ』
ドイツで将来を嘱望されたピアニストのユジュンはスランプに陥り、実家のある韓国へ静養のため帰国する。編入した音楽大学の敷地を歩いていたとき、ふと聞こえてきた美しいメロディに魅かれ、練習室を訪ねる。そこで古いピアノを弾いていたのは、同じ3年生のジョンアだった。初対面にもかかわらず、惹かれ合う二人。その日から毎日お互いを探し、逢えた日は一緒に過ごしていた。出会ってまもない中、すでにお互いがなくてはならない存在となっていた。しかし、ある日を境に、二人は突然会えなくなってしまう。そんな中、1本の電話をきっかけに、ある秘密に気づきジョンアがいる場所に向かって走り出すユジュン。そして彼女もまた、彼の元へと向かっていた……。
監督・共同脚本:ソ・ユミン 脚本:ユ・スンヒ、シン・ウンギョン
出演:ド・ギョンス、ウォン・ジナ、シン・イェウン、ペ・ソンウ、カン・マルグム
全国公開中。クロックワークス配給。
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