photographs: Jun Tsuchiya(B.P.B) / hair & makeup: Daisuke Mukai
2021年5月、全くの未経験で音楽に取り組み、TikTokに投稿したオリジナル曲を皮切りに、その半年後の2021年12月にリリースしたデビューシングル「Have a nice day」がバイラルヒットを記録。さらに2022年8月に発表した「NIGHT DANCER」がワールドワイドなバズを巻き起こしたimaseさん。誰もが驚くようなスピードで進化を遂げてきた3年に渡る活動の軌跡を詰め込んだ1st Album『凡才』を前に、自らを凡才と呼ぶ認識がいかにして非凡な音楽を生み出してきたのか。その秘密に触れるべくお話をうかがいました。
interview & text: Yu Onoda
3年前の自分からすると考えられないことが
起きているなと驚いています
──最初のリリースである「Have a nice day」からアルバム完成まで、約3年の活動の軌跡を凝縮した今回のアルバム『凡才』を俯瞰で眺めてみて、ご自身でどう思われますか?
「約3年の間に作ってきた音楽が詰まっているので、僕の歴史や成長を感じていただくことができるアルバムになっていると思います。自分について知ってもらえる、名刺代わりの1枚になりました」
──その3年の間にBTSのJUNG KOOKさんがimaseさんの「NIGHT DANCER」をお気に入りに挙げたり、想像を超えるようなスピード感と規模でご自身の音楽が広がっていったと思うんですが、ご自身ではどのように捉えていますか?
「最初TikTokにオリジナル曲を上げた時、趣味でキャンプやサッカーをやるような感覚と同じ感覚で音楽を始めたんです。趣味から始まった音楽活動が、「NIGHT DANCER」をきっかけに、色んな国や地域の方からコメントをいただけたり、海外のフェスに出演したり、6月からのアジアツアーが開催できたり。自分の音楽の広がりを実感しつつも、もともと地元の岐阜から出るつもりがなかった3年前の自分からすると考えられないことが起きているなと驚いています」
──ただ、以前からしたら考えられないスピードで物事が形になり、状況が変化していくのが現代のタイム感であるようにも思います。例えば、昔だったら、楽器を弾いたり、曲作りにおいては、自分で試行錯誤して経験を積んだり、人に教わったり、高価な機材を揃えたり、時間と労力、お金が必要でしたが、でも、今はそれらをショートカットして、YouTubeのチュートリアル動画で学ぶことが出来たり、お金がかかる商用スタジオを使わずして自宅で音楽制作ソフトを使って直感的に曲作りができる。曲を発表するのも昔のようにCDを制作しなくとも簡単に世界に向けて配信できますよね。imaseさんはそういう現代のテクノロジーやツールをフル活用して、一躍脚光を浴びた現代のアーティストだと思うんですが、ご自身の音楽を考えるうえで現代のテクノロジーやツールの恩恵は大きいと思いますか。
「そうですね。もともとギターやキーボードが弾けなかった自分が曲作りに挑戦できたのは、パソコンで音楽制作を完結できるテクノロジーの進化が大きいですし、TikTokやYouTubeなど気軽に楽曲を投稿できる環境の恩恵も大きいと思います」
“違和感”を作り出すことを意識しています
──一方で、そうしたツールはimaseさんだけでなく、誰もが扱えるものであるわけで、そうした状況下で自分の音楽に注目してもらうために、どんなことを考えましたか?
「SNSでの見せ方は意識していました。例えば、SNS上で誰もやっていない画角で撮ってみたり、他の方とは違う投稿の仕方をしてみたり。楽曲においても、海外ではファルセットを使ったソウルやR&Bが結構ありますが、日本のポップスではあまりなかったんです。そういう部分で目立ったり、ちょっとした違和感を感じてもらえたことが多くの人に聴いてもらえた要因の一つなのかなと思います」
──『装苑』というメディアにおいても、例えば、撮影の際に美しすぎたり、整いすぎていることで、逆にさらっと流されてしまったりすることもあるので、私たちもちょっとした違和感を大事にしているんですが、imaseさんが考えるちょっとした違和感の作り方はあったりするんですか?
「楽曲にもよりますが、ファルセットで歌うことも一つの違和感だと思います。例えば、メロディーにおいて少し音を外している部分を設けるとか。ブルーノートと呼ばれる半音下がる部分を作ったり、音色で違和感を生み出したり、歌詞にキャッチーで惹きつけられるフレーズを入れ込んだりなど、要所要所で違和感を作り出すことを意識していますね」
──そうした試行錯誤を2年半重ねていくなかで、ご自身にとって転機になった楽曲について教えてください。
「まず、「Have a nice day」ですね。僕が初めてリリースした楽曲なんですが、この曲を沢山の方に聴いていただいたおかげで今も音楽活動をやり続けていると思います。もう一つは「NIGHT DANCER」ですね。この曲は国内外で一番聴いていただいている楽曲ですし、自分を大きなステージに連れていってくれたきっかけの曲でもあります。色んな楽曲を作るチャンスを与えてくれた曲ですね」
──全19曲中14曲がタイアップ曲のアルバム『凡才』にあって、ノンタイアップのデビュー曲「Have a nice day」はリスナーの具体的なイメージが浮かばない状況下で作られた抽象的な楽曲であるのに対して、タイアップ曲の「Happy Order?」はマクドナルドの具体的なイメージが盛り込まれた曲ですよね。その2つは在り方が全く異なる曲だと思うんですけど、ご自身のなかで取り組み方の違いはありますか?
