
「写真で笑いを生み出す」をテーマにした企画展「補完」で
タッグを組んだ、かが屋の加賀翔と令和ロマンのくるま。
芸人として第一線で活躍しながら、それぞれ写真や
映像といった表現にも活動の場を広げている。
なぜ彼らは新たな創作に惹かれるのか。
「補完」を入口に、尽きることのない
探究心を語った対談をお届けします。

photographs:Norifumi Fukuda(B.P.B.)、interview:Mio Shinozaki、text:SO-EN、取材協力:encounter gallery or 株式会社CURBON 『装苑』2026年9月号より掲載
根底の〝人への愛情〟が
変わらない視点を生む
―― まずは、ツーマン企画展「補完」について教えてください。
令和ロマン くるま(以下、くるま) 僕がフリーになったタイミングで、加賀さんに宣材写真の撮影をお願いしたことがきっかけです。その撮影を展示の会場となった「encounter gallery」に併設されたスタジオで行い、スタジオの方から「せっかくだから展示もできないか」と声をかけていただいて。だったら芸人同士だし、僕ら自身が出てくる企画のほうが面白いだろうなと思ったんです。

ツーマン企画展「補完」。くるまが企画、加賀が撮影を担当。「補完マン」に扮した、くるまが街中を駆け回る姿を、自称ジャーナリストの加賀が追いかけながら撮影した作品群を展示。音声コンテンツとともに、「補完」というテーマを体験的に楽しめる展示として話題を呼んだ。
かが屋 加賀 翔(以下、加賀) 企画はくるまが提案してくれました。僕は「補いたい」という気持ちが根っこにあるという話をしてくれて。

くるま ちょうどその頃、糸井重里さんのYouTubeに出演して、自分のことを話す機会があって、気づいたんです。そこから「補完」という言葉をよく使うようになって、「補完マン」というキャラクターが誕生しました。
加賀 僕も登場する形を考えていった結果、自称ジャーナリストが補完マンを追う構図になりました(笑)。お笑い芸人二人だからこそ成立した展示でしたし、お互いの得意なことが写真という広く受け入れやすい媒体の中でうまくかみ合った企画展だったと思います。
―― 写真展という形で共作したからこそ見えた部分もあったのではないでしょうか。あらためて、お互いの表現者としての魅力をどのように感じていますか?
くるま 出会った当時からネタがシンプルかつ、"プロ日常切り取り師"として……。
加賀 おい! いいよ! ABCお笑いグランプリに出た時のキャッチコピー(笑)。
くるま プロ日常切り取り師(笑)。でも日常を切り取っているというよりかは、加賀さんは、人への共感を起点に表現している方だと僕は思うんです。だからコントでも写真でも、媒体が変わっても根底にある視点がぶれない。加賀さん自身の感性や考え方が表現の中心にあるから、どんな形にも展開できるし加賀さんでいられる。その自由さはすごく稀有だと思います。

加賀 嬉しいですね。僕はくるまのパフォーマンスが好きです。令和ロマンの漫才は一人で何役も演じ分けていくから、切り替わるタイミングがすごく重要なんです。お客さんに「あ、納得」って冷静さを持たせてしまうようなポイントを、スピードで追いつけなくする間の使い方が絶妙で。しかもそれをさらりとやるんですよね。それに、誰のことも置いていかない。それでいて、自分が本当に好きなものや面白いと思ったものをネタの中に自然と忍ばせてくる。その姿を見ていると、くるまこそ人に対して愛が深い人間だと思うんです。洞察力や言語化能力で評価されることが多いけれど、僕はそれを支えているのは人や笑いへの愛情だと。面白がることへの熱量も人への興味も本当に強い。能力の高さ以上に、その根っこにある熱さに心を動かされますね。
―― そんな一面がクリエイターとしても出ていますか?
加賀 出ていますよ。結局、なんでも面白がる人だから「補完」の企画提案の時もそうでしたし、スタッフさんたちをうならせていて! くるまって、面白い他業種の人たちをつなぐ存在というか、トップランナーなんですよね。映画『BREAK SHOT』も見させてもらったんですが、アイデアを出す才能が本当にすごい。「これにくるまが関わったらどうなるんだろう」、きっともっと面白くなるんだろうなっていうことの名刺代わりになっていました。マスも楽しませながらニッチを攻められるところがすごいですよね。そういう技量には本当に感動させられます。

