お芝居は”人”のこと。(木竜麻生)
――燃え上がって派手に咲いて善悪両面を併せ持つ、これが恋愛か・・・という感慨を持って私は映画を観終えたのですが、『わたし達はおとな』が提示する恋の形から、改めて、お二人が恋というものをどのように捉えられたのかなと感じました。
木竜:先ほど話していた二人のシーンのあとの場面が、私はすごく好きなんです。そこでは、本当にしんどくて悲しいことがあっても、生きていくこと、生活していくことを彼女が取り戻そうとしているなって。恋は刹那的なものですが、自分達の生活と近いところをちゃんと走っていると思いました。
藤原:恋愛は、冷静さを欠くものですよね。さっき言っていたような客観視している自分というのが全くいなくなって、主観でしか物事を見られなくなる。あれ、自分も怒ることなんてあるんだ・・・とか。そのくらい喜怒哀楽を引き出されてしまうので、ほんと、恋愛はしたくないですね。なのに、してしまう時はしてしまうから、またこれが怖ろしい。
――平穏じゃなくなっちゃうっていうことですもんね。
藤原:乱されますよね。悔しいことに。
木竜:他人にも自分にも、多少のわがままを許しがちになるなとも思う。
藤原:確かに。ただ、相手に甘えるのは望ましくないよね。
木竜:うん、なのにそうしてしまったり。直哉と優実を見ていても、相手に踏み込まれることを覚悟で踏み込まなければいけない・・・とか、大変だなあって思います。
――あとは、20代の分岐点を描いた映画としても観られて私は好きなのですが、お二人自身に寄せていただくなら、ご自身が今どういう地点にいて、これからどんな役者道を歩いていきたいと思われていますか?
藤原:正直に言うと、前進も後退もしたと思っていません。時々、最近ご活躍ですねと言ってくださる方もいるのですが、自分自身は全然納得がいってなくて。もっと暴れたいのにな、みたいな思いが常にあるという意味では、自分の現在地は完全にゼロです。
もっともっと面白い映画が誕生することを願っていますし、そのオファーが自分に届くことを願っています。最近は、映画があまり誕生しなくて悶々としています。
――自分から仕掛けにいこう、みたいなこともあるのでしょうか。
藤原:これが欲しがると手に入らなくなっちゃうので、スタンバイの状態を心の中に常に持っておく、その文脈を用意しておく。
そうすると、多分向こうから近づいてくるので。それまでは修行です。
木竜:現在地を分析することは難しいのですが・・・今まで、もちろん自分で歩いてきてはいるのですが、たまに「こっちだよ!」って言ってくれる人達や、力ずくでも別の場所へ引っ張っていってくれるような人や作品に出会ってこられました。そうして呼ばれた場所に入り、一生懸命、精一杯やることで、また新たに見せてもらったものや連れていってもらった場所もあります。
「ちゃんと自分のことを知りたいな」とずっと思っているのですが、自分自身のことや自分が何を思っているのかを知った上で、相手が何を思い何を考えているかを、見つめられるようになりたいです。お芝居は”人”のこと。ちゃんと人を見つめられる人になりたいです。
Mai Kiryu ● 1994年生まれ、新潟県出身。2014年、『まほろ駅前狂騒曲』(監督:大森立嗣)で映画デビュー。’18年の映画『菊とギロチン』(監督:瀬々敬久)のオーディションで花菊役に選ばれ、初主演を務める。同年公開の映画『鈴木家の嘘』(監督:野尻克己)でもヒロインの鈴木富美を演じ、この2作品での演技が評価されて同年の毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞、キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞をはじめとする数々の映画新人賞を受賞する。舞台やテレビドラマでも活躍し、’22年放送・配信のWOWOWドラマ「神木隆之介の撮休」などに出演。また、映画『とんび』(監督:瀬々敬久、’22年)などに出演。
Kisetsu Fujiwara ● 1993年生まれ、北海道出身。近作に、映画『his』(監督:今泉力哉、’20年)、『佐々木、イン、マイマイン』(監督:内山拓也、’20年)、『くれなずめ』(監督:松居大悟、’21年)、『明日の食卓』(監督:瀬々敬久、’21年)、『のさりの島』(監督:山本起也、’21年)、『空白』(𠮷田恵輔、’21年)、『DIVOC-12(『よろこびのうた Ode to Joy』)(監督:三島有紀子、’21年)、NHK大河ドラマ「青天を衝け」(’21年)、ドラマ「海の見える理髪店」(’22年)、舞台『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』(演出:白井晃、’21年)、劇団た組『ぽに』(演出:加藤拓也、’21年)など。現在、『MIRRORLIAR FILMS Season3』が公開中。Huluオリジナルドラマ「あなたに聴かせたい歌があるんだ」が配信中。第42回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞、第13回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞 受賞。
木竜さん着用:ブラウス ¥33,000 TELOPLAN (テーロプランカスタマーサポート) /靴¥40,700 trippen (トリッペン原宿店 TEL 03-3478-2255) /イヤリング¥16,500 petite robe noire (TEL 03-6662-5436) / その他スタイリスト私物
藤原さん着用:ジャケット¥46,200、Tシャツ¥13,200、パンツ¥35,200 すべてウル(エンケル TEL 03-6812-9897) /カーディガン¥26,400 ニードルズ(ネペンテス TEL 03-3400-7227) /靴¥48,400 エンド、ブレスレット¥30,800 フット・ザ・コーチャー(ともにギャラリー・オブ・オーセンティック TEL 03-5808-7515)
映画『わたし達はおとな』
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