「具体的な歌詞を書くのも抽象的な歌詞を書くのもどちらも好きですね。もともとは抽象的な歌詞を書いていて、その方が普遍的かつ幅広い方に聴いてもらえるのかなと思っていたんです。でも、直接的で具体的な歌詞は、書き方によっては幅広く届けられるし、共感を得られやすいということも分かってきて。どう書くかは曲やタイアップにもよりますが、どんなアプローチであっても楽しみながら書いています。例えば、「Nagisa」という楽曲は80’sのシティポップを意識して制作しましたが、その年代の楽曲は歌詞に強い女性が出てきたり、80年代っぽいワードが出てきたりして。そういうものを盛り込みつつ直接的な内容にしたんですが、具体的、抽象的なバランスは曲によって変えていますね」
──サウンド面においては、メロディのキャッチーさはもちろんのこと、例えば、「Have a nice day」はチル系のヒップホップ、R&B、「僕らだ」はハウス、「Happy Order?」は2ステップであるとか、リズムの多彩さがimaseさんの特徴なのかな、と。
「音楽のジャンル分けにおいては、メロディーやコードもありますが、リズムの違いが大きいと思っています。なので、曲調やジャンルを変えるために、テーマごとにリズムのアプローチを変えています。自分の音楽的なバックグラウンドは、中高生の時によく聴いていたJ-POPです。特にGReeeeNさんや米津玄師さん、星野源さん、SEKAI NO OWARIさんがポップスのルーツだと思っています。また、幼少期に両親が家で流していた松任谷由実さんや松田聖子さんのような歌謡曲も自分の根底にあります。音楽を始めてからは洋楽を聴くようになったので、ビート感やリズムアプローチはその影響が大きいと思いますね。SNSのカルチャーが発展したことで邦楽と洋楽の壁が薄くなった気がしていて、洋楽のエッセンスも自然に取り込めるようになっていると思います。同年代だとヒップホップが流行っているので、僕もトラックやループミュージックのアプローチを活かそうと思っています」
──邦楽、洋楽の壁がなくなったという意味で、今回のアルバムタイトル『凡才』は、“BONSAI(盆栽)”とのダブルミーニングになっているんですよね?
「なにも考えずにすごいことができてしまうのが天才だとすると、自分はとても尖った個性の持ち主でもなければ天才でもないと思っていて。そんな“凡才”の自分が、自分の音楽を聴いてもらうために見せ方ややり方を工夫し続けてきた結晶が詰まっているので、『凡才』というタイトルを付けました。もう一つ、“BONSAI(盆栽)”は普遍的な魅力を象徴するものだと思っています。海外でも人気があるので、自分の音楽も盆栽のように国内外問わず愛されてほしいという思いも込めて、このタイトルを付けました」
──1st Album『凡才』リリース後、6月、7月にはアジアツアーも予定されていますが、地元、岐阜をスタート地点に、活動がどんどん広がっていくなかで、この先のご自身の活動についてイメージしていますか?
「国内ではもっと大きなステージでライブをやりたいなと思っていますし、海外でももっとたくさんライブができたらいいなと思います。そして、もっと色んなジャンルの楽曲にもチャレンジしていきたいですね」
imase
岐阜出身、23歳の新世代男性アーティスト。音楽活動開始わずか1年でTikTokで楽曲をバイラルさせ2021年12月にメジャーデビュー。「NIGHT DANCER」は韓国配信サイト“Melon”でJ-POP初のTOP20入りを果たし、SpotifyバイラルチャートTOP50に31カ国ランクインするなど世界各国でもバイラル中。「第65回 輝く!日本レコード大賞」にて優秀作品賞を受賞し、韓国で開催されたMMA 2023、CCMA 2023に日本人アーティストとして初出演、初受賞を果たすなど国内外で活躍の場を広げ続けている。
2024年3月からは初の全国ツアー 『imase Tour 2024 “Shiki”』を開催し、チケットは即完売。6月からは初のアジアツアー『imase 1st Asia Tour “Shiki”』、11月からはホールツアー『imase Hall Tour 2024 “Shiki-Sai”』の開催も決定している。
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J-POPに歌謡曲、洋楽から吸収したヒップホップ、R&B、多彩なダンスミュージック。ジャンルや国籍を超越したフラットな感性のもとで、それらを洗練されたタッチで融合し、普遍的なポップミュージックへと昇華したimase 1st Album『凡才』。代表曲の「NIGHT DANCER」をはじめ、ファルセットボイスを活かしたキャッチーなメロディ躍動する多彩なグルーヴが心地良い高揚感を生み出す全19曲を収録している。
imase
1st Album『凡才』(ユニバーサル ミュージック / Virgin Music)
◯初回限定盤 CD+Blu-ray(三方背ケース)¥4,950
◯初回限定盤 CD+DVD(三方背ケース)¥4,400
◯通常盤 CD ¥2,750
○UMストア限定盤 CD+フォトブック ¥3,850
◯タワーレコード限定盤 CD+グッズ ¥3,850
特設サイト:https://sp.universal-music.co.jp/imase/bonsai/
配信リンク:https://imase.lnk.to/bonsaiWE
MV「NIGHT DANCER」
MV「Nagisa」
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