© 2026 BREAKSHOT Production Committee, All Rights Reserved.
映画『BREAK SHOT』。くるまが初めて監督・脚本を手がけた短編映画。渋滞が発生した高速道路を舞台に、ドライブレコーダーの視点だけで描かれるブラックコメディだ。児玉智洋(サルゴリラ)、オダギリジョー、高良健吾、森川葵ら豪華キャストが出演。7月31日に公開。
くるま まさに! そのとおりですね。
加賀 そのとおりなんだ(笑)。
クリエイションは横断する
現実逃避の全盛期
くるま 加賀さんの写真は、加賀さん自身の視点が感じられるのがいいですよね。僕は写真に詳しいわけじゃないんですけど、「こっち見て!」とか「こんなのやってみて」みたいな撮る側の熱量が写真から伝わってくるんです。人間ファンでもあるし、撮影という行為そのものも好きで、だからこそ、僕らみたいに写真に詳しくない人にも分かりやすく伝わるんじゃないでしょうか。加賀さんはコントでも、人の喜怒哀楽をつかむ握力がすごいんです。それを表現する力もとにかく強い。本当にとんでもないなと思いますね。

©2024「この動画は再生できませんTHE MOVIE」製作委員会
かが屋が出演した、フェイクドキュメンタリーホラーと謎解きミステリーを組み合わせた実験番組の映画版『この動画は再生できません THE MOVIE』。各動画配信サービスで好評配信中。
―― お二人の活動を見ていると、お笑いにとどまらず、写真や映画など様々な表現へ広がっていますよね。そうした創作は、お笑いとどのようにつながっていますか?
加賀 もともと人見知りで、あと比喩じゃなくて本当に視力がよくて(笑)。ずっと人の顔を見て伺ってきたし、好きだった。こういう時の表情が面白いな、をコントで表現してきたんです。写真ならそれを説明なしで残せる。どちらも、その人だけの感情や表情を見たいし、丁寧に表現したいと思っています。
くるま 僕は、お笑いで培ったものを別ジャンルに生かしている、という感覚ではないんです。写真も映画も、そこにコミュニケーションがあって、人を笑わせればお笑いになるし、怖がらせればホラーになる。今はメディアで分類するより、どんな感情を生み出すかで捉える時代になっている気がしていて。だからその流れに委ねている感覚です。もう10年前くらいから、人間って飽きないように必死なわけですよ! うっすら全部のことにこれ以上展開はないって分かっているけど、とりあえずAI作ってみたりとか、何かしようとして、人類楽しんでいこうキャンペーンが始まってるんです!
加賀 確かに(笑)。そうか〜!

くるま ぶっちゃけ、人間の肉体や脳が劇的に変わるわけじゃない。でもそんなことばかり考えていたらへこむし、しんどいから、みんなで現実逃避しているような(笑)。世の中が前向きでいられるよう、昔みたいな縦割りの枠組みを、横に自由に行き来できる形式へ変えているんじゃないかなって。
―― 加賀さん、かなり染み入ってますね!
加賀 僕もそこに対する疑問みたいなのをうまく言語化できていなくて、「俺たち、まだやれるよな!? な!?」みたいな(笑)。
くるま そう!そう!そう!
加賀 現実逃避をしていたのか、我々は(笑)。置いていかれたらどうしようと思いながら、皆、焦りすぎてるよね?って。
くるま でも、その状況がいいじゃないですか。だって、俯瞰で見たらかなりお笑いですよね。雑誌は残る!? むしろ紙なの!? みたいな、ずっとソワソワしてるじゃないですか。芸人が舞台上でふざけてる時の世界になったというか、スベったのに終われない、即興コントのような(笑)。そういう時代に入って、全員が役に入ってる空気がたまらなく大好きです。
加賀 納得。『装苑』にこれ書いてください。
くるま 『装苑』にこれが載ります(笑)。

かが屋・加賀翔撮影写真集『芸人地図』(東京ニュース通信社刊)
加賀翔が撮影を手がけた写真集『芸人地図』。芸人たちの思い出の場所を巡り、その素顔やルーツを写し出した。
関太(タイムマシーン3号)と鈴木もぐら(空気階段)。ふたりの“まあるい”魅力を、加賀翔が撮り下ろした、見ているだけで心がほっこりする写真集。

まあるいふたり(小学館)
自由表現の居場所を
増やしていくために
―― そんな中で、歩みを止めずに創作を続けていらっしゃるお二人ですが、その原動力はどういうところから湧いてくるのでしょうか。
くるま 僕は主としての自覚が強いんです(笑)。だから使命感。M-1で優勝したら、じゃあ次は2連覇かな、みたいな。客観的だといわれるんですが、一人称がでっかいだけなんです。もうカメラが僕の視点にしかついていない。
加賀 切り替えてないんだ(笑)。
くるま 偉いとか偉くないとかじゃなくて、もう症状です(笑)。
加賀 だからうまいんだなって思います。主観が強いからこそ表現に力がある。僕はくるまに俳優をやってほしいです。

くるま 僕は加賀さんの表情が好きなので加賀さんこそ俳優として出てほしい!
加賀 俳優業はやってみて、現場で俳優さんがクーッと役に入っていくのを目の当たりにして、感動しましたし、今後もやってみたいです。僕はコント、カメラだけでは食べていけないから、将来、子どもができた時に食わせたいという、現実的な原動力で(笑)。
くるま そう! だからこそ、芸人がもう一つ自由に動ける形式を作りたいんです。僕は表現において抽象化を避けて具体にすることを大切にしていて。今は抽象化の全盛期ですよね。MBTIとかはその本山だと思っているんですけど(笑)。伝わりやすいから抽象化されてしまうんです。例えば、漫才師がやる映画監督、じゃあ世界を目指すんでしょう?みたいな。やってることが中途半端だと、よりされてしまう。なので、その曖昧な定義をなくすために、具体的な活動を1個1個増やしていけば、一つの言葉でまとめられなくなると思うんです。
加賀 なるほど。そうやって活躍できる場所の分母を増やしていくんだ。
くるま 映画もその一つだし、そうしたらきっともっと自由に表現できますよね。
加賀 くるまって本当に寿命の前借りというか(笑)。いくらでも強くなってやるって感じですよね。でも、僕もやっぱりお笑いを見る時間とか先輩のネタを舞台袖から見ているのが楽しいから、コントが少しでも広がっていくように、〝お笑いのために頑張ろう〟が原動力かもしれません。

・
・
・
・
加賀 翔
1993年5月16日生まれ、岡山県備前市出身。2015年に賀屋壮也とお笑いコンビ、かが屋を結成。’19年、’22年にキングオブコントで決勝進出。芸人として活動する一方、写真家としても活躍し、芸人やアーティストの撮影を多数手がけるなど、その独自の視点による写真表現にも注目が集まっている。
くるま
1994年9月3日生まれ、東京都出身。松井ケムリとお笑いコンビ、令和ロマンを結成。2023年、M-1グランプリで優勝し、翌’24年には大会史上初となる2連覇を達成。’26年5月にはKアリーナ横浜で単独ライブ「RE:IWAROMAN」を開催。同公演で初監督・脚本を務めた短編映画『BREAK SHOT』を発表、7月31日より順次映画館でも公開予定。





